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A.D.2222  作者: 日渡正太
第1話 クローズエンカウンター
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Episode 7

 惑星ハーレイを出撃して2日後。

 第67空間打撃部隊の旗艦「ベイリア」の艦上偵察機が、敵らしき艦影を捉えた。


『ベイリア2よりコマンド67、敵艦らしきもの見ゆ。位置、アーレン宙域AZ388878、トライバンク浮標から95度17航宙マイル、針路概ね2―5―0、速力25、艦数、戦艦2、巡洋艦3、駆逐艦8、後方に輸送船らしきもの2を伴う』


 偵察機「ベイリア2号機」のコクピット後席で情報士官のカレン・カレイルは、音声通信の他に、機上捜索用レーダーの捉えた画像を加えて、旗艦「ベイリア」に戦術データリンクを通じて送信した。


 現在の彼我の距離と針路から考えて、艦隊の会敵予想時刻は約2時間後、銀河標準時の1700時頃になるだろうか。


 できればこのまま会敵ギリギリまで粘って敵艦隊に触接を続け、会敵後は味方の弾着観測にでも回れれば理想的だ。


「ポール君、燃料は大丈夫?」

「あ、はい、大丈夫っス! あと3時間は飛べます」


 前席で操縦桿を握るパイロットのポール・ベイリーがやや上ずった声で答える。

 どうも、この若い偵察機パイロットは、年上の女性であるカレンに対して常に少し緊張しているようなのだ。


 自分は彼の好みなのだろうか?

 だから、まあ少々無理な頼み事もできるのだが。


「ポール君、もう少し敵に近づけない? 戦闘開始までに少しでも情報を取っておきたいんだけど……」

「あ、ハイ! 了解ス!」


 まだ顔にニキビが目立つ年頃のパイロットが機体を旋回させ、敵艦隊との距離を縮める。後席の戦術コンピュータ画面に映る敵艦隊の画像が少し大きくなる。


 1列に並んだ単縦陣の先頭を行く敵の大型戦艦に最大望遠で焦点を合わせてみる。


 全体的に見て、ややずんぐりした感じの紡錘形の船体。

 船体中央付近に突き出たビルディングのような艦上構造物があり、おそらくここに艦橋や戦闘指揮所などが集中して収められていると考えられる。


 その艦橋の前部に大型の砲塔らしきものが2基、背負式に配置されている。1基の砲塔からはそれぞれ2本の砲身らしきものが突き出た連装式になっており、これがこのフネの主兵装だろう。

 国際的に艦砲として一般的なブラスター(熱線砲)なのか、何か別の兵器なのかは、現時点では不明である。


 艦橋の後方には何らかの電子装備のものと思われるアンテナ類が複数と、副次的な兵装と思しき小型の砲塔らしきものが密集する区画があり、その後ろに、艦橋前部にあるのと同じ大型の連装砲塔が2基、やはり背負式配置になっている。


 その後部には艦載機の発進設備だろうか? 

 カタパルト様の構造物と、クレーンアームのような機材が見える。


 そして最後尾が2基並んだロケットノズルで、長大な噴射炎の尾を引いていた。

 初めて見る型のフネではあるが、戦闘艦の形状としては、まあ有りである。


 見たところ、艦橋や砲塔らしき構造物が集中しているほうが上部、反対に近接防御用らしき小型の砲塔がいくつかあるだけのすっきりしたほうが下部だろう。


 宇宙空間を飛ぶ船に上下など必要ないように思えるが、大気圏内やスペースコロニーの港湾区画など、重力のある場所を飛ぶこともあるし、また着陸などの際に「船底」は必要となる。


 背負式に配された合計4基8門の主砲塔が、すべて艦の上部、艦首尾線上に集中した配置になっているのは、全砲を同一目標に指向する際の射界を広くとるためだ。


 この主砲配置が理にかなっていることはわかっていても、実際には各砲塔に供給するエネルギーのジェネレーターと伝導系の配置など、いろいろと技術的な課題があって、実現するのはそれなりに難しい。


 そう考えると目の前の戦艦は、なかなか高度で洗練された設計が成されていると言える。


 本当に、ただの海賊船だろうか?

 ふとそんな疑問が湧いてくる。


 過去にもこのぐらい大型の海賊船が確認された例はあるが、それらはみな大型商船を改造して武装を施したもので、普通はもっとごちゃごちゃしていて、兵装配置のレイアウトにも統一感がなく、かなりちぐはぐで雑多な印象を受けるものなのだ。


 そこへ行くと、この敵艦の外観からは、もっと高度な設計思想と、高い技術力によって建造されたことが窺えて、どうにも違和感があるのだった。


 かといって宇宙軍のデータベースには、このような型の外国軍艦艇は登録されていない……。


「ポール君、もう少し近づけない?」

「いや、これ以上は危険っス!」


 カレンの要求をパイロットは拒否した。

 カレンとしては、もう少し近づいて、敵艦の兵装などの細かい形状を観察し、それらの製造国やメーカー名、型番などを割り出したいのだが……。

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