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A.D.2222  作者: 日渡正太
第2話 第1次アーレン会戦
9/32

Episode 9

 銀河宇宙暦494年、4月4日、アーレン宙域――。


 第67空間打撃部隊旗艦「ベイリア」の捜索レーダーが敵艦隊を捕捉したのは、銀河標準時の16時25分。


「ターゲット捕捉、右舷距離2万2千、同航!」

 電測員の報告に、アドミラル・シートに座ったグローディ提督が鷹揚に頷いて、

「戦闘! 右砲戦用意!」

 と号令を発した。


 提督の命令は直ちに「ベイリア」の戦闘情報センターと後続の各艦に伝達され、砲撃態勢が完了する。


 4隻の巡洋戦艦の主兵装である120万出力の大容量ブラスターが起動し、回転砲塔が旋回して右舷の敵艦隊に目標を定める。

 巡洋戦艦1隻につき3連装砲塔が3基、4隻で合計12基36門の大火力が、一斉に敵艦隊を指向した。


 連邦軍のカラーである白灰色に塗られた戦闘艦の群れは、どことなく惑星上の海を進む軍艦を連想させる。


 宙に浮いて戦う船と、水に浮いて戦う船。

 車輪も翼も必要のない両者は、攻撃や防御のための理論が似てきてしまうし、とくに現代の宇宙船は船体の周囲に重力フィールドを張っているおかげで、大気圏内の空気抵抗を考慮しなくても良い形状になっている。


 さらに上甲板の艦首尾線上に並んだ主砲塔や突き出た艦橋など、敵もそうだが、こちらも概ね似たような形状をしている。

 というか、これがまあ、現代の主流だ。


 回転式の砲塔が当然になる前の時代の宇宙戦艦は、艦の両舷にずらりと並んだレーザーやブラスターの砲門を持っていたものだが、海上の戦艦も、帆船時代には舷側に多数の大砲を並べていたものだ。


 それが近代に入って全砲を両舷に指向できる回転式砲塔が採用され、それが普通になった。

 発展の経緯が似ているのだ。


 その近代宇宙艦艇の群れを率いたグローディ提督は、「ベイリア」の戦闘艦橋の窓から、前甲板にある2基の山のような3連装砲塔が動いて、右舷側に指向されるのを満足そうに見守った。


「距離1万5千で砲撃開始、初弾観測急斉射でいく」

 砲撃開始距離と射撃方法はあらかじめ決めてあったものだが、あらためて号令を発して変更のないことを告げる。


「ターゲット近付きます、距離1万9千!」

 オペレーターが刻々と狭まる敵との距離を告げる。


 敵艦隊の近くには、まだ偵察機ベイリア2号機が頑張っていて、味方の弾着観測を行い、砲撃を誘導してくれることになっている。


「それにしても、こんなステルス性の優れた海賊船があるものですかな……?」

 先任参謀がレーダースクリーンを見て首をひねる。


 敵艦のレーダー反射率は恐ろしく少なく、レーダー上に映る艦影も下手をすれば見逃しかねないほど小さい。

 これでは砲の自動追尾装置がうまく働かない可能性があるが、今回は観測機からの誘導があるので問題はない。


「最近は海賊も進化してきてるんだろうよ」

 グローディ提督は小さなことにはこだわらない性格だった。


 ステルス性なら本物の正規軍艦艇であるこちらも、かなり配慮した設計になっている。

 相手のレーダーに映る我が艦隊も、実際よりもかなり小さな物体に見えているはずだ。


 敵の正体は未だ不明のままだが、相手を撃沈すれば脱出する乗員もいるだろう。 それを救助すれば敵の背景に関する情報も得られるというものだ。


「ターゲット、距離1万5千!」

 オペレーターが、敵艦が交戦距離に達したことを報告した。

 グローディ提督は重々しくうなずくと、号令を発した。


「全軍に達する、砲撃開始!」

「砲撃開始!」

「て――――っ!!」


 号令が復唱されて行き、5秒後には4隻の巡洋戦艦の主砲計36門から、強烈な輝きとともにブラスターの火球が一斉に吐き出された。

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