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GIRLS FLEET ~竜を狩る公女(プリンセス)戦記~   作者: 九重七六八
2巻 パンティオン・ジャッジ メイフィア王国編 2
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第19話 VS第2魔法艦隊 ~ローデンブルク湿地戦(2)

第19話は完全オリジナルストーリーです。

第2魔法艦隊はどう戦おうか? 悩むなあ……。

「以上のことを国民の皆様に報告します」


 マリーはそう取材陣の前で全てを話した。第5魔法艦隊の妨害の報告に、取材している記者は色めきたった。


「それでは、18日付け、メイフィア・タイムスの記事は事実ということでしょうか?」


「今、申し上げた通りです」


「マリー様はいつ、それをお知りになったのですか?」


「正式な報告は19日です。それよりも以前に噂を耳にしましたので、内偵は行っていました」


「ヴィンセント伯爵は罪に問うことができるのでしょうか?」


「残念ながら、軍法会議にかける案件ではないことが司法省から通達されました。彼は直接命令を出したわけでもないし、その証拠も皆無です」


「では、無罪ということですか?」


「いいえ。パンティオン・ジャッジ法には抵触しませんが、道義的責任はあります。彼の直接上司であるわたくしの責任でもあります」


 記者たちは黙った。国民の間で絶大なる信頼のあり、敬愛されるマリーが(責任がある)と公言したのだ。


「まず、ヴィンセント伯爵は更迭しました。メイフィア王国のファイナルには参加しません」


 会場がどよめいた。ヴィンセントは軽い男で、今まで何回もマスコミ紙上を賑わした男であるが、彼の操艦技術はみんな知っていたのだった。


「ヴィンセント伯爵が更迭となると、第1魔法艦隊は翼をもがれたと言ってもよいでしょう。それでは、第1魔法艦隊が不利ではないでしょうか?」


 記者たちが口々にそう質問するが、マリーは答えず、さらに続けた。


「それは罪を働いたヴィンセント伯爵の償い。上官たるわたくしの償いとして、このファイナル、わたくしはデストリガーを封印します。もうすでに、旗艦コーデリアⅢ世に封印処理を行いました。第5魔法艦隊の皆さん、フィン・アクエリアス提督、東郷平四郎少佐、これで許してください。ごめんなさい。」


 マリーが深々と頭を下げた。会場は一瞬静まり返ったが、凄まじい勢いでファラッシュがたかれてカメラがマリーの謝罪姿を撮った。記者たちも興奮気味に質問を続ける。


「ま、待ってください。それでは、とてつもないハンディです」


「デストリガーなしで勝てるのですか? 噂では第5魔法艦隊は旗艦の改造を進めていて、デストリガーが使用可能になるという情報もあります。使われたら勝てないのでしょう?」


「マリー様は第5魔法艦隊に勝利を譲る気でしょうか?」


 だが、記者たちはマリーの気迫ある発言に黙り込むことになる。


「わたくしは、完璧パーフェクトのマリーです。例え、人材を欠いても、デストリガーがなくてもわたくしは勝ちます。このくらいの危機を乗り切れないようでは、来るドラゴンとの戦いには勝ち抜けませんわ。フィンさん、平四郎さん、戦場で待っています。パンティオン・ジャッジ決勝戦にふさわしい戦いをしましょう」


「これで記者会見を打ち切ります」


 係官がそう宣言して、マリーは退席した。記者たちは唖然としたが、今度はその秘策を聞き出そうと質問したが、それはノーコメントでしかなかった。


「マリー様は、思い切ったことをなさる」


 グラスに注がれたワインをカチンと合わせて、リメルダの兄であるリメルダの長兄のシャルル・ギョーム・アンドリュー大尉が帰ってきて、平四郎と酒を酌み交わしていたのだ。シャルルは20歳。国軍の若きエリートとして活躍していた。平四郎の杯に注がれた酒は、メイフィア特産のぶどうを使ったもので口当たりのよいもので、アルコール分もほとんどなかったから、平四郎はさっきからもう7杯も飲み干していた。


「あの勇ましい妹のリメルダが、男を連れてくるって言うから、急いで来てみたが、やはり、パンティオン・ジャッジの名将と言われる人だ」


「いや、名将だなんて言われたことないし……それに、リメルダとは……」


「軍では評判だよ。パークレーンなんて田舎に引っ込んでいるから分からないだけだよ。それに君の本命はフィン提督だろ? そこのところも含めてりめるだから聞いているよ。僕は妹の頼れる兄だからね」


「お兄さん……」

「両手に花でもいいじゃないか?」


 そう言ってシャルル・ギョーム・アンドリューは真剣な顔になった。


「世界はいずれ滅びる。それが分かっている人間はごく一部だろうが……。なあ、平四郎くん。近い将来、奇跡的に生き残ったら、また酒を酌み交わそう。それができる日を楽しみにしているよ」


 そう言って、8杯目の酒を飲み干した。


「平四郎……」


 リメルダが平四郎のところへやって来た。眉毛がキリリとしてちょっと釣り上がった目が猫みたいなリメルダがいつになく真剣な目をしている。


「どうしたんだい? 我がリメルダ

「お兄様も聞いてください」


 リメルダはそう言うと大きく深呼吸をした。


「平四郎、私はあなたが好き。大好き、好きで好きでどうしようもない程好き!」


 ツンデレのリメルダが告白した。いつも態度が「私のお婿さんにしてあげてもいいわよ」的な態度で接している彼女。あの盗賊団から救った時に、友達でいいからと泣いたリメルダだったが、「好き」と面と向かって言ったことはなかった。平四郎はそんなリメルダがとても可愛いと思った。それに彼女のことが好きになってきた。


 だが、フィンのことはその何倍も好きだと思っている。その気持ちは変わらない。


「ありがとう……リメルダ。でも、僕にはフィンちゃんが……」

「分かっているわ。だから、私なりにケジメをつけたいの」


「ケジメ?」

「そうケジメ」


 リメルダはバーベキュー会場に来ている客全員に聞こえるように宣言した。その声は星が輝く夜空に響いた。


「私、第2公女にして第2魔法艦隊提督リメルダ・アンドリュー中将は、ここに第5魔法艦隊との同盟を破棄して戦うことを宣言します」


「え、ええええええ!」


 お客も驚いた。リメルダの第2魔法艦隊は第3魔法艦隊の不意打ちを受けて、大損害を受けた。それで第5魔法艦隊と同盟を結んだので、このまま、第5魔法艦隊と合流して第1魔法艦隊と戦うものだと思われていたのだ。


「私は私の力を試したい。そうでなければ、この先、ドラゴンと戦うなんてことはできない。それに好きな人に挑んでみたい。その人相手に全力で私の力を試したい」


 リメルダの目が平四郎を射抜くように思いが伝わってくる。平四郎は受けてたとうと思った。それが何だか運命のように感じるのだ。


「……。分かったよ。リメルダ。受けてたとう」


「ありがとう。平四郎。最初にこれだけは宣言しておくわ。私が勝ったら、私が勝ったら平四郎は私のお婿さんよ」


「え?」

(あきらめてねええええっ。リメルダ、全然、諦めてねえ)


「勝った方は負けた方を自由にできるのがパンティオン・ジャッジのルールよ」

「そうりゃそうだけど。じゃあ、僕が勝ったら?」


「私があなたのものになる」

「それじゃ、一緒じゃん、同じじゃん」


「一緒じゃないよ……」


 リメルダはそう寂しく笑った。平四郎はフィンが好き。フィンも平四郎が好き。この関係は結果がどうであろうと変わらない。リメルダはこの戦いで気持ちの整理をつけるのだと思った。これもパンティオン・ジャッジの意思である。


リメルダ参戦!

どう戦うのだ?

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