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A.D.2222  作者: 日渡正太
第3話 未知なる敵
20/32

Episode 20

「ブルーウィル、艦首おも部署、艦尾とも部署、レッコー!」

「アイサー! ブルーウィル、艦首、艦尾、レッコー!」


 艦長であるセリカの号令を、操舵席のクオレが、艦内電話をハンズフリーにして復唱し、各部署に伝える。


 出入港時と戦闘時の操舵は航海長の仕事である。


 全体の号令を掛けるのは艦長の仕事なのだが、戦闘機パイロット出身のセリカは操艦に関しては専門外で、クオレから見てやや危なっかしいところがあり、そのため彼女が実際の操縦をしながら、適宜、タイミングなどをフォローするようにしている。

 前航海長も同じようにしていた。


「ブルーウィル」の巨大な船体を繋ぎ止めていた2本の拘束アームが解かれると同時に、左舷のスラスタバーニヤが噴かされて、乗員200名を乗せた全長700ヘットを超える巨体が、ゆっくりと岸壁から離れる。


 ちなみに、アヴァロンで一般的に使われている長さの単位「1ヘット」は、人間の平均的な頭の長さを元に決められたとされているのだが、実際に1ヘットの長さの頭部を持つ人間は、平均よりやや巨顔かな、と思われる。


「両舷前進微速!」

「アイサー! 両舷前進微速!」


 セリカの号令をクオレが再度復唱し、操舵席脇にあるエンジン・コントロール・スタンドのテレグラフを操作する。

 夫婦初の共同作業ではないが、正式にプロポーズされたばかりの彼氏と息を合わせてこういうことをするのは、何か変な感じだ。


 ちょうど夜明けの時刻、次第に明るくなる空の下で「ブルーウィル」は主機関に点火されて、港内をゆっくりと進み出す。


 向こうの岸壁に、こちらと同じく離岸作業中の僚艦「レドヴィサン」が見える。


「ブルーウィル」は旗艦である「レドヴィサン」にやや先行する形で軍港の防波堤をかわして、沖合いに出た。


 港の外は民間航路と交錯するので、衝突防止のため、航海用レーダーと目視による警戒を現にする。


 オペレーター席からローラ・フローレス通信士の声がした。

「ネオムーン・ポート・コントロール、ブルーウィル出港完了、誘導有り難うございました、行ってきます」


『ブルーウィル、こちらポート・コントロール、幸運と無事の帰還を祈ります』

 ローラが話している相手の基地管制官はリサだ。


 クオレは親しい後輩の顔を思い浮かべる。

 突然の出撃で、話もできなかったが……彼女は「レドヴィサン」に乗っているシーレイ参謀とは言葉を交わせたのだろうか。


 すっかり日が昇った海上で、後方にかなりの距離を開けて「レドヴィサン」、左右にこれもかなり遠く、巡洋艦と駆逐艦が1隻ずつ並走しているのが見える。


 それ以外の艦艇はこれから出港してくるか、水平線より向こう側で、こちらと同じように離水のため、白波を蹴立てて加速を続けているはずだ。


「両舷前進全速! 離水速度へ!」

「両舷前進全速、アイサー! 離水速度達します、V1、VR……」


 クオレが操縦桿を目一杯引き、隣の駆逐艦よりやや遅れて、「ブルーウィル」の巨体が水面を離れた。


「テイクオフ終了、高度1000、5000、10000……」


 重力フィールドのおかげで空気抵抗はないのだが、振動で、甲板上に耐熱シートを掛けられて繋止された戦闘機がガタガタと揺れるのが見える。


 大気圏内を上昇中に艦載機の落下事故というのは、これまで起きたことがないが、なんとなく見た目が不安感をそそるので、できれば全機、甲板下の格納庫に入れられるようにならないものか……。


 空の青色が次第に濃さを増して行き、やがて濃紺から漆黒となって、見慣れた星の海が出現した。

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