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GIRLS FLEET ~竜を狩る公女(プリンセス)戦記~   作者: 九重七六八
2巻 パンティオン・ジャッジ メイフィア王国編 2
102/201

幕間 フィンの家でガールズトーク

「フィン、元気してる?」


 ミート・スザク少尉は、フィンの家に訪ねて来ていた。女の友人なのでなんとか通されてフィンに会うことができた。フィンはヴィンセント伯爵から派遣された人相の悪いボディーガードに監視され、家から一歩も出られないのだ。ミート少尉自身にも監視がついていて、パークレーンからこのマグナカルタまで尾行されていた。


「平四郎君は? へーちゃんは無事?」


 フィンは平四郎に任意同行の命令が出されて、憲兵隊が出動したと聞いて胸が張り裂けそうなくらい心配していたのだ。


「平四郎は大丈夫。昨日、ラピス記者の手引きでリメルダさんと一緒にタウルン方面へ脱出したわ。任意同行といっても、本気で捕まえる気はなかったみたいね。ヴィンセントの奴に圧力はかけられたけれど、地元の警察も駐屯軍も本心は私たちの味方よ。ただ、この家のガードマンは奴の私設みたいだから、用心しないといけないけど……」


「そ、そう……。それはよかったです……」


 平四郎が無事に脱出できたから嬉しいのだが、フィンの顔は浮かない。リメルダと一緒に平四郎が逃避行をしていることがちょっと心配なのだ。それを察したミート少尉がフィンを励ます。


「大丈夫よ。平四郎は草食系だから。リメルダさんは肉食系みたいだけど、平四郎はフィンが好き。それは私も認めるよ。信じてあげないと……」


「それは分かってるです」


 でも、フィンはリメルダの積極的な平四郎へのアプローチの数々を思い出すと気が気でない。自分もあんな大胆なことができるだろうか? できないと平四郎が盗られてしまうようでフィンの心は苦しくなってしまう。


「タウルン経由ですぐに戻ってくるよ。必ず、あなたを救いにね」

「うん。待ってるです」


「お姫様は王子様の救出を待つのが仕事だよ」


 そう言ってミート少尉はドアの外で待機していると思われる男二人の方を見た。鋭い眼光で二人を見ている。一応盗聴はされていないようだが、それでも男たちに聞かれないように艦隊の様子について小さな声で情報を交換する。


「艦隊の物資補給、修理の状態はどうなのです?」


「修理はルキアちゃん中心に進んでいる。物資の補給も順調よ。第3魔法艦隊を倒した賞金が助かったわ。でも、ローザの艦隊の乗組員が大半、やめてしまって人員不足よ」


 前回の戦いで鹵獲した第3魔法艦隊の艦艇であるが、乗組員の大半は国軍から金で引き抜かれた軍人であり、高額な給料が払えない第5魔法艦隊に残る者はほとんどいなかった。今はルキアを中心にドラゴンハンターから募集している最中である。かなりの人数を必要とするため状況は厳しい。


「……困るです」

「もう少し待遇を上げて人を集めたいところだけど、ドラゴン退治に出たマリー様の活躍話を聞いてみんなビビってしまって、第5魔法艦隊への応募を控える人が多くて……」


 そりゃそうだ。第5魔法艦隊はいずれ、第1魔法艦隊と戦うのだ。沈められてしまう可能性がある。誰でも負け戦は避けたい。


「あなたの軟禁もそう。基本、肉親である父親の指示でしょ。犯罪にならないし、警察も動かないのよ。パンティオン・ジャッジへの妨害と訴えても決戦はまだずいぶん先だし」


「……」


 フィンはさっきからミート少尉の話を聞いて、何か考え事をしているようだ。


「私、お父様ともう一度話をするです。この間は平四郎君とのことで、ちょっと私も興奮していたみたい。平四郎君との結婚は、あくまでもこの世界を救った後の話。私にはまずパンティオン・ジャッジに選ばれたことへ責任があるです。例え、マリー様が選ばれたとしても、わたしが全力を出すことが人類の生き残りに少しでも役立つことになると思うのです」


「そうね。その線で説得してみるのがいいわ。あなたのお父さん、平四郎じゃなくても大反対しそうじゃない。ヴィンセント伯爵の件もただ単に平四郎を遠ざけたいがための方便かもしれないし」


 ヴィンセント伯爵は女ったらしで有名である。実直な性格のフィンの父が積極的に結婚を勧めているとは思えない。ミート少尉は両手を頭の上で組んで伸ばした。普段の軍服姿ではなくて、私服姿のミート少尉は新鮮だ。できる女系の雰囲気が可愛らしい女学生に変換されている。


「あ~あ、わたしのパパも反対するだろうなあ……」

「え? ミート、もしかして、ナセルを家に連れて行くの?」


「な、な、ナセル、ち、違うわよ。あんな軽い奴、連れて行ったら、誰でも反対するわよ」


「そうかなあ……。私はミートには合っていると思うよ」


「もう、フィンたら、決めつけちゃって。もし、紹介するにしてもマリー様との戦いの後よ。そんなの」


「ふ~ん。そうなんだ」


「なんだか話はそれちゃたけれど、とにかく、リメルダさんと平四郎がことを収めて帰ってくるまで、こちらはできる限りのことをしておこうよ」


「頼むです。レーヴァテインの他の乗組員たちにもよろしくです」


 パンティオン・ジャッジの決勝戦は、半年先とはいえ、刻々と時間は過ぎている。

 

 被害を受けた船の修理、補給、人員の確保、そして第1魔法艦隊の情報収集。時間は足りないのだ。


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