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GIRLS FLEET ~竜を狩る公女(プリンセス)戦記~   作者: 九重七六八
2巻 パンティオン・ジャッジ メイフィア王国編 2
122/201

第20話 VS第1魔法艦隊 ~サンビンセンテ空中戦(3)

「やはり、第5魔法艦隊は動かないようですね。彼らも馬鹿ではありませんね。この戦場では、先に動いたほうが負けと思うのは正しい判断です。しかし、正しい判断をしていただけでは、戦いには勝てません。ねえ、シャルロッテ少尉?」


 そうマリーは机上の地図を見ながら、副官の若い少尉(といても、マリーより2歳上だが)に同意を求めた。シャルロッテ少尉は、マリーの意図することがよく分かっていなかったが、とりあえず、相槌を打ったが、たぶん、賢い王女は自分がちんぷんかんぷんなのを知っているだろうと思った。


「マリー様、こちらから仕掛けましょうか?」


 そう言ったのは、この戦いのためにマリーが抜擢した副提督のルイーズ少将であった。彼女は28歳。少佐で駆逐艦の艦長であったが、マリーにドラゴン退治の作戦案をいくつか提出し、マリーにその非凡な才能を認められた。大佐に引き上げられ戦列艦オーフェリアの艦長として、マリーのドラゴン10番勝負に参加し、一頭退治するごとに目覚しい活躍をした。今回の戦いでは、マリーは彼女に分艦隊の指揮を任せるために副提督サブアドミラルの称号も与えていた。


「そうね。ルイーズ、作戦案通りにあなたの艦隊を反時計回りに移動。第5魔法艦隊の背後を襲いなさい」


「はい。マリー様」


 マリーは右手に広大なサンビンセンテの浮遊島を眺めながら、次に第5魔法艦隊が取る作戦を予想していた。


(戦術の基本は、相手に選択肢を与えないでこちらの思うように動かすこと。彼ならこの方法しかとらないでしょうね。唯一、勝機を見出す方法ですから……)


 やがて、ルイーズ少将のオーフェリアとそれに随従する艦が船首を変えて、移動していく様子をその美しい青い瞳に映し出した。


「さあ、こちらも進撃します。シャルル新艦長、指揮を取りなさい」

「は! マリー様」


 シャルル・ギョーム・アンドリュー大尉、今は1つ位が上がって少佐になっていた。平四郎たちが出港したあとに、ローザに請われて、旗艦コーデリアⅢ世の艦長に大抜擢されたのだ。


(リメルダはどう思うだろうなあ?でも、あの平四郎くんと戦えるのは悪くない。妹にふさわしい男か、兄の自分が確かめてやろう)


「コーデリアⅢ世、前進せよ。護衛艦は所定の位置へ」


 決勝戦開始から2日後、8時30分に第1魔法艦隊が仕掛けた。



「なんだって? 第1魔法艦隊が動いた?」

「はいですううう。リメルダさんからの情報ですううう」


 通信担当のプリムちゃんが、そう伝える。第1魔法艦隊は艦隊を2つに分けて、1つは反時計回りに、もう一つは時計回りに進路を変えたというのだ。戦力を分けるのは下策と平四郎は言ったが、うまく噛み合えば、前後に挟み撃ちをかけることができる。第1公女マリーはその可能性にかけたのかもしれない。


(となると、時間差をかけての各個撃破が基本戦術だが、どちらを叩く?)

平四郎は考えた。


「ミート少尉、敵の艦隊の移動スピードから、この空域に達するのはどのくらい?」

「そうですな。敵も全速力で移動しているから、およそ2時間半というところ」


「こちらがどちらか一方に急進したら、何時間後に戦闘になる?」

「1時間半ってところかな?」


 平四郎は考えた。ミート少尉の計算が正しければ、片方を4時間以内に撃破すれば、各個撃破ができる。だが……。あの完璧パーフェクトなマリーがそんな簡単に各個撃破させてくれるのだろうか。疑問に感じたが、ぐずぐずしていては、2軍に挟撃されてしまうのだ。選択の余地がない。


「敵艦の数は? 半々か……」

「そこまでは、まだ、ブルーピクシーでは分析できていない模様です」

「あ、トラ吉さんより、入電ですううううう」

「よし、つないで」


「あーあー。旦那、朗報ですにゃ。時計回りにこちらに向かっている艦隊は旗艦コーデリアⅢ世と巡洋艦1隻、護衛駆逐艦5隻のたった7隻にゃ」


「じゃあ、残りの20隻が背後から? どういうこと?」


 副官のミート少尉がそれはありえないでしょう……という表情で聞き返した。

平四郎たちの索敵能力が高いことは、マリーのことだ織り込み済みだろう。となると、少ない方、しかも、旗艦がある方に先に攻撃をかけてくるのは当然である。


「コーデリアⅢ世は、防御力は史上最大と言われています。その船でこちらの攻撃を支える自信があるからでしょう。でも、私たちにはデストリガーがある……」


 そうミート少尉が言った。改造されたレーヴァテインがフィンと平四郎のコネクトによる魔力で発射するデストリガーは強大だ。一応、火炎系の魔法弾で、「バーニング・ストライク」と名づけていた。演習で1度使ったことがあるが、その威力は戦列艦数十隻を一瞬で撃破できるレベルであった。


「ミート。私はできるだけデストリガーを使いたくないです」


 そうフィンが珍しく厳しい口調で言い放った。これには平四郎も同感であった。できるだけ、使いたくない。相手マリーは封印して戦っているのだ。こちらも正々堂々と戦いたいとは思う。それでも、負けてしまうかもしれない時には最後の切り札としてデストリガーを使うことは否定しない。だが、第5魔法艦隊がデストリガーを使わざるを得ない状況に追い込んだマリーには、きっと何か作戦があるに違いなかった。


「明らかに敵は誘っているけれど、ここは相手の土俵に上がるしか方法はなさそうだ。フィンちゃん、目標はマリー王女の旗艦コーデリアⅢ世、全艦隊に命令して」

平四郎はそうフィンに告げた。フィンはコクリとうなずいた。確かに、それしか選択の余地がない。


「全軍、反時計回りに全速で移動するです。目標、第1魔法艦隊旗艦コーデリアⅢ世!」


 第5魔法艦隊の23隻は全速力で、移動を開始した。時間との勝負である。


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