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GIRLS FLEET ~竜を狩る公女(プリンセス)戦記~   作者: 九重七六八
2巻 パンティオン・ジャッジ メイフィア王国編 2
113/201

第19話 VS第2魔法艦隊 ~ローデンブルク湿地戦(4)

はあ……間に合った~っ。毎日投稿継続中。2ヶ月以上?

「ナアム、そろそろ時間じゃなくて?」

「はい。姫様。只今をもちまして、パンティオンジャッジ開始です。どう動きますか?」


「ナアム。あなた、わかって聞いているわね」

「姫様も決めているくせにお人が悪いですよ」


「ふふふ……。敵の様子は先程から変わらない?」


 ナアムは返事の代わりに(にゃ)と笑顔を見せた。リメルダはブルーピクシーの提督席で第5魔法艦隊の位置を確かめる。


(私相手にこの陣形……。流石だわ。分艦隊を分ければ、それをまず血祭りにあげる。包囲しようと艦隊を展開させれば、レーヴァテインと一騎打ちに持ち込む)


「一番厄介なパターンだったけど、私の想定内よ。ナアム。作戦通り、キャベツの皮を一枚一枚はぐわよ」


「はい。姫様」


 このガスが湧き出る戦場はお互いに視認ができない。普通はそうだ。だが、リメルダの旗艦ブルーピクシーは、あらゆる情報を瞬時に集めることができるイージス艦なのだ。今も小さな浮遊する端末を全方向に3000基も散らし、そこからあらゆるデータを集めて解析することで敵の位置を瞬時に知ることができるのだ。


 つまり、第5魔法艦隊は目隠しをして戦わねばならないのに、第2魔法艦隊は隠れながら近づき、一隻ずつ破壊することが可能なのだ。


(平四郎に私の力を見せてあ・げ・る)


「ナアム、第5魔法艦隊の右から近づくわよ。まずは戦列艦フレイアを叩く。ついでに駆逐艦も沈めるわよ」



「左から熱源反応。ファイアブレードレベル7。魔法魚雷多数」

「防御シールドで対抗。受けたら、左方向に全砲門開け。旗艦に連絡。敵は我が艦隊の左舷方向にいる」


 ベルク大佐はそう命令してほくそ笑んだ。先程は自分の作戦が入れられず、異世界から来た勇者とは言え、まだ、17歳のガキの意見に従わねばならなかった。公女とはいえ、これまた17歳の小娘が提督に命令されてだ。面白くはなかったが、要はこの戦いで活躍して名を売ればよいのだ。幸いなことに第2魔法艦隊は自分の船を攻撃してきた。これに対して反撃して仕留めれば、自分が一番の手柄である。


「敵の攻撃、シールドに命中? あれ?」

「どうしたのだ!」


 オペレーターの素っ頓狂な反応にベルク大佐は怒鳴った。が、それと同時に艦の右に衝撃と爆発音が包み込む。右側にいた駆逐艦が爆発炎上している。戦列艦フレイアも大きく揺れる。魔法魚雷が数発当たったようだ。ファイアーブレードはかろうじて命中しなかったが。


「2発命中。被害は小。消火活動にあたります」

「馬鹿な! 敵の攻撃は左からだろうが! どうして右に被害が出るのだ」


「分かりません。突然、左の熱源反応が消えたのです」

「クソが! 左方向に向かって一斉射撃。あぶりだせ!」


 戦列艦フレイアが主砲で砲撃する。近くの巡洋艦、駆逐艦もそれに続いて攻撃する。だが、一発も着弾しない。シールドにでも当たれば、反応がわかるはずだが、それがない。


「ならば、右だ。右に向かって拡散砲撃。敵の位置を確認する」


 今度は右に向かって撃つが反応はない。今度は右から氷結系アイスブランドレベル8が飛んでくる。魔法魚雷、ミサイルもだ。慌てて右にシールドを張るが攻撃は左から来た。またもや、着弾して被害を受ける戦列艦フレイア。


「馬鹿な、馬鹿な、ありえない。敵はどこにいるのだ」


 ベルク大佐は嫌な予感がした。それは長年の経験から来る軍人の勘だ。思わず、上を見る。戦列艦の艦橋の天井。その勘は当たった。


 リメルダの座乗するブルーピクシーと駆逐艦3隻が一列で上空から下降してきたのだ。そしてすれ違いざまに毒系の魔法弾アシッドバブルを当ててきた。これは着弾すると船の金属を溶かす。一瞬で戦列艦フレイアは不能になった。



「フレイア沈黙。駆逐艦ピクト、撃沈。巡洋艦ライオネルは小破ですうううう」

「どういうこと? 右と左から攻撃してきたのに敵は上にいたなんて」


 ミート少尉が入ってきた情報を元にそう首をかしげた。どう考えても不思議な現象だ。最初に左からの攻撃を感知したのに着弾したのは右。右に攻撃したら上から接近戦を挑んできたのだ。一体どこにいたのであろう。


「おそらく左の攻撃はまやかし。着弾した右が本物だと考えると最初は右にいたんだと思う。そして、素早く上昇して放物線を描くように上から攻撃してきたと……」


 平四郎がそう考えたことを口にした。だが、左のまやかし攻撃の説明がつかない。


「旦那。おいらは聞いたことがあるにゃ。メイフィアの魔法に(幻惑)というカテゴリーの魔法が」


「わたしも聞いたことあるです。使う人はすごく限られるって聞いたです」

「幻惑系?」


「姿を消したり、幻を見せたりする魔法だよ。そういえば、リメルダさん。ローザに襲われて逃げる時に使ったって聞いたよ」


「幻惑か……。て、ことは待てよ。リメルダの特殊能力はトリプルだよな。3種の魔法を切り替える能力。フィンちゃんのマルチには劣るけど、厄介な能力」


「あのお姫様。切り札を隠していたにゃ」




「ふふふ……。今頃、平四郎、驚いている頃よね」


 ブルーピクシーの艦橋でリメルダは右手でほおずえをつき、左手で無人の駆逐艦を操作する。タブレットで駆逐艦を指定し、予定航路を指でなぞると寸分違わず進むのだ。攻撃も予定ポイントで確実に行うようセットできる。リメルダの魔力で動くのだ。


「姫様の能力がバレたと思います」


 ブルーピクシーの艦長を務めるケットシーのナアムはそうリメルダに返した。バレたイコール優れた人物は必ず対抗策を取ってくるはずだ。しかし、リメルダはそんなことは予定通りであった。むしろ、平四郎やフィンが次に取ってくる対抗策を楽しみにしている。


「私はこれでもメイフィア王国の第2公女。第2公女の特殊能力が第5公女のマルチに劣るはずがないでしょう。私の特殊能力はカルテット。火炎系、氷結系、毒系、幻惑系の4つを使いこなす。フィンさんのマルチには種類では勝てないけど、私の方は全てレベルマックスで撃てる。そして、幻惑系は私しか使えない魔法」


 リメルダが使う幻惑魔法は次の3つだ。 


インジビリィティ……艦隊全体の姿を消す。ステルス・ミラーと同じ効果

ドッペンゲルガー……敵に艦隊の残像を見せる。任意の場所に出現できる。

ミラーショット……撃った方向とは違う方向に幻惑を見せる。時間差をつけられる。


 この厄介な戦場で幻惑を使われたら、余計に混乱する。第5魔法艦隊はどこからともなくやってくる攻撃を受け、近づいてきた第2魔法艦隊のアシッドバブルで仕留められていく。火力が低いので一撃ではやられないものの、徐々に戦力を削りとられていく。



「お兄ちゃん、このままじゃ負けるよ」


 巡洋艦コルネットに乗って参加しているリリムが連絡してきた。リメルダは縦横無尽に移動して第5魔法艦隊の攻撃をかわしながら攻撃を繰り返している。既に駆逐艦2隻が沈められ、戦列艦も1隻戦闘不能である。リリムのコルネットも魔法魚雷を一発受けて被害が出ていた。戦列艦オーバーロードが全方向へ猛射撃をして何とか敵の駆逐艦を1隻仕留めたものの、そのオーバーロードもブルーピクシーのアシッドバブルと至近距離からのコールドバレットをまともに受けて戦闘不能状態になりつつあった。


「敵が見えないのなら、こちらも見えないようにしたらどうでしょう?」


 そう副官のミート少尉が提案した。


「おおお……さすが我が妻。いいこと言うね」

「誰が妻じゃ!」


 ドゴッ……。ミート少尉に蹴られたナセルは放っておいて、ミートの策は悪い手ではない。時間を稼ぐこともできる。前回の戦いで手に入れたパーツ(写鏡の楯)と(反射鏡)を各船に取り付けていた。ミラーとステルスはかなりの魔力を消費する。しかし、その魔力は第5魔法艦隊は無限なのだ。


 平四郎の瞳が赤くなり、フィンの心とつながった。魔力ゲージが99999を示し、それ以上の値が出なくなる。最高MAX状態である。

このまま、古代の失われた魔法を使い、 姿を消して第2魔法艦隊の猛攻をかわし、逆に包囲して殲滅してしまおうという作戦である。


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