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GIRLS FLEET ~竜を狩る公女(プリンセス)戦記~   作者: 九重七六八
2巻 パンティオン・ジャッジ メイフィア王国編 2
106/201

第18話 タウルン共和国サザビー行き(6)

読者が増えた!

目標、関ヶ原の500超(今は1500ですが)

書籍化した作品を超えたいです。でも、程遠いなあ・・・。

「平四郎、平四郎、こっちへ来てよ!」


 リメルダが珍しく大声で呼んでいる。平四郎がリメルダのところへ行くと知った顔がそこにいた。


「君は? 中古ディーラーの……」

「クリオです。平四郎様、リメルダ様、お久しぶりです。そういえば、平四郎様には手配書が回ったって」


「ああ。君の親父さんは大丈夫か? 違法な駆逐艦を売ったって逮捕されてない?」


「父は大丈夫です。軍に顔の効く高官がいますし。そもそも、あの0番艦の横流しは軍絡みです。罪に問おうなんて馬鹿げています」


 確かに一民間会社でできるわけがない。この件に関してはヴィンセントが平四郎の罪にしたいようだが、かなり無理をしている。第5魔法艦隊の他の乗組員や第5公女のフィンが罪に問われないのもそのせいだろう。異世界から来た平四郎一人に罪を着せる気だ。


 クリオはあのフィン行きつけの中古武装艦ディーラーの跡取り息子である。丸めがねの大きな目、まるで女の子みたいな優しい顔は忘れようがない。


「まあ、手配書の件はそのうち何とかなると思うけど。それにしてもクリオくんはこんなところで何を?」


「父様に言われて、武器の買い付けに。これも修行の一環だと言って結構な額を持たされたんですよ」


「買う物って」


「殆どは父様に言われたものを馴染みの店で買うんです。魔法弾各種や、魔法銃など武器。メイフィアの武器もここには豊富にありますからね。それと、後は自由に仕入れていい枠があるんですよ。これは前回、レールガンを平四郎様たちに買ってもらったおかげです」


「あれは役に立ったよ。あんなに安く売ったんじゃ、君の方は損したんじゃない?」


「いえ、儲かりましたよ。僕はあれをほぼタダで仕入れましたから」

「え? うそ?」


「メイフィアで改造されたけど、使い物ならずに結局、この市場に流れ着いたのを、消耗品絡みのおまけで僕が引き取ったんです」


 その話が本当なら、20万ダカット(日本円で約20億円)もかけて旗艦に深淵の楯を装備したローザは、費用0のレールガンによって撃破されたことになる。


「怒らないでくださいよ。タダとは言っても輸送量はかかりますから。平四郎さんに格安で売ったから、こちらの儲けはそこそこですよ。それより、あの0番艦のミサイル駆逐艦沈んじゃったのですよね」


「まあね。また君のところで調達するかもだけど、今回はローザの艦隊を編入したから、戦力的には補充はあまり必要ないけどね」


 とりあえず、第5魔法艦隊の陣容は整っている。数は十分だ。資金不足で人員不足なのと、出撃する費用の工面さえできればだが。


「どうでしょう? 今日、この市場で僕が見繕ったものを仕入れていただくというのは?」


 クリオがそう提案した。第5魔法艦隊の主計官であるルキアがパーツ仕入れの担当だが、平四郎もマイスターとしてある程度の金額を自由にできる。その範囲内で購入するのはありだろう。


「平四郎、私たち、今はお金がないし、信用もないわ。クリオに仲介に入ってもらって仕入れるという話は悪くないわ」


 リメルダが乗り気である。そういえば、なし崩しになっているが、リメルダは今後どうするのであろう。第3魔法艦隊との対決は同盟を結んだが、順当に行けば次は第1魔法艦隊ではなく、彼女の第2魔法艦隊との戦いのはずだ。第2魔法艦隊が再建途中で、リメルダ本人が第5魔法艦隊に入っているので忘れていたが。


「そうだね。それはいいけど、第1魔法艦隊との戦いで必要な武器って提案できるのか?」


「僕ができるのは、おもしろいアイテムの提案だけ。戦術は平四郎様の領分ではないですか?」


 その通りだ。武器屋の小僧が勧める武器を買っただけで、第1魔法艦隊を撃破できるなら、テレビ通販で買ったダイエット器具で中年太りのおっさんがみるみる細マッチョに変身できることになる。


「まずは、弾薬のコーナー。ここタウルンは魔法とか妖精力とかないから、弾薬そのもので属性攻撃するしかないからね。いろんなのが揃っています」


 魔法艦隊の主砲の弾は、基本的に一種類のものを使う。弾頭には魔力によって属性を変えることができる。その制御を行うのが艦長や提督の役割である。弾薬を扱う商人は、火炎弾や冷凍弾、雷撃弾など幾種類もの弾薬を扱っていたが、どれもタウルン軍が使うもので、自分たちには意味のないものだった。


「平四郎さん、これなんかどうです?」

「なんだ? それ」


 クリオが指差したのは、なんの変哲もない砲弾。「照明弾改」と書いてある。夜戦用の照明弾らしいが、そもそもレーダーが装備されているのに、見えない夜に目視のための照明弾が必要とは思えない。


「これはただの照明弾じゃないんですよ。ターゲットを照らし出すだけじゃなく、魔力を一定時間無効化するんです。(改)てあるでしょ。ただの照明弾じゃ売れませんから……」


「おいおい、それってすごい能力だろう。明るくするよりも魔法無効化って」


「魔法無効化って、敵の魔法砲撃を沈黙させることができるってこと?」


 平四郎もリメルダもびっくりしてしまう。


「元々、ドラゴン対策に試作されたようです。タウルン製ですが、メイフィア軍にも使用可ですよ」


(おいおい……そんなチートなものがあっていいのかよ。それも、こんな片隅の箱済みでひと箱いくらってありえねえ……。)


「あ、でも、無効化は五秒間だけですけどね」

「だーっ」


「しかも、自分の方も魔法弾使えませんけどね」


(つ、使えねえ……というより、魔法艦隊には意味ないよ。まだ、魔法使わないタウルン軍なら使える方法はあるかもしれないが……)


 さすがに片隅で売れ残っているはずである。五秒間という短さに加えて、敵も味方も魔法無効。一度無効化させた空間には30分ほど間を置かないと効果が現れない。つまり、連続使用しても時間は伸びない。


(最初の五秒のみ有効か……。要するに武器の使用が五秒できなくなるから、殴り合いになるということ。殴り合い……)


 平四郎の頭にピンと何かがひらめいた。


(使えるかどうか分からないが、あくまでも保険の意味で……)


「クリオ君、これを12発仕入れてくれ」

「半ダースですね。激安の10ダカット」

(安!)


「次に空中艦のスピードを挙げられるパーツみたいのはないか?」


「ああ、あります、あります。ロケットブースター(改)」

(また改かよ……)


「一回限りの仕様で、スピード10倍アップ。但し、効果は五秒」

「また、五秒か……」


「船の両サイドに付属させるので、2つ買わないといけないですよ。巡洋艦クラスなら、あのNX01がオススメ。1基200ダカット」


「た、たけええええ! 五秒で? 使い捨てで400万円!」


 思わず、ダカットの日本円換算をして平四郎は声に出してしまった。売れていないはずだ。でも、平四郎の構想する作戦に必要不可欠なものである。今、遺跡から回収したシャインディスプロエンジンが直れば、レーヴァテインのスピードはさらの30%増す。それだけでも相手を撹乱するが、このブースターがあれば面白い作戦を立てることができる。


「これも2基仕入れてくれ。輸送も含めて君のところで手配をしてくれ。輸送先はバルド商会。で、いくらになる?」


「う~ん。本当は父様に相談だけど、僕の裁量で何とかします。他に何か買ってくれるならサービスしますよ」


 平四郎はその他にも必要な装備を次々とクリオに発注する。既に在庫にあるものは回してくれるし、ないものはこの市場で探してくれるという。ただ、予算がかなりオーバーしてメイフィアのルキアの顔がひきつりそうな気がしないでもなかったが、ここは必要なものと割り切った。


「クリオ君、私も買います」


 おとなしく聞いていたリメルダが平四郎に聞こえないように、クリオにこそこそと耳打ちをした。どうして平四郎に聞こえないようにしているのか分からなかったが、そこは彼女も第2魔法艦隊の提督だ。独立意識はあるのであろう。


「え? リメルダさん、あれを仕入れるのですか?」


「そうです。あと、あれとあれを……。宛先はクロービスの第2魔法艦隊司令部に。支払いは一括現金で」


「ま、毎度有り~です」


 さすが第2公女で、父親が大貴族のお姫様。買う時は即金で豪快だ。


 サザビーの武器市場を後にして、平四郎とリメルダは、クロービスへ向かう船に乗っていた。クリオは納入手続きと平四郎に頼まれたオプションパーツを探すために、しばらく、サザビーに残るという。


「平四郎、結構、いろいろ買ったけれど、タウルン製のロボット兵士1個小隊セットとか、強襲揚陸艦もどきの突入魚雷とか、一体何に使うのよ。艦隊戦にはおよそ不必要だと思うけど」


「それは言えないよ。どちらかというと使わない可能性の方が多いからね」


「ふ~ん。まあいいけどね。作戦を考えて決めるのは、第5魔法艦隊ですから。でも、マリー様に勝てるの?」


「正直ないなあ……。艦隊の数、個々の艦の性能。乗組員の練度、戦上手な王女様。こちらは、すべてに劣り、フィンちゃんは軟禁されているし、資金不足と人手不足で遅々と進まない出撃準備。勝てないというのが普通の判断だろうなあ……」


「そうね……」


 リメルダは考えた。マリーが勝てば、第1魔法艦隊がメイフィア代表としてセミファイナリストになる。平四郎やフィン、リメルダはお払い箱になるか、マリーの艦隊に組み込まれるかである。勝っても負けてもドラゴンの驚異に晒されることには変わらない。


 リメルダは視線を船内に移した。この船は客船でタウルンに観光に来た客でいっぱいであった。みんな楽しそうに会話をしている。ドラゴンが出没しているとはいえ、まだ、一般市民にはその情報は伏せられており、危機を身近に感じることはなかった。それゆえの平和な光景である。これはどこの種族国家でも同様である。


 しかし、今後、その数は増え、少しずつ、町に被害が出てくるだろう。平和な時はもうまもなく失われるのだ。


ちなみにアドミラルは2000近くまで行きました。

同じ作品なのにどうして?

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