長袖女。〜PART1〜
季節は、夏。
ミンミンうるさくセミが鳴いている。
ま、いいんだけどね。
夏ッぽいし。
僕の名前は、斉藤隆。
高校二年生。
顔も体型も、
運動神経も並で
普通の高校生だと思うんだけど・・・
ただ、頭が悪い。
すごく悪い。
この前の期末テスト、
全部赤点だった。
そのまた前の中間テストも、
全部赤点。
夏休み、毎日補習に行ったから、
何とか留年はまぬがれたけど、
そろそろ本気で頑張らないと
やばそうだ。
今日から新学期。
何だかんだ、楽しみだ。
気分が新しくなるってゆーか・・・
靴も新しいヤツにした。
バイト代でかったカッコイイやつだ。
「あれ?斉藤靴変えた?」
学校の靴箱で、クラスメイトの金村が、
気付いてくれた。
「へへ。分かったー?コレ、OOの新作でー」
「それよりさー」
「な、なんだよー。もっとくいつけよ」
「悪ィ。俺、ぶっちゃけお前の靴にそんな興味ない」
「あっそー」
俺はなんとなーく不機嫌になった。
「まー、そーふくれんなよ」
「うっせー」
「とっておきのネタがあるんだよ」
「え?!何々!!?」
「今日、転校生が来るんだってー」
「え?!男?女?」
「お・ん・な」
「まじかよー!めちゃめちゃテンション上がるじゃねーか」
「まー、俺は興味ねーけど。望がいるし♪」
「嫌味かよ・・・。で、かわいいの??」
「わかんねー。顔は見たことねーからさ」
新学期になると、ときどき転校生がやってくる。
それが、結構楽しみだ。
しかし、いつも大体は期待はずれ。
まあ、そういうスリルを
楽しむのが醍醐味なのだ。
今回も、そのスリルを楽しむつもりでいた。
しかし、この転校生のせいで、
俺はとんでもない事に巻き込まれていく事を、
この時の俺はまだ知らなかった。