Episode 24
まあ、とにもかくにも……今回の出撃のおかげで、自分の浮気問題はうやむやになった……はずだ。
出撃は面倒くさいし、敵の正体が未だにわからず、しかも第67空間打撃部隊を撃破したほどの強敵というのが気がかりではあるが、とにかく今は敵さまさまである。
セリカがそんなことを思いながら、恋人の横顔をまじまじと見つめていると、彼女がそれに気づいて振り返った。
「何?」
「あ、いや、大変そうだなと思ってさ、大丈夫か?」
「あ、うん、何とか……」
「無理するな、何かあったら俺に言えよ」
「うん、ありがと」
彼女がニコッと微笑む。
彼女の表情に、セリカを咎めるものは何もない。
まあ、この忙しさでは、そんな余裕もないだろう。
セリカは、ホッとして胸を撫で下ろした。
現在、アーロン宙域周辺では、付近を通る大半の商船が航行を見合わせ、迂回航路を取ったり、近辺の惑星上に避難したりしていて、物流に大きな影響が出ている。
ニュースによると、経済界からも、
「宇宙軍は何をやってるんだ!」
という声が上がっていて、彼らとの関係を気にする政治家に圧力がかかり、そこから軍の上層部にも「早く事態を解決しろ!」と矢のような催促だそうだ。
現場に近い宙域では間もなく、駆逐艦などの小艦艇を中心にした部隊で、商船に対する護衛活動が始まろうとしていたが、すぐに使える艦艇の数が限られているため、焼け石に水というのが実際のところらしい。
敵艦隊の正確な規模や動静などは、今もって不明であるが、アーロン宙域周辺の警戒監視所のレーダーには、敵と思われる正体不明の艦影がたびたび捕捉されており、パトロール中の哨戒機が、敵の一部と見られる小艦隊と遭遇する率も増えている。
アーロン宙域から10光年ほど離れた、サイバーベル星系のスペースコロニー群付近に、駆逐艦クラスと輸送船合わせて5隻ほどの不明艦隊が出現し、何もせずに引き返したという事件も起きていた。
高速性能と高い警備能力を誇る豪華客船が、客を乗せたままアーロン宙域を強行突破しようとして、不審な高速艇の追尾を受け、船会社と宇宙軍両方の対応が批判されていた。
事態をこれ以上長引かせると、宇宙軍の立場が悪くなる一方なのであるが、今、現場のセリカ達に出来ることは少ない。
一刻も早く艦隊をアーロン宙域に進出させ、戦力の展開を終えること。
とにかく、それが今、彼らに求められた役割であった。