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A.D.2222  作者: 日渡正太
第3話 未知なる敵
21/32

Episode 21

 第33機動部隊は、宇宙空母2、戦艦2、巡洋艦2、駆逐艦8から成る合計14隻の艦隊である。


 戦力の中心となる空母が2隻なので、戦場に到着すれば、艦隊を2つに分けて、それぞれ空母1、戦艦1、巡洋艦1、駆逐艦4から成る2つの任務群を形成して敵に当たるのが普通の戦い方だ。


 現在、空母「ブルーウィル」の捜索レーダーの範囲内に確認できる味方は、左右の前方5宇宙マイル程に巡洋艦と駆逐艦がそれぞれ1、後方やや離れて旗艦の空母「レドヴィサン」のみである。


 それ以外の味方は、まだずっと後方に遅れており、全部隊が合流しようと思えば、一両日を要するだろう。


 戦場はまだ遠く、現在警戒航行序列も何も発令されていないため、こうしたバラバラの行動になるのだが、一般の人の多くが抱くイメージと違って、艦隊というのはこれが普通だ。


 戦闘宙域以外の場所で接近して陣形を組んでいても航行しづらいだけで、何の意味もないからで、普通はそんなことはしない。


 戦場で戦闘陣形を組んでからも、お互いを窓から肉眼で目視できる程の距離にまで接近することはまれである。

 もしも互いの姿を目で見ようと思ったら、光学観測システムを使って、望遠映像を見るより他はない。


 よく軍事雑誌のグラビアやニュース映像などでは、艦隊が密集隊形で整然と航行している姿が映し出されているが、あれは写真撮影のためにわざとそうしているので、通常では有り得ないのだ。


 艦隊の母港であるネオムーンから戦場であるアーレン宙域までは5日を要する。


 出撃命令が出たとき、艦隊は曲がりなりにも母港で待機中という状態にあったため、わずか1日の準備期間で出港できた。


 これが先に敵と戦った第67空間打撃部隊などのように、演習などが終わったばかりで、燃料、弾薬、食料などが底を尽いた状態だったら、こんなに迅速な出撃は無理だ。


 実際、こうした短時間での出撃が可能な状態にあったからこそ、第33機動部隊に白羽の矢が立ったのであるが、乗組員の中には、せっかくの母港での休日の夢を破られて、不満たらたらの者も多い。


 家族サービスの予定をキャンセルして、奥さんに土下座してきたという幹部もおり、「奴は俺の仕事に理解がない! 帰ったら離婚だ!」と息巻いていたりする。


 それ以外にも、なじみの風俗店の嬢に別れを告げる間もなく、艦に駆けつけて落ち込んでいる者、来週子供の誕生日だと嘆いている者……。


 どうも戦場に赴く艦隊にしては緊張感がないのだが、まあこんなものなのかもしれない。

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