竜×人=???
そんなこんなで子供が産まれました。
展開早いな! とかセルフツッコミを入れておく。
だってさ、旦那様と住処(洞窟)に籠ってごにょごにょのくだりを描写するわけにはいかないし、ね?
ココでの生活なんて、頼まれて水を散布して回ったりする時以外、ご飯もぐもぐしながらひったすら寝床でダラダラごろごろしてるだけなんだよね。天国ですよ。ええ。
人間と比べて、竜の出産てさらっと終わるしね。卵だから。
卵から孵るまでもそう時間掛からなかったし。らくらくー。
という事で、私の腕の中には愛しい我が子がいるわけです。
旦那様と同じ真っ赤な火竜で、ひたすら甘えん坊な男の子。
今もキュウキュウ鳴きながら私の腹に頭をめり込ませ……て……痛い痛い痛い!
ちょ、息子よ! 母はいま人型なので加減してくれ! 子竜とはいえすでに体長3m越え(目測)な君にのしかかられたら、うっかり死ぬやもしれんぞ!
『……なれば竜の姿をとれば良かろうに』
「こっちで居る方が落ち着くんだもん」
こちとら生れてから今まで、ずっと人として生きて来たんだからな。
人型の時は気軽にスキンシップできないから、旦那様としては竜型でいてほしいみたいだけどね。
どうせなら旦那様が人化すれば良いのにー。って言ってみた事もあるんだけど、旦那様は他の姿にはなれないんだってさ。……無念だ。
竜の姿のままでも十分眼福だけどね。でもやっぱ、より多くを求めてしまうのが乙女心っていうか何ていうか。
「というか、人と竜の子なわけだから、この子も人型になれたりするの?」
はっと気付いて息子を見つめれば、息子はきょとーんと見返してきた。和むわー。
旦那様は、息子と私を愛おしげに眺めながら頷いた。
『ふむ、人に近い姿をとる事はできるはずだが』
「息子よ、ちょっと人化してみろ」
『あい!』
むぐぐーと力を込める息子を、わくわくしながら見守る。
竜と人が混ざるって事は、あれかな、竜人的な感じになるんかな!
ほぼ人だけど、鱗+角とか? 頭は竜で体は人とか?
どんな混ざりかたでも、格好良いと思うの!
カッ!
赤い光を放ちながら、変化していく息子。
硬い鱗は、ぷにぷにとした赤ちゃん肌へ。
尖った牙は、可愛らしい乳歯へ。
金色の鋭い瞳は、黒目がちな丸い目に。
鋭い鉤爪のついた手は、ふくふくとした柔らかそうなおててに。
頭にはふわふわの髪の毛が生え、体の大きさも赤ちゃんサイズに。
ああ……
だけど
形 は 竜 の ま ま な ん だ ね !
「こうきたか!」
限りなく人に近い、竜か。……。ごめん、息子よ。自分から望んでおいて、微妙な気分になってしまった母を許せ。
微妙に人化した息子を抱きあげると、いつもと感覚が違うのか、くすぐったそうに身をよじった。
「うきゃきゃっ! かあしゃ、てて、うごかしちゃめっ! くしゅぐったぁのっ」
ん。これはこれで、可愛いかもしれない。
「うりうり」
「んゃー! きひゃひゃひゃひゃ!」
逃げようとする息子を捕まえ、ふにふにと頬っぺたや唇をいじっていると……
「うっ、うっ、へぷしっ!」
くしゃみと共に、ぷしゅっと息子の口から飛び出したのは、温水だった。
『ほう。その姿の時は両方の性質が合わさった状態になるわけか』
ああ、成程。
冷水+炎=温水ですか。
微妙な混ざり方だなオイ!