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GIRLS FLEET ~竜を狩る公女(プリンセス)戦記~   作者: 九重七六八
1巻 パンティオン・ジャッジ メイフィア王国編 1
13/201

第3話 第5魔法艦隊はボンビーです(5)

 朝(7時)と夜(10時くらい)の2回投稿で頑張ってます。

 

「お願いします。是非、私たちの艦隊に来てください。レーヴァテインの正操舵手、航海長のポストを用意します。給料は国軍ほど出せないけど、第5魔法艦隊旗艦の操舵手を任せたいというのは、カレラさんの腕を見込んでのことなんです」

 

ホテル「クロマニヨン」の1Fカフェでミート少尉とフィンは、カレラ中尉と面談中であった。第8パトロール艦隊所属の軍人を引き抜くのだ。今の第5魔法艦隊の陣容から考えれば、初めてのプロの人間を入隊させることになる。


「第5魔法艦隊と聞けば、聞こえはいいけど、実際は学生と素人の集まり。失礼ながらフィン公女殿下は魔力はあるけれど、軍事面の才能はからっきしと聞く。そんな艦隊に誘われても……。私に限らず、勝てないと分かっているのに参加する人はいない」

 出されたコーヒーを一口すすって、カレラ中尉はそう答えた。多少の興味があったのは、現在の仕事内容に不満をもっているからだが、いくら正操舵手でも魔法艦隊の中で最弱の第5魔法艦隊では自分の力を十分発揮できないだろうと思ったのだ。これが第5魔法艦隊以外なら、カレラは喜んで参加しただろう。報酬よりもやりがいを重視するカレラにとっては、正操舵手は早くやってみたいポストでもある。


 だが、それと死に急ぐことは別問題である。パンティオン・ジャッジは遊びではないのだ。こんな素人というか、子供と行動を共にしていたら命がいくつあっても足りない。

(う~っ。あいつら、まだ来ないか~)

 ミート少尉は平四郎とナセルが来ないか待った。このままではカレラに断られる。ナセルはともかく、平四郎なら何とかできるのではないかとミートは思っていた。断られてオロオロしているフィンにも期待はできない。(勝てない)と断言されて怒らないフィンにも呆れるが、それはミートもそう思うから怒る気にもなれない。


(あ~っ。私は一体何してるんだ?)

 いっそのこと、こんな魔法艦隊を辞退してフィンを普通の女の子に戻した方がどんなに楽だろうかとミートは思った。それが簡単にできるのなら苦労はないが。


「それじゃ、これで」

 カレラ中尉が席を立とうと腰を上げた。フィンがキュッとミートの上着を引っ張る。同時に目をつむっている。彼女なりの勇気を振り絞っているのだ。

「ま、待ってください。中尉」

「これは第5公女殿下。お言葉をかけていただき光栄ではあるけれど、返事は変わりません」

「せめて、へ、平四郎くんに会ってからにしてください」

「平四郎? 殿下が戦列艦2隻分の費用を支払って召喚したという異世界の勇者?」


「そ、そうです。平四郎くんは世界を救う勇者です」

(ぷっ)っと思わずカレラは吹き出した。フィン公女は17歳。そんなメルヘンチックな妄想をする年でもないだろう。何を根拠にそんなことを言うのであろう。

 

 確かに500年前にゲートで召喚した異世界の男がドラゴンを粉砕し、人類滅亡をまぬがれたという伝説はある。その末裔が今の王家であることも承知だが、そんな伝承を信じてゲートを発動させて異世界から男を呼び寄せたというこの公女。頭のネジが外れているか、男に目がない色ボケか何かであろう。


「聞けば、その男。殿下が子供の頃に留学先で出会ったと聞きます。艦隊マイスターの素質があると聞きますが、マイスターで戦いは勝てませんよ」


「勝てます!」

(ドキッ)っとカレラの心臓に何かが突き刺さる感覚があった。あのおどおどしていたフィンが自信たっぷりにそう言うのだ。


「ああ、ちょっと遅れた、すまんミート!」

「この役たたず! 4時だと言ったでしょう!」

 ナセルが平四郎を伴って来た。平四郎はレーヴァテインの図面に一心不乱に赤鉛筆で何やら書き込んでいる。


「彼が我が第5魔法艦隊のマイスター。東郷平四郎少佐だ。こちらがカレラ中尉」

 そうミートに言われて平四郎は顔を上げた。敬礼をしている赤髪狼カットの女性士官が敬礼をしている。立場上、上官だから形式だろう。


(この男が……)

 カレラは平四郎の姿を頭のてっぺんから足先まで見る。なかなかの色男である。 これなら、フィン公女が惚れるもの無理ないかと思った。

「へ、平四郎くん……カレラさんが、カレラさんが……」

(うぐっ、うぐっ)っとフィンが涙ぐんだ。それを見て平四郎は状況を把握した。おそらく断れたのであろう。それは平四郎の予想の範疇でもあった。だが、悲しむフィンの顔は見たくないと強烈に思った。そう思った平四郎はバンっと机にレーヴァテインの図面を叩きつけた。


「カレラさんっていいましたっけ。たぶん、第5魔法艦隊が魅力ないから断るのでしょうけど、これを見てから判断するべきでしょう!」

「何だ?」

 あまりの剣幕にカレラも思わず図面を見る。赤鉛筆でたっぷりと改造プランが記入してあるそれはカレラにも輝いてみた。

「高速巡洋艦レーヴァテイン、これはこの世界最強最速の船です。僕が改造してあなたがそれを動かす。このトリスタンを救うのは僕たちだ!」


「ぷっ」

 思わず吹き出したカレラ。

(この男の子、本気でそんなこと考えているのかしら)

 だが、平四郎の目は真剣だ。思わず、カレラはレーヴァテインの図面を見る。実物は見たことはないが、高速巡洋艦と聞く。国軍の打撃艦隊に配置されている場合もあるが、艦隊では珍しい船だ。


「ほう……。プロペラではなくて最新のエアマグナムエンジン搭載か」

 空中武装艦の多くは「浮遊石」で浮かんだ船体を数多くのプロペラを回し、それを推進力として進む。風を利用するために補助帆を付ける場合もある。大型艦ほどこの形式であった。エアマグナムエンジンは空気を吸い込んでそれと魔力エネルギーと触媒となる燃料を混合させて燃焼させて進む方式だ。ただ、パワーに限界があり、駆逐艦以下の小型艦艇や一人乗りの戦闘機に採用されているが全長150mを超える巡洋艦に装備するなど聞いたことがない。


「スピードは通常の戦列艦の1.5倍。回避能力も異様に高い。軽さ重視だから武装は劣るけど、それもスピードでカバーできる。こういう船で戦いの革命を起こしたいと思いませんか?」


 カレラは図面から目が離せなくなった。平四郎が言うようにこれは何かが動く瞬間ではないかと思ったのだ。それに断ればパトロール艦の副操舵手だ。副操舵手は補助的な仕事でカレラにとってはつまらない仕事であった。おそらく10年は続けないと正操舵手にはなれないし、魔法艦隊以外では女性がなれる保証もなかった。


(どうするべきか……)

 カレラ中尉は目を閉じた。1分はそのまま動かなかった。そして目を開けた時にはもう決心していた。


「面白い。この船の操舵手、引き受けよう。フィン殿下、これまでのご無礼申し訳ありませんでした。今から、カレラ・シュテルン。あなた様の部下となりましょう」

「カレラさん……」

 フィンがそっと右手を差し出す。カレラは片膝を付くと手の甲に軽くキスをした。

「よかった~っ。これで明日から試験航海に出られる」

 ミート少尉が胸をなでおろした。首都で受け取ってここまで航行できたのも、自動運転のおかげで、街から街への航行はできても航路を外れたルートでは飛べなかったのだ。それでは演習もできないし、あわよくばドラゴンを倒して臨時収入を得ようなどということも考えることができなかった。


「あーっ! こんなところにいた!」

 表の道路を歩いていたルキアは、ホテルのカフェで話している第5魔法艦隊の面々を見つけて乗り込んできた。司令部と称する旅館にはいなかったので探していたのだ。


「平にい、取り付けは終わったけど、支払いはどうするのよ。この貧乏な艦隊じゃ、すぐ出せないんじゃない?」


 バンっと請求書をテーブルに叩きつける。


機雷ユニット 50ダカット×2基

魔法ミサイルランチャー 20ダカット×1基

加速用ウィンドセル 40ダカット

取り付け費用 30ダカット


 合計190ダカットと記入されている。部品代は中古なのでほぼ原価であり、これは戦闘用の武装艦に取り付けるにはひどく安い費用ではあったが、それでも今の第5魔法艦隊には出せる金額ではなかった。国からの支給日がまだ先であったからだ。

「ユニットだけで機雷もミサイルも積まないなら意味ないだろうから、格安のミサイル6発、機雷は20サービスしといた。旧式の奴でCランク製品だけど文句言わないでね。B級ドラゴン相手ならそれでも十分でしょ。1匹狩れば、国から賞金もらえるでしょう。それで支払えばいいから明日、演習がてらに行ってきてよ、お兄ちゃん」

 

 ルキアに言われてそうするしかないとその場の人間はみんな思った。戦うにも金がいるのだ。



 戦記物はファンタジーと違って登場人物が多いです。多すぎてワケがわからんと酷評されます。おいおい……。第5魔法艦隊の乗組員増やしていいのか(笑)

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