魔女は使い魔と共に新たな生活をする
スピカ=ルーン達は、住居を森の中に移していつ
もの生活を始める事にした。
リイラ=コルラッジ、レティ、メリッサ=ウォー
カー、エトワールの協力により、どんどん家が出来
上がっていく。
無論、スピカやメリッサは魔術を使っているの
だが。
「皆、手伝ってくれてありがとう」
スピカがにっこりと笑って言うと、エトワール
達は照れたように笑った。
特に、アルトの顔が一番赤かった。
少し彼女の服を引くと、彼は昨日の事を小声で謝る。
「――あの、昨日は、すみませんでした。調子に乗
り過ぎました」
「次からは気をつけてね」
スピカは真っ赤になったのをごまかすためにわざと
冷たい声で言った。
アルトが少ししゅんとなり、スピカはちょっと言い
過ぎたかなとも思ったけどフォローはしないで仕事に
戻った。
そうこうしている間に、エトワールがハンマーで指
を打つなどのハプニングもあったが、家は完成した。
前にここにあった小屋と寸分違いもないデザインだ。
後はここを花壇にして、鳥小屋も立てて、と相談して
いるエトワール達を尻目に、スピカは安堵の息を吐き
出した。
「なんとかなったようで、よかった」
「あら、それより、スピカはアルトとまた一緒に暮ら
せるのが良かったんじゃないの?」
「リイラ!!」
リイラがそうからかって来たので、スピカは怒りを
爆発させて叫び、アルトがびっくりしたような顔にな
っていた。
そ、そんなに怒らなくても、とかおろおろ言ってい
る彼の言葉は、やっぱり今度も無視される。
「もう、リイラとレティは帰って!! ……レティは、
そろそろアカネが迎えに来る時間でしょう?」
「二人っきりになりたいのね、アルトと。スピカも
可愛い所があるじゃないの」
「いい加減にしないと、出入り禁止にするわよ!!」
からかわれるたびにスピカの顔は真っ赤に染まり、
ついには耳まで赤く染まっていた。
レティはその意味が分からないらしくきょとんとし
ている。
リイラはくすくす笑っていたけれど、エトワールに
村まで送ってくれるように頼み、同じようににやにやと
笑っている彼と共に帰って行った。
「じゃあ、私も帰るわ。ダーリンが待ってるし♪ アル
ト、スピカと仲良くね!!」
「か、からかわないでくださいよ!!」
今度はメリッサにからかわれたアルトの顔が真っ赤っ
かになった。
メリッサもダーリンが待っているからと帰ってしまい、
後には顔を赤くした二人だけが残された。
ちなみに、レティもアカネがちゃんと迎えに来て帰っ
て行ったそうな。
否、まだオリオンとリリアがいた。
楽しそうに戯れている。この二匹は仲がいいようだ。
オリオンは多少の知識は得たのか、もう壁を食べたり
はしなくなっていた。
アルトの作った料理に惚れ込んだ、というのもあるの
だろう。
「じゃ、じゃあ帰ろうか、スピカ」
「う、うん……」
二人はぎこちなく手をつなぎながら、オリオンとリリア
に声をかけると出来たばかりの家に入った。
ちょこちょことオリオン達も着いて来て家に入る。
と、そこでハプニングが発生した。
くう~、とスピカのお腹から腹の音が鳴ったのだ。
慌ててスピカは手を放すと、ばたばたと振りながらごま
かそうとしたがごまかし切れなかった。
「……お腹減ったの?」
「……うん」
アルトはちょっと笑いながらすぐにキッチンに入って
いき、メリッサやレティやリイラが新築祝いにくれた調理
器具や材料をすぐに出すと料理を始めた。
しばらくして、彼がたくさんの料理を手に戻って来る。
お肉や野菜がたっぷり入ったコンソメスープ、焦げ目が
ほどよくついたポテトのパンケーキ、デザートにチョコ
レートケーキが五個も出された。
お腹がすいていたスピカは、ぱくぱくと笑顔で食べ始
め、それを久しぶりに見たアルトの笑顔はとても幸せそう
だったという。
スピカの方も、久しぶりに彼の美味しい料理を食べられ
て幸せそうだった。
彼らの足元では、リリアとオリオンがチーズのカップ
ケーキを二匹で分け合って食べている。
彼らはようやく戻ってきた幸せを堪能しながらお互いに
笑いあうのだった――。
戻って来た、日常編スタートです。
シリアスが続いたので、しばらくは
日常編を書きたいと思っています。
スピカとアルトのラブラブっぷり
にも、こうご期待、です!