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A.D.2222  作者: 日渡正太
第3話 未知なる敵
28/32

Episode 28

 アーロン宙域には 全部で3つの恒星系がある。

 ただし人が住んでいるものは、その内ひとつもない。


 もともといずれの星系にも、自然の状態で生物の生育に適した惑星はなく、惑星改造を施して、居住可能にされたものもまだひとつもない、いわゆる未開の地である。


 その内の1つ、サディナ恒星系の第7惑星カピアの衛星軌道上に、今、蠢く影があった。

 カピアは、固形の大地を持たない、ガス状の巨大惑星で、遠目から見ると、その白っぽく光る惑星表面に、点々と黒い斑点のようなものが浮かんでいるようにも見えた。


 しかし近寄ってみると、それらは、惑星表面から高度5万キロ辺りに滞空する、黒っぽい宇宙船の群れであることがわかる。

 総勢29隻の、黒鉄色に塗られた艦隊が、そこに停泊していた。


 その中でも一際巨大な主力艦と思しきフネの中で、今、10人ほどの男達が、白いクロスの掛けられた長テーブルを囲んで、深刻な表情で顔を突き合わせていた。


「長官、輸送船団指揮官からの報告によりますと、我が艦隊の燃料はあと2週間分、弾薬は概ね3回戦分を残すのみとのことであります」


 男達は一様に濃紺の詰襟服という統一された服装をしており、全員が肩から金色の参謀肩章のようなものを吊っている。


「来週には本国から追加の輸送船団が到着する、それで間に合うだろう」

 長官と呼ばれた初老の男が答えた。


「燃料はそれでいいでしょうが、弾薬は如何としますか? それまでに敵との交戦がどれだけがあるか、予断を許しません」


「我々は戦いに来たのではない」

 再び「長官」が答えた。


「GF司令部からは相変わらず本国の不拡大方針をやかましく伝えてきている。戦闘は極力避けよとの命令だ。見敵必殺の我が軍の伝統に反するとの声もあるようだが、そこは自制をするべきだろう」


「しかし、敵から攻撃を受けた場合は……」 


「正当防衛以外の反撃を禁じる、というのが、本作戦における特別交戦規程である。弾薬が少ないならちょうどいいではないか。極力敵勢力との接触を避け、出会ってしまったら逃げ回ろう。もとより本艦隊の任務は、偵察と情報収集のみに限定されている。襲撃してくる敵の撃滅は、作戦目的に含まれていない」


「理屈ではそうでしょうが、実際に会敵したら、逃げるばかりでは被害が増える恐れがあります。適切な反撃を行わなくては……」


「その時は、堂々渡り合って、敵を殲滅すればよい。私とて、この深部銀河に、むざむざと艦隊将兵の屍をさらすつもりはない。全軍を無事に連れ帰ることが私の責務だ。その点は安心してもらいたい」


 この場の指揮官らしき「長官」の言葉に、居並ぶ男達が満足そうに頷いた。


 艦の舷側に設けられたいくつかの小さな舷窓からは、カピアの白いガス状の惑星表面が、渦を巻きながら光り輝いているのが見えていた。

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