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GIRLS FLEET ~竜を狩る公女(プリンセス)戦記~   作者: 九重七六八
2巻 パンティオン・ジャッジ メイフィア王国編 2
112/201

第19話 VS第2魔法艦隊 ~ローデンブルク湿地戦(3)

昨日は宴会で深酒し過ぎて、投稿できず。朝も投稿しなかったら、笑っちゃうくらいに閲覧数が減りました。あらまあ……。

1回投稿で1000ですか?1日2回投稿で2000。基礎票が2000か。

とりあえず、今晩投稿。毎日2回投稿しても効果は薄いみたいですねw

 ローデンブルク湿地。ここがリメルダが設定した戦場であった。通常、格下の第5魔法艦隊が戦場を設定するのであるが、今回は圧倒的に戦力差があった。平四郎はフィンの許可を得て、戦場決定権を返上したのである。リメルダはそれを素直に受けた。彼女の性格からすると(私を馬鹿にするのもいい加減にしなさいよね!)と言いそうだが、そんなことは一言も言わず、(ありがとう)と言って素直に受けたのだ。


(それだけでもリメルダがこの戦いに勝ちたいと真剣に思っている証拠だ)


 平四郎は湿地帯の上空に配置された第5魔法艦隊を眺めながら、リメルダがどう出るかを考えていた。第5魔法艦隊は旗艦レーヴァテインを中心に戦列艦2、巡洋艦3、駆逐艦5隻である。第3魔法艦隊と第4魔法艦隊から奪い取った戦利品だ。駆逐艦5隻はフィンが操るが戦列艦と巡洋艦は乗組員が必要なので、人員を集めなければならなかった。ルキアとミート少尉が駆けずり回ってやっと、これだけの艦艇を戦場に連れてこられたのである。


 まだ、10隻がパークレーン港に置いてあるが、人員不足と修理が追いついていなくて、これが精一杯の戦力であった。それでも駆逐艦主体のリメルダに対して圧倒的な戦力である。


「火力では上回ってるけど、問題は練度だな~」


 そうナセルがいつものように椅子から足を投げ出して、右手で帽子をくるくる回している。確かに戦力はあるけど、それを使いこなす技量はまだなかった。戦力どおりの戦いができるかは未知数である。


「それにこの戦場のガス……何とかならないの?」


 ミート少尉はそう見渡す限りの白いガス状の霧のことを言った。このローデンブルク湿地帯上空は、湿地から湧き出すガス状の霧で視界が悪い。しか、このガスには金属粒子が含まれており、それによってレーダーの精度を狂わせる働きがあった。いわゆるチャフが至るところにばらまかれているといってよい。機器による索敵は信用がおけない。


 敵艦隊の姿を捉えるには人間の目に頼るしかないのだが、それも白い霧状のガスによって視界が悪かった。さらに上空には灰色のディープクラウドが広がっており、霧状のエリアを閉鎖空間にしているという戦場だ。


「平四郎がリメルダさんに戦場を選ばせるから……」


 そうミート少尉は文句を言った。この不気味な場所で戦うことが何だか怖いと感じていた。昼でも薄暗く、お化けでも出てきそうである。


「旦那は悪くないにゃ」


 トラ吉が戦場を見渡しながら、そう主をかばった。


「それにこの状況じゃ、あの貴族のお姫様の方もこちらの動きがわからないにゃ」


 トラ吉の言うことはもっともだ。この条件はリメルダの第2魔法艦隊にも有利とはいえないはずだ。逆に閉鎖空間ということで、自由に逃げ回ることもできず、リメルダには不利な状況とも言えた。


「ドラゴンとの戦いじゃ、戦場を選べないにゃ。どんな場所でも戦わなくちゃいけないにゃ」


「トラ吉さんの言うとおりです。この戦いは人々の平和を守ることにつながるです」

 

 珍しくフィンが口を開いた。今回はレーヴァテインへの魔力供給に加えて、5隻の駆逐艦を無人で操る。フィンにとっても試練なのである。


「戦闘開始まであと60分ありますううう」

「お腹が減ったでおじゃる」


 プリムちゃんとパリムちゃんがお腹を鳴らして、艦橋の入口を見るとアマンダさんがワゴンを押して入ってくるところであった。


「わーい。ごはんですうううう」

「いい匂いでおじゃる」


 例のごとく、アマンダさんの魔人形、ゼパルとベパルが給仕をする。鉄製の蓋を取るとそこには上部をパイで包んだトリスフィッシュとメロー貝のスープである。トリスフィッシュは、浮遊大陸の湖で取れる高級魚で、その身は白くて柔らかく、肉厚で食べごたえがある。その骨で取ったスープは海鮮スープの基本出汁となる。このスープはさらに良い味が出るメロー貝を使ってダブルスープになっており、よりコクが出て味わい深いものになっている。このスープにたっぷりの野菜と小麦でできた団子が入っていた。


 口に入れるとクニュクニュした食感とスープをたっぷり染み込ませた中身が噛むたびに口の中にスープを溢れ出すのだ。これにこんがりと焼けたパイが加わり、より味わい深いものになっている。


「スープと一緒に食べるだわん」


 摩人形のベパルが牙の見える可愛い口を開けて、しゃもじを取り出した。木で出来た桶を開けると白いご飯が湯気を立てている。


「平四郎様のリクエストに合わせて、おにぎりなるものを作るだにゃん」

「おおおお!」


 平四郎は感動した。この世界に来て和食が食べられるとは。和食といってもおにぎりなのだが、ベパルとゼパルが歌いながら、リズミカルに手を動かしてご飯を握ってゆく。実はこのコメ。偶然にタウルンの市場で平四郎が見つけたのだ。霊族が住むというカロンという国で作られているらしい。味わいも見た目も平四郎が日本で食べていたというコメと変わらない。しかもコシヒカリ並みの美味しさだ。


「ワン」

「ニャン」

「ワン」「ニャン」

「楽しいにゃ」「ワン」


「塩で握って、中身は酸っぱいにゃん」

「ギュッと握って、ノリを巻くわん」

「あっという間にできたでにゃん」


 お尻をフリフリ、足をリズミカルに動かし踊るように握るベパル&ゼパル。まるで、ちょっとしたミュージカルを見ているようだ。次々に握られたおにぎりが並べられ、それに海苔が巻かれていく。海苔もカロンで作られているらしい。パリパリした香ばしいのだ。そして中身は梅。この世界にも梅があって、それは主にジャムにされていたが、これは塩漬けされていたもの。シソが加えられていないから赤くはないが、味は梅干と遜色はない。


 彼女らが握ったおにぎりが次々と配られていく。先ほどのスープと一緒に食すとほっぺたが落ちそうなくらいにうまいのだ。


「そういえば、アマンダさん」

「はい。なんでしょうか、平四郎様」


 メイド長のアマンダさんが平四郎におにぎりを手渡した。アマンダさんはいつも物静かで自分から話さない。平四郎も久しぶりに彼女の声を聞いたなと思った。


「ローザってどうしてます?」


 そう。第3魔法艦隊提督のローザは、前回の戦いの罰としてこのレーヴァテインのメイドとして奉公しているのだ。だが、これまで一度も平四郎たちの前には現れていない。


「私がみなさんの前に出ても恥ずかしくないように、ローザ様を訓練しています。しかし、皆様にお目通りするには、まだメイドとしての修行が足りません」


「修行?」

「はい。修行です」 


 ふふふ……っとアマンダさんは笑った。あのローザが修行を大人しくやるとは思えなかったが、それをやらせているということは……。


(アマンダさん、実はSだったりして……それも相当のS)


 あのローザを躾けるのだ。相当な手腕が必要だが、彼女なら難なくこなしてしまうような気がするのはなぜだろう。

 

「むしゃむしゃ……。美味しいですうううう。でも、戦闘開始までとあと10分を切ったですうううう」


「念のため、防御シールドを展開するでおじゃる。最初は火炎属性でよいでおじゃるか?」


「うん。パリムちゃん。とりあえず、それでいいよ」


 平四郎はそう答えた。リメルダには(トリプル)という特殊能力がある。火炎系、氷結系、毒系ポイズンの3種類を瞬時に切り替えて攻撃してくるのだ。厄介なのは毒系で、これは空中武装艦の金属を溶かす魔法だ。これを受けると金属が腐食し、徐々にダメージが積み上がるのだ。爆発して一撃で船が破壊されることはないが、この攻撃に効果的に対抗できる魔法シールドがなかった。物理攻撃を防ぐアイアンウォールを展開して、船体に触れさせないようにしないと厄介なことになる。


 ただ、ポイズン系は射程距離が短いので、相当な接近戦とならないと使えないという難点があった。今の状態では使うことはほぼないだろう。


「フィン、戦列艦オーバーロード、フレイアの艦長が応答を求めています」

「ミート、分かりましたです」


 今回、第5魔法艦隊として参加している2隻の戦列艦と3隻の巡洋艦には、ルキアとミートが奔走してスカウトした乗組員が乗っている。特に戦列艦の艦長は国軍から引き抜いた優秀な人物が乗っていた。一人はラカンという名で階級は中将。今年58歳になる大ベテランだ。60歳で退役になる国軍を早期退職して、この第5魔法艦隊の戦列艦艦長に就任した。もう一人は、国軍の巡洋艦艦長をやっていた男で38歳。名前はベルク。階級は大佐。第5魔法艦隊で立身出世したいと考えて応じたそうだ。野心があるだけに、積極的な感じである。


「フィン提督」

「はい、ラカン艦長」


「敵の居場所が特殊なガスで判明しません。偵察に駆逐艦を派遣したらいかがでしょう。巡洋艦1隻と駆逐艦2隻ほど、前線へ出せば分かるかもしれません」


 ラカンはそうオーソドックスな作戦を提案した。この作戦は前線に出した3隻が攻撃されることで敵の位置を知ることができる。火力が上回る第5魔法艦隊であるから、居場所さえつかめば、パワーゲームにもっていくことで圧倒できるはずである。


「ラカン中将のご意見は手堅いですが、それだと戦力の小出しになります。この戦力差です。ここは陣形を変えて敵を懐に誘い込むのはどうでしょうか?」


 ベルク大佐の方は、さらに積極策を述べた。第5魔法艦隊を鶴翼の陣形に再編し、リメルダを誘い込むのだ。両翼の先頭は2隻の戦列艦が務め、突撃してきた第2魔法艦隊を方位殲滅するという作戦だ。


「平四郎くん、ミートどう思いますです?」


 フィンがそう平四郎とミートに意見を求めた。ミートはラカン中将の意見を押した。ここは慎重に動いて一手ずつ追い詰めていく方が確実であろう。


「ううん……」

「旦那。旦那は何か不満みたいだにゃ」

「ああ……」

「おいらも同じ気持ちにゃ。あのお姫様が黙って見つかるのを待つわけがないにゃ」


「そう。そして、包囲されるのを待っている程、リメルダは消極的ではない」


 平四郎はリメルダと長く過ごしたせいで、彼女の性格と考え方がなんとなく分かる。そこから導き出される行動はただ一つ。このレーヴァテインに肉迫することだろう。鶴翼の陣形を取れば、中央奥に位置するこのレーヴァテインめがけて迷わず突っ込んでくる。彼女の最大の攻撃力をぶつけてくるだろう。そうなれば、分が悪いのは第5魔法艦隊だ。改良を繰り返し、レーヴァテインは進化しているとは言っても、まだ、完成系までは程遠い。


 イージス艦としての機能とデストリガーを装備するリメルダのブルーピクシーと1対1では負けてしまうだろう。


「フィンちゃん、この戦場で戦力を分割したり、敵を包囲したりなんて作戦は難しいと思う。ここは円陣を組んで敵の出方を待とう。リメルダの出方を待ってからでも遅くはないと思う」


「ふふふ……」


 フィンは手首で口元を隠し小さく笑った。


「平四郎くんにしては消極的です。でも、それが正解だと思います」


 そう言うとフィンは全艦にレーヴァテインを中心に集まるよう命令した。ラカンはうなづき、ベルク大佐は多少不満げな表情を浮かべたが、フィンの命令に従った。


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