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GIRLS FLEET ~竜を狩る公女(プリンセス)戦記~   作者: 九重七六八
1巻 パンティオン・ジャッジ メイフィア王国編 1
16/201

第4話 処女航海とドラゴン討伐(3)

「そろそろ、お昼ご飯の時間ですよ~」

 

 そう言って、艦橋にメイド長のアマンダさんが給仕の女の子2人を連れて現れた。ワゴンに飲み物とパンらしき食べ物が乗っている。メイド長のアマンダさんは、エプロンドレスがよく似合う長身の新妻って感じの格好だ。長い髪をポニーテールにしていて、フリフリのメイド姿でボディは、出るところはしっかり出て、引き締まっているところはきゅっと引き締まっている感じだ。


(こんなところで、リアルメイドさんに会えるとは……)

 

 平四郎は少し感動していた。このリアルメイドさんは、乗組員の艦内での生活をとりしきっているのだ。平四郎はアマンダさんと一緒に来た2人を見た。

 

 給仕している2人の女の子は、ちょっと変わっている。よく見ると、メイド服の背中に小さな翼(コウモリ?)が生えていて、ひらひらしているし、よく見ると口元に小さく2本の牙?が見え隠れする。二人共、ミニスカートから細い生足を出し、ハイヒール姿であったが、てきぱきと給仕する。顔は二人共ソックリであるが、一人は金色の髪、もう一人は銀色の髪である。


「はい、マイスター様。本日のランチは、一角獣のミンチ肉が少しだけ入ったコ ロッケをパンにはさんだコロッケサンドだわん」

 

 金髪の髪のメイドさんが、そう言って平四郎に食事を差し出す。


(だわん?)


 おかしな語尾に平四郎は金髪のメイドさんの顔を見る。幼い感じもあるが、顔は恐ろしいくらいの美形である。にっこり笑うその顔を見ながら、平四郎は差し出されたカップに口を付ける。魔法王国メイフィアで広く飲まれているシャワソーダという炭酸水だ。色は赤いが味は、コーラと変わりがない。金髪ちゃんが持ってきたサンドイッチもいわゆるコロッケパンと大差ない。


「にゃうん!ダメだにゃ」

 

 前の方で後ろのスカートを抑えている銀髪ちゃんが声を上げた。どうやら、ナセルの奴がミニスカートをめくったらしい。


「あなたねえ! 魔人形ドールのスカートめくって何が楽しいのかしら?」

「イタタタタ……」

 

 またしても、ミート少尉に耳を引っ張られている。


「魔人形?」


 平四郎は給仕を続けている2人を見ながら、つぶやくとアマンダさんが笑いながら教えてくれた。


「平四郎さん、2人は魔力で動く使役用魔人形なんです。金髪の方がゼパル、銀髪の方がベパルといいます」


「魔法ですか?」


「はい。メイド長の資格があると使用が許可されるのですが。まあ、彼女たちはメイドの仕事以外にもなんでも言うことは聞きます。体も通常の女性となんら変わりないのですが、くれぐれも夜伽などを命じられませんよう」


「夜伽って……」


 平四郎は顔が真っ赤になる。すると、なんだか後方からゴゴゴ……と黒い重苦しい圧迫感を感じた。そちらを見ると、フィンと目が合う。ちょっと怒ったような目つき。でも、フィンはすぐ下を向いてしまった。


 先程まで食べていたコロッケサンドのタレが口元に付いているのが超絶可愛い。フィンってお姫様なのに、なんとなくそんな感じがしない。いや、普通の女の子よりはどことなく、気品があるにはあるが、いいところのお嬢さんという感じで、お姫様という近寄りがたいオーラがないのだ。(手を伸ばせば届く?)みたいな親近感がいい。


「おや? おかしいわ……。機関室に異常、船の推進力が落ちている! 浮遊力も下がってきている」

 

 船を操っているカレラ中尉が、そう報告する。通信担当のプリムちゃんが、機関室の状態をモニターして慌てて状況を伝える。


「魔力が後退していますううううう。30%低下、どんどん、低下していきますううう!」


「まずいぞ! 原因は?」


 カレラさんとプリムちゃんが、同時に平四郎を見る。平四郎はドキっとしたが、心当たりはない。魔力低下はこの船の推進力であるフィンの状態ということである。ミート少尉がフィンのところに駆け寄り、そして、平四郎に叫ぶ。


「平四郎、魔力を貯蓄バッテリーに切り替えてください。提督の魔力供給に問題があるようです」


「え? ああ、このレバーを上げて自動航行ボタンをONにする」


 船に関しては平四郎の得意分野だ。すぐさま、艦長席の計器を触り、レーヴァテインの蓄魔力システムを起動させた。これで通常航行ならしばらくは可能だ。これは艦を動かす提督が休む場合に使うシステムである。


 一時の魔力切れでレーヴァテインは、下降して下の分厚い雲の層に突っ込もうとしていたが、蓄えられた魔力を使ってカレラ中尉が船の姿勢を立て直した。


「危なく、ディープクラウドに突っ込むところだった」


 船が安定してカレラ中尉が安堵の声をあげた。


「ディープクラウド?」


 平四郎の問いにカレラ中尉が答える。


「金属を溶かす雲海のことだ。特殊な空中艦以外はあの中に入ることはできない。ディープクラウドは広く、このトリスタンに分布するがほとんど定位置にある。けれど、中には移動してくる危険地帯もあるんだ。航路から外れた場所を移動するときは気を付けないといけない」


「へえ。そんなものまであるのか」


「ディープクラウドの中では、ドラゴンも生き残れないからな。怖いところだ」


 そうナセルが補足する。また、平四郎の知識が増えた。


 艦の航行が安定したのを確認して、ミート少尉はフィンのところに足を運んだ。そしてフィンの手を取ると艦橋を出て、フィンの部屋(提督の私室)に行く。部屋に着くとミート少尉はフィンを問い詰めた。まあ、この賢明な公女の親友はある程度分かっていたのではあるが。


「フィン! どうしたの? 急に魔力供給を乱して」

「だ、だって、平四郎君の夜伽に魔人形って」


「ば、馬鹿ね。あんなの冗談に決まっているじゃない。男はエロい動物だけど、平四郎はそこまで度胸はないわよ」


「そうでしょうか……」


「もう、フィンたら、私の前では普通にしゃべれるのに、どうして男の子の前だとそんなに恥ずかしがるの。それじゃあ、思いも伝わらないよ。フィンって男嫌いなの?」


「ち、違うよ。どちらかというと、男の子大好き。男の子とお話、もっとしたいし、男の子に触られて、ちょっとエッチなことされてみたいです」


「エ、エッチって、第5公女ともあろう方が大胆な。でも、男の子なら誰でもいいわけじゃないよね」


「う、うん」


 そううなずくとフィンは顔が赤くなる。


(平四郎か、平四郎だよね。この反応。はあ~)

 と心の中でため息をつくミート少尉。分ちゃいたが、今回、第5公女に選ばれた親友は、異世界の青年に恋をしてしまっているらしい。この病はかなりの重傷だ。ミート少尉が見たところ、相手の平四郎もフィンに惚れている様子だから、これは相思相愛である。ただ、問題は2人とも恋愛初心者で簡単に進まないだろうと想像できたことだ。それにフィンには第5公女、魔法第5艦隊提督としての責務がある。


「わたしがマイスター。平四郎に、代わりに言ってあげようか? フィンは平四郎のことが大好きって」


「だ、だめです! 言っちゃダメ。わ、わたしから伝えるから」


「いつ?」

「こ、心が通じてわたしに勇気がわいてきたら……」


(はあ~)

 

 この恥ずかしがり屋では、一生言えないとミート少尉は思った。それは、平四郎も同じだろうとも。いずれにしても、平四郎のことで心を乱しただけで、艦の操縦に支障がきたしたら意味がない。


「フィン、多分だけど、平四郎もフィンのことが絶対好きだよ。これは間違いないよ。だから、安心して。あと、男の子は女の子に一途でも、つい目が他の女の子にいっちゃうことがある。そういう動物だから、いちいち、落ち込まない。でも、フィンの方も少しはアプローチしないと、他の女の子にとられちゃうぞ」


「う、うん。ちょっとは、恥ずかしいけど、がんばって、平四郎くんと話してみるです」


「そうするといいよ。じゃあ、艦橋に戻ろうか」


 ミート少尉は、部屋を出るフィンの後ろ姿を見ながら、この親友の数奇な運命を思いやった。


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