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GIRLS FLEET ~竜を狩る公女(プリンセス)戦記~   作者: 九重七六八
2巻 パンティオン・ジャッジ メイフィア王国編 2
124/201

第20話 VS第1魔法艦隊 ~サンビンセンテ空中戦(5)

この作品の中でこの戦いが一番好きです。完璧なマリーと互角に受けて立つ平四郎とフィン。戦術と戦略をぶつけ合う、決勝戦にふさわしい戦いです。

え? 平四郎がコネクト出して無双すればいいんじゃないかって?

 そういうツッコミはスルー。ウルトラマンが最初から必殺技出さないのと同じお約束で(笑)

「敵の戦列艦、ハースニール、大破、戦列から離脱していきます」

「構うな、次が来る!」


 ハースニールを撃破したが、次の戦列艦フレイアが迫る。艦長のシャルルは次の攻撃対象を命令する。


「魔法シールドはまだ持つか?」

「数値は8千。半分程削られました」


「戦列艦同士の至近距離での殴り合いだ。お互いのダメージは相当なものだ。だが、コーデリアⅢ世の魔法シールドは、王国最強。1度や2度では突破はされない!」


「フレイア、射程距離に入りました」

「よし、撃て!」


 すさまじい爆音と共に、お互いが主砲を撃ち合う。魔法弾はお互いの魔法シールドに当たり、爆発して消えるが、コーデリアⅢ世の主砲から発せられる、魔法弾ブリザードレベル10は、フレイアの魔法シールドを抜けて、いくらかのダメージを与えるにとどまった。フレイアが、遠ざかると次は巡洋艦ユグドラシル、アトラスと交戦する。


 第5魔法艦隊旗艦レーヴァテインでは、副官のミート少尉が、この30分の間に繰り広げられた戦闘の結果を平四郎とフィンに報告していた。


「巡洋艦ブラウニーズ撃沈。戦列艦ハースニール戦線離脱。戦闘不能です。戦列艦フレイアは小破ですが、まだ戦闘は十分。巡洋艦ユグドラシル、アトラスも損害軽微です」


「敵は巡洋艦ナイトメア、駆逐艦レイスは撃沈。駆逐艦ファントム小破のみです。こちらの方が損害大です」


(どうする……。再度、仕掛けるか?)


 平四郎は迷った。現在、右回りに旋回中で再度、コーデリアⅢ世を囲むように進むなら、進路を若干修正しつつ、こちらの包囲を突破して一旦離脱した敵にもう一度仕掛けることができる。こちらの損害は多いものの、コーデリアⅢ世の魔法シールドにもかなりのダメージを与えたはずだ。ここで休ませずに戦い続けることで押し切れる可能性はある。


「平四郎くん、ここは直進して戦場を離れるです」

「え、でもフィンちゃん、敵を休ませるわけには……」


「リメルダさんと駆逐艦部隊を代わりに突入させます。戦列艦と巡洋艦部隊は少し離れた場所でシールドを回復しつつ、遠距離攻撃に徹します」


「なるほど! こちらは数で圧倒しているにゃ。休み休み戦いながら、敵の消耗を待つ作戦にゃか」


 トラ吉が猫の両手でパチンと合わせた。平四郎はフィンの考えが理解できた。まだ、敵の主力が来るまでに時間はある。時間は少々かかるが、少しずつ抵抗力を削り取っていくのは勝利へ一歩であろう。


 戦いの始まった当初は、リメルダは偵察として本艦隊から離れていたが、第1魔法艦隊の動きを見て戻っていた。これを予備艦隊として後方に控えさせていたが、今こそ、リメルダの力を投入する場面だろう。


「了解。レーヴァテインはこのまま、直進。後続艦は続け!」

「リメルダさんに連絡。駆逐艦隊を指揮して、コーデリアⅢ世に対して突入してください」


 フィン提督の命令を受けて、リメルダは旗艦ブルーピクシーを先頭にして駆逐艦13隻と共に後方から高速で突入する。リメルダもかつては、第2魔法艦隊の提督であったから、ただ単に突入することはしなかった。2つのグループに分けて、密集体型で魔法シールドの相乗効果を得て、コーデリアⅢ世からの遠距離攻撃をかわしつつ、接近したところで分散して一撃離脱をコーデリアⅢ世の左右で展開した。

至近距離からの魔法魚雷攻撃で、コーデリアⅢ世の魔法シールドの耐久力がどんどん削られていく。マリーの方は護衛の駆逐艦も合流した2隻を加えて4隻あったが、この一撃離脱攻撃の前に次々と撃沈されていく。


(リメルダ、我が妹よ……。なかなか、味な攻撃をしてくる。優秀な妹を持つと苦労するなあ)


 シャルルは巧みな動きで効果的な攻撃を加えてくるリメルダに感心しつつも、主砲、副砲で応戦させる。しかし、ちょこまか逃げ回りながら魔法魚雷を撃ってくる駆逐艦を捉えることができない。


 しばらく、艦長のシャルルに迎撃をさせて駆逐艦隊の動きを見ていたマリーは、あることに気づいた。


(さすがはリメルダの指揮する艦隊だわ。緻密な航路を計算し、効果的にダメージを与えていく。でも、付け入る隙はあるわね)


「シャルル艦長、敵の駆逐艦部隊の動きには一定の法則があります。右はポイント9B、左はポイント7Cに駆逐艦が入ったら、そこに砲火を集中しなさい」

「了解しました。前面の主砲は右側、後面は左側に回頭、ブリザードレベル10で一斉射撃する……」


「艦長、想定ポイントに敵艦隊侵入」

「よし、今だ、撃て!」


 一斉に放たれた氷の魔法弾がポイント9Bと7Cに到達した駆逐艦2隻を凍りつかせ、船体を真っ二つに叩き折った。その瞬間、爆発して粉々になる。そのために駆逐艦の動きが乱れた。乱れたためにスピードが落ちた。コーデリアⅢ世の主砲はそこを見逃さない。直撃弾を連発する。戦列艦の主砲をまともにくらったら、駆逐艦の魔法シールドなど消し飛び、破壊されていく。


「姫様、このままではまずいです」


 ブルーピクシーの艦長、ケットシーのナアムがリメルダに叫ぶ。強烈な王女の平手打ちが炸裂した感じだ。リメルダも戦局が一挙に反転したと認識した。


「やむを得ません、全艦、コーデリアⅢ世の射程距離から最短距離で離脱せよ」


 リメルダは全艦離脱を命令する。すでに3隻の駆逐艦が失われ、2隻がダメージを受けていた。全速力で逃げる駆逐艦に狙いをすましたかのように、次々とコーデリアⅢ世の主砲が魔法弾を連射する。だが、その攻撃も再度、レーヴァテインを先頭に突入してくる第5魔法艦隊の主力部隊の前に中断せざるを得なかった。


「マリー様、第5魔法艦隊の主力、今度は反時計回りで突入してきます」

「いいタイミングね。シャルロッテ、敵もなかなかやります」


「リメルダ艦隊への攻撃も読んでいたようですね」


「こちらを一時も休ませない戦い。しかし、まだ、戦えます。シャルル、敵の艦隊の中で戦列艦フレイアは、先ほどの戦いでダメージが回復できていません。これに砲撃集中。撃破しなさい」


「了解。全砲門、敵の五番艦、フレイアを徹底して狙え!」


 コーデリアⅢ世の主砲がうなりを上げて吠えか掛かり、射程距離に入ってきた戦列艦フレイアめがけて氷結系魔法弾による猛射撃を行う。これには、戦列艦フレイアも少し休んで魔法シールドが回復していたにもかかわらず、それを容赦なく突き破った。2発着弾し、第1副砲が吹き飛び、第3主砲が凍りついて沈黙した。さらに動力部の1つに直撃してそこから火災が発生する。


 だが、コーデリア3世も他の船からの攻撃を受ける。


「レーヴァテイン、戦列艦オーバーロード、カシナートの砲撃が来ます!」


 ドドドドド……。不気味な音が響き渡り、爆発が立て続けに2回響いた。それと同時に艦が少し傾いた。


「シールドが破られて、着弾。後部甲板損傷、後部、第3主砲が損傷しました」


 ウインウインウイン……と火災警報が鳴り響き、艦橋の電気が切れて暗くなった。非常照明に切り替わったのだ。


「火災の消火作業を急げ! コーデリアⅢ世、前進しつつ、敵の後続艦を叩く。目標、巡洋艦アトラス、撃て!」


 火災が発生して煙を出しながらも、マリーは攻撃することを止めない。この攻撃の前に、巡洋艦アトラスが爆発炎上して、地面へ落下していた。


「シャルロッテ少尉」


 マリーは目をそらさず、激戦の様子を見ばがら背後に控える副官につぶやくように尋ねた。


「はい。マリー様」

「そろそろですね」

「はい、そろそろだと思います」

「どうやら、第2幕を迎えることができそうね」


 マリーは戦場の端に新たに映り始めた20の光点を見ながら、少しだけ笑顔になった。



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