長袖女。〜PART2〜
まだみんな夏休み気分が抜けないのか、
もう担任の先生が来ているのに、
ガヤガヤ騒いでいる。
「おいおい!いい加減きりかえろ!しずかにしろ!」
先生の罵声。
でもみんな真剣に聞いてない。
でも、さっきよりは静かになった。
「今日はみんなにお知らせがあるー。今日から、このクラスに新しい仲間が来る事になった。紹介するぞー」
「ふぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!!」
同じクラスの馬鹿キャラ、水野が叫ぶ!
「かわいい系女子キボンヌッ♪」
「やだぁー」
女子が失笑している。
それもそうだ、
いくら楽しみだといっても、
机の上に乗って叫ぶなんて、
やりすぎである。
水野は一体、どこまでテンションがあがってるんだろう。
「コラ、水野、静かにしろ!全くお前は小学生か」
「へへ、すいませーん」
水野は席についた。
が、今度は周りの奴を標的にした。
「なーなー、どんな奴か知ってるやついる??」
みんな、顔が困っている。
しょうがない・・・
「女だよ」
俺は答えた。
「まじ?!斉藤?!!」
「まじ」
「かわいいのかな〜、ソイツ」
「あんま、期待しない方がいいぜー。どーせブサイクだよ」
「まぁーな。かわいいのは滅多にこねえもん」
そして、先生が、
「よし、では入ってこい」
と、教室のドアの向こうの
人影に向かって言った。
ガララッ。
胸の辺りまで伸びた茶髪の長い髪。
透き通るような白い肌。
アイラインがきいたまるく大きい目。
よくとおった高い鼻。
ほんのりピンク色の唇。
手足が長く、まるでモデル。
転校生至上、じゃなく、
俺が生きてきた中で一番かわいい女の子だった。
ビックリして、目玉が落ちそうだった。
思わず声が漏れた。
「まじかよ・・・」
水野も暴れだした。
「超やべーーーー!!!めっちゃかわいい!!!!」
「コラ、水野、今から紹介するから、とりあえず座れ〜!」
女子もビックリしている。
「あんなかわいい子来たら、学年中の男子がウチらに見向きしなくなるじゃん」
もの凄く残念そうだ。
『あれ?』
1つ、気になる事があった。
何で、この真夏の季節に長袖のカーディガンを着ているのだろう?
薄手だとは思うが、多分ニットだ。
見ているコッチが暑苦しい。
それから、何だか彼女の目が・・・
冷たい。
よく分かんないけど、心がないみたいだった・・・
これこそ、「お人形のよう」だよ。
先生が、黒板に大きく名前を書く。
『二宮 沙季』
「大阪の学校から転校してきた、二宮沙季さんだ。ほら、自己紹介してごらん」
「え・・・」
彼女は少し嫌そうに、
「二宮です・・・よろしくお願いします」
と、小さくしかも早口で言った。
真ん中らへんの席の俺でもこんなに
聞き取りにくかったんだから、
一番後ろの奴なんて何にも聞こえなかったはずだ。
「そうだな〜。席は、斉藤の横にが空いてるな」
「えッ・・・俺の横・・・」
水野が手を挙げながら、
「何でだよ〜!!俺の横にしてくれよ!!俺の方がイケメンだしさー!な、サキちゃん♪」
二宮さんは怪しいオッサンを見るのと同じ目で、
水野を見ている。
やばいぞ、水野・・・!!!
「うるさい!水野、おまえは幼稚園児かあ!」
先生の罵声。
水野はいいかげん静かにした。
ぷくーッとほっぺをふくらませているが。
「あ、きにせず水野の横に座ってくれ」
「・・・はい」
彼女が歩いてくる。
俺は、
ゴクリと唾を飲んだ。
そして、席に着いた。
「よ、よろしくな」
俺は、声をかけた。
しかし、彼女はチラッと俺を見て軽く会釈しただけで、
何も言わなかった。
そして、それからも、ずっと何も言わず、
下を向いたままだった。