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A.D.2222  作者: 日渡正太
第1話 クローズエンカウンター
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Episode 3

 テレビのバラエティ番組が終わった。

 セリカがリモコンを手に取って、電源を切ろうとしたその時、ニュース番組が流れ出した。


「こんにちは、ニュースをお伝えします。まず始めは軍事関連から……」

 美人の女性キャスターがニュースを読み出した。


「……ちょっと見て行くか」

 セリカが、一度手に取ったリモコンをテーブルに置いた。


 セリカがテレビを切らないのは、このキャスターが巨乳で、彼のお気に入りだからだ。

 そう、この男は巨乳が好きなのだ。


 それを見抜いているだけに、クオレの怒りは今や頂点に達しようとしていた。

 まさかこいつ、そのためだけに、自分と付き合っているんではあるまいな……?


「……咋日発生した、アーレン宙域での宇宙軍艦艇襲撃事件の続報です。


 国防総省によりますと、被害にあったのは宇宙軍第557任務部隊の駆逐艦『ソネット』と『サーフェス』の2隻です。


 同部隊は駆逐艦6隻から編成される部隊で、宇宙軍哨戒機より国籍不明艦発見の通報を受け、現場へ急行したところ、この不明艦からの攻撃を受け、2隻が撃沈されたものです。


 なお、第557任務部隊は、僚艦2隻の撃沈を受け、この不明艦を拿捕または撃沈することなく、現場から撤退しています。


 付近に他国の艦隊がいたとは考えにくいことから、国防総省ではこれを宇宙海賊などの仕業と見ていますが、正規軍艦艇が海賊の返り討ちにあった件について、国防長官は誠に遺憾であるとの談話を発表し、統合作戦本部では情報収集に追われています……」


「これ、怖いわね」

 掃除機を片付けたクオレが、エプロンを外しながら言った。


「ま、大変だけど、うちにはあんまり関係ねーべ」

 セリカがジャケットを羽織りながら答えた。


 アーレン宙域は遠い。

 同じ宇宙軍とはいえ、このヤマが自分達まで回って来ることはないだろう。


「すぐに討伐艦隊が編成されるだろーし、海賊ぐらい、簡単に片付くよ」

 セリカが、ポンポンとクオレの頭を軽く叩いた。


 これは自分を安心させようとしてくれているのだろうか、だとしたら、彼氏らしい行動と言えなくもない。

 そんなことで少しだけ機嫌を直して、クオレはテレビを消した彼の後に続いて、玄関を出た。


 我ながらつくづく安い女だなあ、と思いながら。




 アーレン宙域での駆逐艦襲撃事件から2日後、宇宙軍の懸命の捜索により、再度付近に敵艦隊の存在が確認された。


 ただの海賊にしては大型の艦艇なども確認されたため、本当にどこか他国の艦隊が領内に侵入してきているのではないかという推測も出たが、艦型の違いや、現在わかっている他国艦船の動向などから、それは有り得ないという結論になった。


 直ちに海賊討伐の艦隊が派遣されることになり、アーレン宙域から近いグリス恒星系の惑星ハーレイにいた宇宙軍艦隊に白羽の矢が立った。


 第67空間打撃部隊と称する、巡洋戦艦4隻を基幹とする有力な艦隊である。


 軍艦の種類には、最も大型で強力な火力と装甲を持つ「戦艦」、戦艦に比べれば小型軽量で火力も装甲も劣るが速力が高めの「巡洋艦」、さらにもっと小型で軽快な「駆逐艦」など様々な艦種がある。


「巡洋戦艦」というのは戦艦と巡洋艦の中間的な艦種で、砲による攻撃力は戦艦並み、ただし装甲が薄く軽量で、速力は巡洋艦並み、というものである。


 戦艦と同等の砲を積むため、大きさは戦艦に匹敵するが、装甲が薄いので全体的にスリムな外見を持っており、軍艦マニアの子供などに人気がある艦種でもある。


 惑星ハーレイの衛星軌道上ですでに補給を終え、出撃準備完了していた第六七空間打撃部隊司令官グローディ提督は、敵艦隊発見の報を受け、直ちに出撃を命じた。


 2日前、グリス恒星系内での演習航海の帰途、突然、味方駆逐艦撃沈の連絡を受け、同時にネオムーンの宇宙軍作戦本部から出撃準備の命令を受領したグローディ提督以下の艦隊司令部スタッフは、それから大慌てでハーレイの宇宙軍基地と掛け合って補給の算段をし、急遽かき集めた軍と民間の補給船で、同じく急に都合をつけた物資と燃料を積み込んで、ようやく出撃準備を整えた。


 その間の忙しさたるや、まさに戦闘以上である。


 わずか2日で出動態勢を完了した第67空間打撃部隊に、作戦本部は感状を送り、その上で海賊艦隊の討伐を命じた。


 グローディ提督は、味方の哨戒部隊から敵艦隊の位置情報を得て、旗艦「ベイリア」の艦上から「全軍出動」の命令を厳かに発した。


 未だ付近に遊弋する補給船の群れに灯火信号で別れを告げて、巡洋戦艦4隻、巡洋艦2隻、駆逐艦3隻から成る艦隊は、超光速ドライブ機関の長大な噴射光の尾を引いて加速を開始した。

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