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A.D.2222  作者: 日渡正太
第3話 未知なる敵
23/32

Episode 23

「艦長、お忙しいところすみません、例の缶なんですが……」

 親父さんことレッド副長が、電話を置いたセリカに話しかけてきた。


「ああ、うん、ええと……ごめん、親父さん、それ何だっけ?」

「2号缶の格納容器です。こないだの演習でヒビ入った奴……」

「ああ、はい、あれ、どうなりました?」


「とりあえず、強化セラミック板を貼っ付けて応急処置しました。まあ当分は大丈夫と思いますが……ちゃんとした修理は次に母港へ帰ってからですな」

「すんません、親父さん、助かります」


 艦の左舷にある第2核融合ボイラーは、先日の演習中に、全力でエンジンを回したとき、激しく焚き過ぎたのが原因で、釜の外側にヒビが入ってしまった。


 今回みたいな緊急出港だと、こんなふうに整備や修理面で、間に合わないものが出て来て困ることがあるのだが、とりあえずは応急的ながら復旧したらしい。


 艦のコンディションを万全に保つのは副長の仕事である。

 艦長がいざ、艦を指揮して戦おうとしたときに、故障や不具合があってはならない。


 しかし、整備不十分なまま、取るものもとりあえず出港した「ブルーウィル」には、これ以外にもいろいろと細かな不調箇所があり、親父さんはそれらに対処するため、すぐにまた艦橋を出て行ってしまった。 


 セリカはすぐ目の前の操舵席を見た。

 そこには自分の婚約者であるクオレ航海長がいて、彼女もまた電話に取り付いて、何かを忙しそうに話している。


 空母の艦橋は狭い。

 聞こえてくる話の内容からすると、彼女の電話の相手は味方の駆逐艦の航法士で、どうやら空中補給の打ち合わせをしているらしい。


 艦隊が次に燃料補給を受けられるのはバート星系で補給艦と会合したときだが、戦艦や空母などの大型艦はともかく、小型の駆逐艦などは、今の補給状態ではバート星系まで辿り着けないものも出て来る。


 そのため、大型艦から小型艦へ、航行途中で燃料を分けてやらねばならないのだが、どうも、それに関する話し合いのようだ。


 受話器を肩に挟んだまま、真剣な表情でコンピューターを操作して、何かを打ち込んでいる彼女。


 ――胸が大きいのはいいんだが、全体的にもうちょっと痩せてくれないかな……。


 そんなことを思いながら、セリカは愛する人を優しい目で見つめた。

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