再会~そして旅の始まり
窓の外の大阪を見ながら、つい、うとうとしてしまい、危うく乗り過ごしそうになったものの、何とか無事に京都駅に到着することができた。
到着時にはすでに日が差し、外は明るくなっていた。
長々とバスの中で縮こまっていたせいかやけに体が傷み、ぐーんと背を伸ばす。バキバキと骨の鳴る音を聞きながら息を吐くと、心なしか体が軽くなったような気がした。
ふっと時計を見ると、時刻はは8時ちょっと過ぎ。集合は9時半なのでまだ時間はある。
朝食を摂ろうか?それとも駅内の売店でも見て回ろうか?
そんなことを考えていると、電話が鳴った。
「もしもーし!」
電話の相手は忍だった。
「はいはーい!」
軽快に答える。
「美月もう着いた?実は私、もうすぐ着くんだよねー。」
びっくりした私は時計を再度確認する。
「集合9時半って言ってなかったっけ。まだ8時15分だよ。」とつい笑ってしまう。
でも私はわかっている。
私が8時着だと伝えたから、それに合わせて来てくれたんだということを。
たぶん、麻未も・・・。
予想通り、忍の電話を切った直後に麻未からの着信があった。
「今どこにいるのよ」
まったく友達思いの2人だ。
嬉しい気持ちを抑え、いましがた忍からも連絡があったこと、八条口近くの時計広場にいることを伝えた。
「いい?絶対そこを動いちゃだめよ!あんた絶対迷子になるに決まってるんだから!」
どうも麻未はここまで迎えに来てくれるらしい。
私は一人で2人を待つことにした。
が、しばらくして忍から電話が入った。
「麻未と合流したけど、時計広場が分からない」とのことだった。
方向音痴の汚名挽回とばかりに「私がそっちに行くわ!」と意気揚々と駅の構内に入り込む。電話の向こうから忍の「動くな‼」という怒鳴り声が聞こえたような気がしたが、聞こえなかったふりをで電話を切った。
しかし、これが間違いだったと気づくのに、そう時間はかからなかった。そう、相手の返事も聞かず移動したのはいいが、途中でどこにいるのか全く分からなくなったのである。
友人たちの懸念通り、迷子になったのである。
どうしようとおろおろしていると、また着信があった。今度は麻未からである。
「あんた!動くなって言ったのに移動したわね!時計広場に着いたけど、どうせ戻って来れないでしょ!今いるところを教えて」
そういわれても、自分がどこにいるのか全く分からないので、目に留まったカフェの名前を告げる。
「あ、そこなら3人で朝ご飯食べようと思ってたところよ。ちょうどよかった。動かないで待っててね。」
じっと待っていると2人がやってくるのが見えた。
「麻未!忍!」
無事(?)再会できたことを喜び、忍と抱き合う。
麻未はすっと避けた。
「麻未~」
恨みがましい目で麻未を見つめるが、麻未はというとどこ吹く風、さっさとカフェに入ろうと私たちを促す。
「麻未~、心配してくれてないの~?」と恨みがましく睨み付けると、「迷ったあんたを探すのはいつものことでしょ。あんたたち二人を心配してたら私の心臓が持たないわ。」と言い捨てカフェに入っていった。
残された私と忍は「あんたたち二人って言われた」「私たちが無鉄砲だからかな」と抱き合ったまま、一瞬顔を見合せ、そして吹き出した。
そのやりとりで、PCの画面ではなく、実際にそこに忍がいるのだと実感でき、不思議な安堵感を感じ、忍を見つめた。
忍も同じだったようで、微笑むような表情でこちらを見つめ返す。
「久しぶり」「うん。久しぶり」たったそれだけの言葉だったが、私たちにはそれで十分だった。
抱き合っていた手を離し、二人連れだってカフェに入る。
さあ、私たちの旅の始まりだ!