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GIRLS FLEET ~竜を狩る公女(プリンセス)戦記~   作者: 九重七六八
3巻 パンティオン・ジャッジ トリスタン決勝トーナメント編
164/201

第27話 VSカロン首長国連邦 ~ペルセポネの戦い(4)

2日間首が痛くて投稿サボったら……あれ? 思ったより閲覧減ってないw

お気に入り件数も微妙に増えたり、減ったりで……。不思議だね。

毎日投稿しても増えないのにねw

「これが今回、初参加となる航空母艦ハニー・ビー。貴族のお姫様にはぴったりの名前」


「アンナさん、ぴったりだなんて失礼だわ。私は甘いこと言って近寄ってから、一刺しなんてしませんからね!」


「ハハハ……ごめんごめん。最近、フィンさんと平四郎がいい雰囲気だからね。リメルダちゃんは、平四郎に一刺ししたいかなと思って」


「アンナさんに心配してもらう必要はありません。私は私なりに努力しています」


 確かにリメルダはスキがあれば、平四郎の傍にいてアピールしているのだが、肝心の平四郎はフィンばかりを見ていて、入り込む余地がないことは自覚している。だが、リメルダはそれでも諦めきれないのだ。平四郎とはこの世界で会って、1年も経っていないのだが、どの存在が心の中でどんどん大きくなっていて、彼と結ばれることが何だか運命みたいに思えてしまっているのだ。当初はツンデレ気味だったリメルダもその殻を脱いで、積極的になっているのは、まるで運命に引き寄せられるようなものであった。


「アンナさん、それより、軽空母ハニー・ビーの説明をお願いします」


「はい、はい。じゃあ、説明するわね。私が腕によりをかけてリノベーションした船よ。ただのタンカーを改造しただけって思わないでね。もちろん、時間の関係で思ったものよりも50%も低い完成度だけど、平四郎の要求とアイデアは全て満たしているわ」


 そう言って、アンナはハニー・ビーの艦橋から順に歩き、リメルダとナアムに説明をしていった。


「この船の特徴は、船自身の攻撃方法は皆無ということ。攻撃はケットシー戦用の戦闘機F102の20機によるものだけです。ミサイルも魔法弾の砲門もありません。甲板はF102が離陸できるだけの滑走路がありますが、いくらミニサイズの戦闘機といえど、80mほどの長さでは、離陸には足りないので、カタパルトを利用した発進方法を取っています。帰還の際にはネットを張って機体を止めます」


「よく考えたわね。その方法なら、戦闘機が空中艦から複数発進できるわね」


 リメルダには目からうろこの発想である。これまで、トリスタンではなかった船だ。マリーとの戦いでトラ吉が偵察機に乗って、コーデリアⅢ世の動向を探りに行った時は、1機であったので、レーヴァテインの側面の取り付けた偵察機戦用発射装置から発進したが、20機もとなると、専用の船が必要であった。


「このアイデアは平四郎から聞いたものですが、彼の世界では、こういう航空母艦という船が戦いの主力だそうですよ。ここがエレベータです。船内に格納したF102を1機ずつ甲板に上げることができます。艦内で武装を施し、ここまで上げて発進させてください」


 そういって、エレベーターの機動ボタンを押すと、甲板の一部が下がり始めた。アンナはリメルダに乗るように促す。


グイーン……というなめらかな音と共に、艦内の戦闘機収納エリアに到達した。


「ハイニャ、ハイニャ、飛ぶことが好き!」

「ハニャハニャハニャニャニャ、ニャーニャニャニャ」

「オイラたちのテクニックで 飛べないところはないぞ!」

「にゃー!」


 20匹ものケットシーが歌いながら、作業をしている。トラ吉もそこで作業をしていた。リメルダを見つけると、みんな作業を止めて整列する。


「艦長殿に敬礼!」

「ニャ」


 ケットシーといってもちょっと大きめの猫だ。そんな猫がズラリとリメルダの前に並んで敬礼をしている。リメルダも敬礼をして話しかけた。


「みなさんは妖精国ローエングリーンの有名な長靴中隊出身と聞いています」


「はい。わたしが隊長のジロ少佐です。ローエングリーン女王シトレムカルル陛下の勅命により、配下に加わります。妖精国の力をもう一度、霊族のやつらに見せてやりますよ!」


 そう言って、ケットシーが20匹も整列しているのはリメルダは見たことがない。たくましいケットシーと共に、彼らの専用機であるF102がズラリと並んでいる。これは曲芸用の機体だが、2発の爆弾か2機の対艦ミサイルを装備できる。ケットシー用で機体がかなり小さいことと、ルキアが買い付けてアンナが施した魔法パーツによるステルス効果で、敵艦には発見されにくくなっていた。(100%ではないが)


「ただ、レーダーに見つかりにくい分、武装強化ができず攻撃力は弱いです。魔法爆弾を積めれば威力が強いのですが、動いている空中戦艦には着弾させるには相当な技術がいるでしょうね。魔法ミサイルはロックオンすれば撃ち落とされない限りは命中しますが、相当数を当てないとダメです。弁財天には爆弾を投下、他の艦にはミサイルという選択がよいと思います」


 アンナがそうアドバイスした。このハニー・ビーの任務は(地獄の門)が吹き飛んだ敵旗艦「弁財天」を撃破することだから、当然、爆弾を選択することになるのだが、状況によって武器の換装を考えることがポイントになってくるだろうとリメルダは思った。


「以上で説明は終わるけれど、先程も言ったように、この船は元は民間船を改修したもの。防御力は民間商船を少し上回る程度よ。魔法シールドの上乗せ分は期待しないでね。敵の駆逐艦級の砲撃でも簡単に沈みますから注意すること」


 そうアンナは締めくくった。確かに、ケットシーの戦闘機がなければただの貨物船である。スピードも遅いし、索敵能力も低い。パンティオン・ジャッジには7隻しか参加できないルールだから、護衛艦は1隻もいなく、本艦隊からは別行動を取ることになる。


(平四郎、あなたのために私は頑張るけれど……)


 リメルダには、少々、引っかかるものがある。勝てば、平四郎とフィンは結婚するするのだ。いくら、自分は2番目でよいと思っていても、思いは複雑であった。


(負けたからといって、平四郎のフィンさんへの思いは変わらない。だとすると、私の恋はどこに行くのだろう……)


 出港を前にして、リメルダはプトレマイオス港の奥に係留されているレーヴァテインを見た。炎の大剣を意味するこの高速巡洋艦にリメルダの心は熱くなっていくのだった。


「艦長、リメルダさんのハニー・ビー。出港していきます」


 エンデンバーク夫人こと、ミート大尉がそう平四郎に告げた。レーヴァテインの艦橋から見るとゆっくりと空母が動いていく。隠密行動を取るために、本艦隊とは離れて出撃するのだ。出港した後は、敵に察知されないように連絡を取ることができないのだ。


「本艦及び、メイフィア魔法艦隊は3時間後に出発します。先頭は戦列艦ミノス、ケンタウロス。本艦両翼をオクタヴィア、マクベス、最後尾をマリー様のコーデリアⅢ世が位置します。それでよろしいでしょうか?」


「ああ、ミート大尉。自分はいいけど。フィンちゃんは?」

 

 平四郎は艦橋にフィンがいないのを不審に思った。朝から姿を見ていない。


「フィンは頭痛がすると言って、提督室で寝ています」


「フィンちゃんが?」

「ええ。今、アマンダさんが看病しています」

「フィンちゃん、最近、体の具合がよくないよね? 病院で検査してもらった方が良くない?」


 平四郎はフィンが時折、頭を抑えている姿を思い出した。明るく元気に振舞っているので、目立たなかったが、そういう姿を最近よく目にするようになったと感じていた。


「元々、体の弱い子なので、この忙しい状況に体が参っているのだと思います。でも、フィンは平四郎が傍にいると元気になるから、ちょっと提督室に顔を出してきたら?」


 そうミート大尉が平四郎に促した。確かに見舞う時間はある。


「よし、各員は順番に1時間交代で休憩に入れ。但し、艦外への外出は禁止だ」

「了解! 艦長」


そう元気に応えて席から立つナセル。その顔はニヤニヤして気味が悪い。平四郎はピンと来た。そういえば、コイツは新婚だった。


「おっと、ミート大尉とナセル大尉は交代で休むこと!」


 平四郎は少し意地悪になった。自分の方は彼女ふぃんが具合が悪くて寝ているから、ナセルだけにいい思いをさせるわけにはいかない(笑)


「ええっ! そりゃないよ」

「カレラ少佐は既に休んでもらっているし、次に官位の高い順はミート大尉と君だ。交代は当然だろう」


「平四郎~。殺生だよ~」

(ナセルの奴、やっぱり、ミート大尉と一緒にいちゃつくつもりだったな。そうはさせるかっての。それでなくても、昨晩までいい思いしやがって!)


 ちょっとひがみが入っている。(俺ひとりで留守かよ~)っと頭を抱えているナセルを尻目に、自分はさっさとフィンの部屋に見舞いに行ったのだった。


コンコン……


ドアを叩くと提督室のドアを女官のアマンダさんが開いた。中に入ると小さなベッドにフィンが目を閉じて寝ている。額には冷やしたタオルを当てている。平四郎は近寄るとフィンがそっと目を開けた。


「フィンちゃん、大丈夫? 頭痛って聞いたけれど」

「ごめんなさいです。ちょっと痛むだけです。最近、よくなるけど、すぐ収まるから」


「あんまり続くようだと、何かの病気かもしれないよ。病院で検査を受けた方が」

「大丈夫です。それにこの戦いが終わるまで、病院には行けないでしょ?」


「マリー様の船には軍医が乗っていたから、診てもらう?」

「大丈夫です、平四郎くん。それより、もっとそばに来て、手を出してです……」


 そうフィンが甘えた感じで言った。平四郎はドキっとした。手を出すとフィンはそっとそれを握った。


「この戦いが終われば、結婚できるです」

「そ、そうだね。パンティオン・ジャッジで覇者になったら結婚の約束だったよね」


「勝ちたい……絶対に勝ちたいです。最近、わたしは不安になるのです。なぜか、この戦いが終わっても平四郎くんと会えなくなるような気がするのです」


「そんなこと絶対ないよ。大丈夫だよ。絶対勝つし、それに万が一、負けても君のそばにいることは変わらない。安心してよ」


「……負けたら小夜さんが、ドラゴンとの最終決戦の指揮を取るだけ。わたしたちはその戦いに参加するか、一般人に戻るだけです。よく考えたら、変な約束ですよね?パンティオン・ジャッジが終わったら結婚するって」


「変な約束じゃないさ。優勝して結婚。それが一番さ。でも、その後のドラゴンとの戦いに勝ち抜かないと本当の幸せは来ないことは理解しているよ」


「平四郎くん、わたし……。なんだか最近怖いです。自分が自分でなくなるというか。わたしなんかがこの世界を守る覇者になっていいかとか。でも、ならないといけないという気持ちもあるのです」


 平四郎はフィンがプレッシャーで疲れているのだと感じた。そういう時は変なことを考えてしまうものだ。


「フィンちゃん。出港は3時間後だ。それまでぐっすり寝るといいよ」


「はいです」


 フィンは目をつむった。



 3時間後。平四郎は艦長席で最後の確認作業に没頭していると、アマンダさんと一緒にフィンが艦橋に現れた。もう頭痛は治ったのだろう。元気な様子できらびやかな上級大将の記章のついた女性用軍服を颯爽と着こなしていた。


「提督、全艦、発進準備できました」

「了解です。全艦に告げます。メイフィア魔法艦隊発信するです!」


「了解。こちらレーヴァテイン艦長、東郷平四郎。本艦はこれより、ペルセポネー沖へ向かう。総員、各所にて出港に備えよ!」


 パンティオン・ジャッジファイナルが切って落とされた。



さあ、戦いの始まりだ。

パンティオン・ジャッジ最期の戦い。

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