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長袖女。〜PART5〜







「ただいまー」




俺はやっと家に着いた。

何か帰り道が長く感じた。




「母さん、友紀ー・・・」





返事がない。





『誰もいないのか?』




そんなはずはない。

お父さんは仕事だけど、

お母さんは、最近足を痛めたので、

仕事は休暇をとり、

あまり外に出歩かなくなった。






リビングに入る。





???????????




「母さん、クーラーつけっぱなしじゃないか」



そういえば、電気もつきっぱなしだった。

神経質な母さんだから、

消し忘れるだなんて、

よっぽど急いでたんだな・・・




俺は、机の上に紙が置いてあるのを発見した。








『隆。真理亜のアトピーがひどくなり、呼吸が苦しそうです。今から、救急車を呼びます』






殴り書きでそう書いてあった。





俺はすぐに家のタウンページをめくった。

救急車は、一番近い病院に運ぶはずだ・・・

ええと・・・




「岩井総合病院・・・」



俺は、財布だけ持った。

タクシーで行くつもりだ。




『真理亜、待ってろ。お兄ちゃんもすぐ行くからな!』



家を飛び出し、しばらく道路の近くで、

待っていると、タクシーが通りかかった。

空車だ。





「すいませーん!!!!!!」




俺は、そう大きく叫び、タクシーを止めた。




「どちらまで?」



年のいった運転手さんに聞かれる。



「岩井総合病院まで、お願いします」



「はい〜」



「どれだけ高速にのってもかまわないので、できるだけ早くお願いします」







俺の妹、真理亜は今、7歳だ。

そして、真理亜は、赤ちゃんのときから、

アトピーという皮膚炎をわずらっていた。


赤ちゃんのときから、手足、首などに、発疹ができ、

かゆすぎてよく泣いていた。



ひどくなりすぎた時期もあり、

今日のように、病院へ運ばれる事もしばしばあった。

大げさかと思うかも知れないが、

真理亜の場合、何故か息苦しさも訴える。



幼稚園にあがる頃にも、症状はよくならず、

皮膚が赤いせいでよくクラスのヤツにいじめられ、

泣いて帰ってきた事もいっぱいあった。



もう、その頃には中学生ぐらいだった俺は、

真理亜がどれだけ辛いか分かっていた。

でも、馬鹿で知識のない俺には、

泣いている真理亜を慰めてやる事しかできなかった。



真理亜は、小学生になり、

「かゆくても、あんまりかいちゃいけない」

と、自分で思うようになったからか、

アトピーが大分マシになった。

俺達家族も、前よりは真理亜に気をつかわずにすんだ。

実際、この一年ぐらいは、

病院に運ばれる事なんてなかった。










『なのに、なんで、今更・・・』









病院に着いた。






ダッシュで病院の中に入る。

自動ドアを思い切り走りぬけ、

近くにあった病院内の地図をみる。





「皮膚科、皮膚科・・・」








皮膚科病棟に入ると、

暗い顔で、待合室に座るお母さんをみつけた。






「・・・・母さん」



「・・・隆・・・。よかった、置き書き見てくれたのね」



「・・・うん。真理亜は?」



「今、そこで診察中だから・・・入らないでって・・・」





お母さんは泣いていた。





「・・・・泣くなよ、母さん。死にやしないよ」



「真理亜が、学校から帰ってきて・・・真理亜があんまり元気だから、全然アトピーが急にひどくなってる事に気付かなくって・・・」



「それで・・・??」



「真理亜、しばらくいつもの様にお絵かきして遊んでたのよ・・・。で、お母さん、うっかり寝てしまったの・・・」



「・・・・うん」



「起きたら、真理亜が横たわってて・・・最初は寝てるのかと思ったんだけど・・・よく見たらぐったりしてて・・・苦しそうでッ・・・どうして、お母さん寝ちゃったんだろう・・・!!」



「母さん、母さんのせいじゃないよ。大丈夫、真理亜は強いやつだから」





俺は、責任を感じて泣きじゃくるお母さんを、

必死になだめた。




すると、診察室から、医者が出てきた。




「終わりましたよ」



「先生ッ!うちの娘は?!」



「大丈夫です。命に別状はありませんし、今は目を覚ましています」



「よかった・・・」



「でも、念のため、今日と明日は入院させましょう」



「はい・・・」



「でも・・・どうしちゃったんですかねえ?真理亜ちゃんのかかりつけのお医者様からカルテをお送りいただいたのですが・・・ここ一年ぐらい、大分症状が軽くなってたんですよね?」



「はい・・・私も不思議で、しょうがなくて・・・最近は、夏なのに発疹が大分めだたなくなってて。本人もかゆくないかゆくないって・・・」



「うーん・・・。急にここまで悪くなるなんて・・・急激なストレスでもあって、ムシャクシャしてかいたのではないのでしょうか??」



「急激なストレス・・・?」




お母さんと俺は顔を見合わせた。

少なくとも、俺は、そんな様子は見ていない。

俺は首を横にふった。




「あの、心当たりはないんですが・・・」



「うーむ、そうですか・・・・」





その時、

小さな子供を連れ、

一人の女性が息をきらして診察室にはいってきた。




「お母様、申し訳ありません!!!!」



彼女は深く頭を下げた。







一体、なんなんだ?!







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