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GIRLS FLEET ~竜を狩る公女(プリンセス)戦記~   作者: 九重七六八
3巻 パンティオン・ジャッジ トリスタン決勝トーナメント編
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第24話 VSタウルン共和国 眼下の敵~オベリスク空戦(3)

「フフフ……この程度で喜ぶ敵だったらうれしいのだけど。旗艦の戦闘体制を見る限り、まだ警戒しているようね。だけど、戦況は既に私の予定通りに進んでいる。艦を上昇、アタシが確認する」


 開戦してから3時間あまり。エヴェリーン少将はじっと動かなかった。囮として上空に配置した部下の潜空艦は予定通りの行動をしているが、自分の旗艦を含む3隻の潜空艦はディープクラウド内の浮遊石とぴったりくっついていた。この状態では浮遊石と区別がつかず発見されないだろう。


 相手が油断するまでじっと耐える姿は、ターゲットをじっと待つスナイパーと似ていた。エヴェリーンは目標とするドラゴンが油断するまで、48時間もじっと耐えた経験もあった。たった3時間じっとするくらい簡単なことであった。


 エヴェリーンは旗艦ザ・ハイ・プリーステスを少しだけ上昇させた。潜望鏡を密かに上げる。そこには、上空に向かって攻撃をしているレーヴァテイン以下のメイフィア艦隊が見える。


「上空だけでなく、下空にも爆雷を投下して、こちらを近づけさせない作戦は立派だけど、こちらもタウルンの予選とは違う作戦を取るってことは考えていないのかな。あの坊やは」


 エヴェリーンは内心にやりとして、部下に作戦の第2段階を指示した。


「敵の残り、一隻を発見しました。ディープクラウド内を全速力で西方へ移動中」


 リメルダから報告が入る。事実なら、それが最後に残ったエヴェリーンの旗艦だろう。状況から察するに、思いがけず6隻が失われ、慌てふためいて逃げていると解釈できるのだが、平四郎にはどうにも納得できない違和感があった。


「マリー様、どう思います?」


 平四郎は参謀長のマリー王女に小声で聞く。一応、全艦隊の乗組員は勝っていると思っているので、それに水を差したくないという思いからであった。


「ブルーピクシーの能力とリメルダさんの優秀さに、敵艦隊がやられたとみるべきでしょうけど、そんなに甘くはないでしょうね」


「やはり、そう思いますか」

「わたくしなら、この機会に我が艦隊を想定するポイントに追い込みますが……」


 最後の一隻は、ディープクラウド内の小さな浮遊石がたくさん分布する場所に逃げ込んだようであった。リメルダのブルーピクシーの解析結果である。


「フィン提督、厄介なところに潜り込んだようですが、おおよその敵の位置が分かれば十分ですぞ。デストリガーを使うべきです」


 戦列艦ヴァイオラの艦長レイナルト子爵からの進言がある。彼の言うことは最もで、戦列艦の主砲でさえ、無効化するディープクラウドであるが、デストリガーはさすがに無効化ができず、その攻撃は放たれた直線上のものを全て無にするだろう。ヴェイオラ、マクベス、レーヴァテインと3つのデストリガーが炸裂すれば、完全勝利は間違いない。


「いや、それはダメだ」


 平四郎はレイナルトの意見を却下する。モニターに映るレイナルトは平四郎の顔を見て露骨に嫌な顔をする。


「異世界の勇者殿は、詰めが甘いですな。それとも、敵将と親しいから手加減するというわけですかな?」


 レイナルトの指摘は多少当たっていた。デストリガーを受ければ、エヴェリーンの戦死は免れないだろう。平四郎はあの陽気なお姉さんを殺したくはなかったし、今後のドラゴンとの戦いに彼女は必要だとなんとなく感じていた。だが、戦術上の問題の方が大きかった。これについては、マリーの方が反論した。


「レイナルト大佐、デストリガーを撃てば、撃った船はしばらく無防備になります。そこを襲われたら、いかに戦列艦でもまずいことになるでしょう」


「これはマリー様。変なことをおっしゃる。敵は最後の一隻ですぞ。どこから攻撃されるというのですか?」


「敵は一隻とは限りません」

「なぜです?敵の残骸も確認しましたし、6隻撃破は疑いないのではないですか?

ヴィンセント伯爵はどうお考えですか。やはり、マリー様より、わたしの意見に……」


 モニターに戦列艦マクベスに座乗するヴィンセントが映し出される。不敵に微笑を浮かべつつ、レイナルトとマリーの話を聞いていたらしい。


「レイナルト大佐、僕はマリーの意見を是とする。平四郎もその方がいいのだろう?」


 平四郎はヴィンセントの意外な言葉に、コイツの狙いがますます分からないと思った。フィンを手にれたいというのがコイツの考えなんだろうが、そのためにメイフィア艦隊が負けるように仕向けるかと思いきや、まともな意見を言っている。


(意外とコイツ、フィンに勝ってもらいたいとか……)


 だが、フィンが優勝すれば、フィンと結婚するのは平四郎ということになる。

 

 それに命の危険があるパンティオン・ジャッジに自分自身が参加するのも分からない。そんなことしなくても、コイツはいろいろと画策ができるはずである。


「マリー参謀長の意見を採用するです。デストリガーは使いません。リメルダさんに連絡、小浮遊石の位置を割り出し、それを避けて魚雷をピンポイントで撃ち込めますか?」


 フィンはブルーピクシーのリメルダを呼び出す。メイフィア艦隊の目であるこの艦が頼りである。


「できます。浮遊石の数は多いですが、大きさは均一なので……」

「均一?」

「均一ですって?」


 平四郎とマリーが同時に叫んだ。


「ま、まずいですわ」

「まずい、フィンちゃん、全艦隊を現在の空域から緊急離脱……」


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