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受難4

ファレノプシスに見下ろされながら、アイリーシェは焦る。このままでは危惧していた事態になってしまう。

婚約を拒否するアイリーシェにファレノプシスは力技で従わせようとしている。もちろん常識的ではないが、多少非難される程度で、結局は罷り通ってしまう地位にいるのが彼である。

フランシスカ帝国の者は文句を言い、非難し、激昂するだろう。しかしデュール王国の権力と権利を鑑みれば、そのすべては呑み込まれ、やがて了承という形になるんだろうと予想がついた。既成事実を作られれば、結局は折れるしかなくなるだろう。

数百年前から大陸全体で女性の地位と権力が向上したとはいえ、王族の女性の結婚に処女(おとめ)であることが重要視されていることからも、男性優位な風潮が根強く残っていることが窺える。

「何を考えているの?逃げる案でも練っているのかな?」

ファレノプシスは可笑しそうに笑う。唇は弧を描いているのに、瞳の奥は冷たく、笑っていない。

手首を掴む手に力が入る。

(まずい.....!)

振りほどこうとしても、できない。

この状況を覆すことは可能だ。だが、それを明かせばアイリーシェは確実にデュール王国に囚われれる。

明かしたくはない。だが明かさなければ純潔を奪われる。

究極の選択を迫られている。

躊躇う時間など残されていない。

(来て貰わなければ、駄目かも.....)

アイリーシェが諦めかけたときーー。

「冗談だよ、アイリーシェ。君から純潔を奪ったりしないよ、今はまだ」

アイリーシェの上からファレノプシスは下りて、手を差し出す。アイリーシェはファレノプシスの手を借りて起き上がる。

色々と引っ掛かる言い回しだが、今は身の安全を確保出来たのだから良しとしよう。

安堵したところで、すぐ近くから第三者の声が聞こえた。

「もぉー、ファレノプシスったらいきなりおっぱじめるんだもの。しかも姫さまは嫌がってるしさぁ。後々のことを考えると黙って見てるのは論外だしねぇ。止まってくれて良かった!」

天井の上から音もなく降り立ったのは美しい少女だ。蜂蜜色の髪に、闇のような漆黒の瞳。彼女が何者なのかを瞬時に察する。

「ファルマ、何故来たの?」

「そりゃあ、王様に止めろと言われたからに決まってるでしょ」

「精霊王が止めろと?一体どういうこと?」

不思議そうにしているファレノプシスはまだ気付いていないようだが、すぐに感付くだろう。

アイリーシェが精霊王と関わりがあると。

いや、精霊王の契約者がアイリーシェだと。

バレてしまえば、誤魔化しても無理だろう。

ファレノプシスは無理やり暴く。

いや、それよりも先に目の前にいる精霊が口を滑らせる。

止めなければ、と思うがそれよりも先に。

「そりゃあ、姫さまが王様の寵愛を得ているからだよ?」

あっさりと打ち明けた。

アイリーシェは額を抑える。

精霊にとっては些細な事でも人間界にとっては、重大な事をいとも容易く暴露した。


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