表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GIRLS FLEET ~竜を狩る公女(プリンセス)戦記~   作者: 九重七六八
3巻 パンティオン・ジャッジ トリスタン決勝トーナメント編
134/201

第21話 パンティオンの神託(3)

わー。このエピソードが抜けてました。小夜が何者か分からんかった~。

「お嬢ちゃん、困るなあ!金も持っていないのに、こんなに食べるなんて!」


 エヴェリーンと別れた直後、道端のお茶屋で空になった団子のお皿をこれでもか!と積み上げて、さらに口にほおばっている少女がいた。背は150cmちょいで小柄、髪は前髪ぱっつんの漆黒で肩にかかるぐらいのセミロングヘア。顔色は蒼白でちょっとトイレの○子さんに出てきそうな雰囲気だ。小さくて恐ろしく美形だが、足が消えている。霊族の女の子らしい。


「お金? お金ってなんぞや?ケケッ!」

「お金だよ! 金貨で1ダカット!」


 店主のオヤジが怒鳴るが、女の子は表情を変えない。ちらりと平四郎を見ると、手招きをする。


「おい、そこの青年、こっちへ来るぞや、ケケッ」


 魅入られたように平四郎は女の子の傍に行く。


「この者が金を欲しているぞや。ケケッ! お主、払ってやれぞや」


 当然のように平四郎に命ずる。平四郎も他のメンバーも唖然とするしかない。でも、平四郎はこの霊族の少女が何だか、只者ではないと感じていたし、この状況で困っているのは間違いないので、金貨1枚を店主に渡した。


 金がもらえた店主はホッとしたようで、そそくさと団子の皿を片付け始めた。霊族の女の子は、平四郎に手を差し出した。


「よくやった青年よ。名前は何というのぞや?」

「東郷平四郎」


「トーゴーヘイシロウ? 霊族のような名前ぞや? その割には足はあるぞや? 魔法族か機械族にもそんな名前はあるぞや。うむ、われは気に入った」


「へ?」

「われの名は、園城寺小夜えんじょうじさよぞや」


「園城寺小夜だと? スリーピングビューティじゃないか? どうしてこんなところにいるんだ?」


 いつの間にかエヴェリーンが平四郎の傍に戻ってきている。このお姉さん、別れても何故か現れる不思議な人だ。


「スリーピングビューティ?」


 平四郎は聞き返した。隣にいるリメルダは小夜を指差し、口をパクパクさせている。


「何だ、知らないのか? 第5魔法艦隊の幹部とあろう者が勉強不足だな。コイツは霊族のパンティオン・ジャッジ代表だ」


「え? ええええええっ?」


(この小さい女の子が……。まあ、こちらもリリムちゃんがいたけど)


「何だ、エヴェリーンではないかぞや。貴様はこんなところにいていいのかぞや?」


「それを言うなら、お前もだ! 小夜」


「われは、あんな辛気臭い部屋で瞑想などふけりとうないぞや……。それより、町に出てみたら、なんと刺激的な世界ぞや……」


 血の気のない顔だが、笑みが溢れる。どうやら、この娘、霊族の代表、スリーピングビューティと呼ばれる霊族族長の跡取り娘らしい。いつもはお付きの者に囲まれているので、お金など払ったことがなく、そもそも、お金の存在も知らなかったようだ。


(どんなけ、お姫様なんだ?)


「で、われはこの男が気に入ったぞや。持ち帰るから、付いてこいぞや」

「え?」


 強引に腕を絡ませて、平四郎を連れ去ろうとする。着物姿でわからなかったが、この娘、結構ボリューミーなおっぱいを持っている。それをグイグイと腕に挟んでくる。


「だ、ダメです!」


 逆の腕にはリメルダが、慌てて腕を絡ませて引っ張る。こちらはこちらで慎ましい。


「邪魔をするな、女! お主はこの男のなんぞや?」


「と、友達です!」

「ただの友達なら、邪魔をするな」


「た、タダじゃありません! フィアンセです!」

「え? リメルダ」


「いいから、あなたは黙って……。こうでも言わないとこの娘、聞く耳持たないわ」


(そりゃそうだが……)


「フィアンセぞや? ますます、面白い。お前たち、メイフィアの軍人ぞや?」


 小夜は平四郎たちの服装を見てそう言った。だれがどう見てもメイフィア国軍の軍服だから、見破るのは簡単だ。


「他人のモノとなると、ますます欲しくなるのがわれぞや。まあいい。今晩の神託の結果いかんでは、お前たちとわれが当たる可能性があるぞや。勝てば合法的にこの男はわれのものぞや……。ケケッ」


 そう言うと小夜は一瞬消えた。(幽霊か? 幽霊なのか?)

 

 だが、少し離れたところにポッと現れた。テレポーテーションみたいな技だ。エヴェリーンに聞くと霊族がダッシュをするとこういう風に見えるらしい。


「今晩が楽しみぞや……。平四郎、そして、タウルンのヤンキーおばさん。さらばぞや!」


「おばさんだと! あたしはまだ27だ~っ」


 エヴェリーンが地団駄踏んで怒ったが、小夜はダッシュを繰り返して、消えたり、出たりしていつの間には雑踏の中に消えていった。


「ふう。平四郎、気をつけろよな」


 エヴェリーンは小夜が消えた方向を見てそう言った。


「アイツはあれでも、霊族始まって以来の最強と言われているんだ。スリーピングビューティってあだ名は、眠っていても勝てるというところから来ている。アイツの立てる作戦は完璧で、後は部下がその通りに行えば勝ってしまうところからついたあだ名だ。実際に奴は戦闘中は指揮座席で寝ているだけらしい」


(そんながライバル?)


(それにしても……)

 フィンはマジメに神殿で身を清めているというのに、エヴェリーンはまた、部下のところへ戻って酒盛りをしている。


 同じパンティオン・ジャッジの代表である小夜とエヴェリーン。こんなところでサボるとはは不真面目極まりない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ