長袖女。〜PART4〜
俺は、お詫びとしてアイスをおごることにした。
近くのベンチに、彼女は座って待っていた。
俺は、少し距離を置いたけれど、同じベンチに座った。
「あの・・・その・・・本当にゴメン!!」
「・・・別にいいわよ、もう」
「あ・・・うん・・・」
「あんた達わかりやすいのよ」
「え・・・??!あの、いつから知ってたの?」
「まだ、学校にいたとき」
「え?!そんな時から?!」
「コショコショ話になってなかったわよ、あの声の大きさじゃ・・・」
「・・・スイマセン」
「あんたって、そういう趣味なの?」
「ち、違うよ!!!」
「じゃあ、何で?」
「あ・・・その・・・」
言葉が詰まった。
そんなの、俺自身が分からないから。
水野が帰ったとき、
俺もこっそり帰ればよかったんだ。
「あ・・・・気になったんだ。二宮さんてさ、ちょっと謎めいててっていうか・・・・その転校生だし」
「じゃあ、転校生全員尾行してんの?」
「違う、違うよッ」
「変な人ね」
彼女は、そう言ったきり、
無言でアイスを食べている。
おれも、つられて必死でなめているが、
何だか、気まずい。
周りから見ても、多分すごくおかしいと思う。
『何か・・・話さねーと・・・』
「アイス・・・うまいなあー」
「うん」
「毎日、来て食べてるの?」
「うん」
「そんなに好きなんだなー」
「・・・暑いからよ」
その時、俺の頭の中にハテナがいっぱい浮かんだ。
だって・・・おかしーじゃん。
だったら・・・だったらさー。
「暑いんだったら、脱げば?」
「何?」
「カーディガン長袖だから、暑いんじゃない?」
「・・・」
「ねエ、俺なんか気にせず、半袖になりなよ。俺、そういうの気にしないタイプだし・・・」
「うるさいわね、ほっといてよ!!!!」
べチャッッ。
彼女の持っていたアイスが地面に落ちた。
地面の暑さで、すぐにアイスは溶け始めた。
彼女は、立ち上がった。
ギュッと握りしめたこぶしに、
力が入りすぎてプルプル震えている。
目が、怒っている。
何で、こんなに怒るんだろう?
「・・・悪い・・・」
「・・・・」
「・・・あ、二宮さんアイス落としちゃったね。・・・俺、も一個買ってきてあげようか・・・?」
「・・・帰る」
彼女はカバンを持ちあげ、
帰ろうとした。
「あ、待ってよ、二宮さん!」
「軽々しく私の名前を呼ばないで!」
「え・・・・」
「友達じゃあるまいし」
「そんなかたいこと言うなよ〜、クラスメイトじゃねーか」
「くだらない」
そう言って、彼女は歩いていった。
でも、途中で振り返り、
「次、私の後を追ったら警察呼ぶから」
と、言った。
それから、小走りで行ってしまった。
俺は、日が暮れはじめた帰り道を、
一人とぼとぼ歩いていた。
いつもこの道は一人で通るけど、
何だか今日はいつもより寂しかった。
聞こえてくるのは、
ヒグラシの鳴き声だけ。
そして・・・・
「はぁあ・・・」
俺のため息だけ。
俺、何か悪い事いったのか?
逆に、彼女に気を使ったつもりだったのだが・・・。
俺の後悔は、どこに向けていいものか、
とてもじゃないが分からなかった。