表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
A.D.2222  作者: 日渡正太
第2話 第1次アーレン会戦
10/32

Episode 10

 偵察機ベイリア2号機のコクピット後席で、カレンは味方の第1弾が飛んで来るのを見た。


 初弾観測急斉射とは、最初の1回だけ試射を行い、その弾着を見て照準を修正し、以後連続して急斉射を行う、というまあまあオーソドックスな射撃法だ。


 味方の初弾36発は、その全部が敵艦隊の上方を通過した。


「惜しい!」

 パイロットのポールが悔しがり、

「弾着高い! 仰角修正マイナス六度願います!」

 カレンの声がヘルメットのレシーバーを通して各艦の射撃指揮所に伝わり、戦術データリンクに誤差の数値が表示される。


 超光速で運動する艦艇同士の砲撃は、現代の射撃管制システムを持ってしても、命中率は10パーセントがいいところだ。

 とにかく、敵より早く命中弾を得なくてはならない。


「仰角修正マイナス6!」

「ベイリア」の射撃指揮所では直ちに新たな発砲諸元が入力され、各砲塔に伝達される。


「て――――っ!!」

 砲術長の号令とともに、第2射が発射された。


 今度は低い!

 第67空間打撃部隊の2度目の斉射は、敵艦隊の下方を通り過ぎていった。


「仰角高め、プラス3!」

 再度照準の修正が行われる。


 次の斉射では、それぞれの火球が、敵艦隊を上下に挟むようにして、その至近を通過した。


「弾着夾叉! 照準固定! そのまま急斉射願います!」

 偵察機上のカレンの指示で、味方の照準がロックされ、そのままつるべ打ちの急斉射に移った。


 2回、3回と夾叉弾が続く。

 このまま撃ち続ければ、やがて命中弾が得られる道理だが……。


 ベイリア2号機のコクピットから、ヤキモキしつつ味方の弾着を見守るカレン。

その目に、敵の大型戦艦2隻の甲板上にある計8基16門の主砲塔が、ゆっくりと一斉に旋回して左舷に指向されるのが見えた。


「敵主砲、旋回中、間もなく砲撃来ます!」

 カレンは味方に危険を知らせた。

 敵の発砲前に命中弾が得られればいいのだが……。


 これだけ夾叉弾が続いているのに、敵はとくに回避運動を行う様子もなく、悠々と照準を合わせているように見えた。

 そして――。


 突如、またしても盛大な発砲煙が敵の全砲塔から上がり、例の奇妙な実体弾の砲弾が一斉に発射された。


「敵発砲っ!」

 カレンがヘルメットのレシーバーに叫ぶ。

 彼女の全身に冷や汗が流れた。




 旗艦「ベイリア」の電測員、パニス・ウォリスは、ベテランの中年女性オペレーターである。


「敵発砲! 弾着来ます!」

 やや太ましい中年女性らしいシルエットながら、それなりに美人のパニスが、緊張した面持ちで、オペレーター席から振り向いて告げた。


「うむ!」

 グローディ提督は落ち着き払ってうなずいた。


 初弾から命中など、そうそうあるものではない。

 先に射撃を開始し、すでに夾叉弾まで得ているこちらのほうが、圧倒的優位のはずだ。


 敵発砲から弾着まで、およそ30秒程度……だったが、

「うわ、これはダメ! 来ます! たぶん直撃!」

 パニスが引きつった表情で叫んだ。


「直撃!?」

 提督、先任参謀はじめ、戦闘艦橋のスタッフが一斉にパニスのほうを振り向いた。

 同時に真下にある第2艦橋から、旗艦艦長の声がレシーバーを通して響いた。

『たぶん直撃になります! 気をつけて!』


「みんな、何かにつかまれ!」

 グローディ提督が叫ぶのと同時に、ものすごい振動が「ベイリア」を襲った。


 その場にいた全員が床に投げ出され、グローディ提督は何かに激しく頭をぶつけて、意識を失った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ