Episode 26
駆逐艦は、艦が小さい分、大型艦に比べて乗組員の結束が強い。
しょせん、対艦ミサイルの1発も喰らえば轟沈する程度の防御力しかないから、クルーは全員一蓮托生、チームワークが何より大切だ。
小型であるため、戦艦、空母みたいな大型艦とは違い、快適な居住性なども望むべくもない。
そのため、どうしても乗組員達の生活スタイルは大型艦に比べてラフになり、駆逐艦特有の荒くれ気質みたいなものがあった。
港にいれば、服装や敬礼の動作などで、比較的きちんとしていて上品なのが戦艦、空母、巡洋艦、ぞんざいでいい加減なのが駆逐艦と、乗組員の見た目で、乗っている艦種の見分けがつくと言われていた。
「……本当だと思うかい?」
ライアはつい聞いてしまった。
ゴステロ砲雷長はライアより10も年上だ。
同じ艦で長く寝起きを共にしていれば、つい兄に頼るような感覚が出てくる。
「うちの通信士はそう言ってます、何でも『ブルーウィル』に新しく来たローラとかいう通信士が、そう言ってたそうで……」
「あんたらは、いったい、何の通信をしてるんだい!?」
司令部にでも聞かれたら「規律の乱れにあたる交信」として、何か言われかねない。
「す、すんません! まあ、楽しみの少ない艦内生活ですから、ウワサ話ぐらいは勘弁してやってくださいよ」
「あたし自身がウワサの種になってるってのが、シャクだねえ」
「みんな、姐さんのことを心配してるんでさあ……どうです、ひとつ、ご自分でウワサの真偽を確かめられてみては?」
「いや、でも……」
突然、何だか少女のように、頬を染めてもじもじするライア。
「このままじゃ、心配で夜も眠れないでしょう、お体にも障ります、艦の指揮に影響でも出たらことですぜ」
「あ、あたしは、別に、あんな奴のこと、どうでもいいし……」
「ツンデレ女子高生みたいなこと言わないでください! いつまでもモヤモヤを抱えたままでいるよりは、もう、ここらでスパッと決着をつけたらどうですか?」
「悪かったね、女子高生じゃなくて!」
ライアは、キャプテン・シートの脇にあるコンソールを、ドンと叩いて立ち上がった。
「……ちょっと、部屋にいる。ここは任せる」
「アイ・アイ・サー! ゴステロ、操艦指揮任務引き継ぎます!」
ライアは敬礼するゴステロを艦橋に残し、エレベーターで艦橋下右舷にある艦長室に向かった。