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魔女と使い魔のバタバタな日々  作者: 時雨瑠奈
魔女は仲間を見つける
25/35

使い魔は友と共に行動する

 スピカ=ルーンが森に逃げ込んでいる頃。

使い魔、アルト=ハルメリアと、その友、

メリッサ=ウォーカーはあたりを警戒

しながら歩いていた。

 誰もいないのを確認し、歩き出す。

メリッサはだんだん明るさを取り

戻していた。

 その事がアルトに安心を与えている。

「スピカ、見つからないわね」

「うん……」

 アルト達は声を待ちながらスピカの

探索を続けていたが、いまだ見つけ

られずにいた。

 スピカの師匠を名乗る者の連絡は

途絶えている。

 こちらから連絡する方法は分からない

ので、どうしようもないのだった。

 メリッサにも聞いてみたが、全く

分からないらしい。

「アルト!!」

 と、メリッサが悲鳴のような声を上げた。

草むらに何かがいる。ガサガサと草をかき

分けるような音がその場に響いていた。

「誰だ!! 出てこい!!」

 誰何すいかの声を上げるアルト。

一瞬、草むらの中が静まったが、やがて

一人の少女と少年が姿を現した。

「アルト、ひさしぶり~」

「また会いましたね……」

 レティーシャ・エルト・モランと、

イリオス=ウォーカーだった。

 レティは事情を知っているのか知ら

ないのか、にこにこと緊迫感もない

笑顔である。

 一方、イリオスは無愛想な感じだった。

無理やり子守りを押し付けられたのかも

しれない。

「レティ様、イリオスさん!!」

「イリオスじゃないの!!」

 嬉しそうに駆け寄るメリッサに、イリオスは

苦虫を噛み潰したような顔になっていた。

 彼はメリッサを、義理の母親を避けている。

「久しぶりね、本当に!! ぜんぜん会いに

来ないんだもの!!」

「あなたにあいさつしたんじゃありません」

「何よ。相変わらず無愛想ね」

 頬をふくらませるメリッサ。その様子は、母親

というより友達に対するもののように思えた。

 幼馴染だった頃の名残だろう。

誰のせいだと思ってる、思わずそう呟いたイリオスは、

睨むような目で見る彼女に詰問にあった。

 彼女はイリオスの恋心も、父親に対する思いも、

全然知らないのだった。

 イリオスの目がさらにきつくなる。

事情を知っているアルトが、慌てて止めに入った。

「あの、二人はどうしてここにいるんですか?」

「あ、忘れてた!! 魔女狩りが始まったん

だよね!? スピカは!? あの子はどこに

いるの!?」

 レティの顔がかなり真剣なものとなった。

揺さぶられ、アルトは言葉に困って立ち尽くす。

「何があったの!? ねえ、答えてよ、アルトッ!!」

「す、スピカはいなくなったんです。探しているんですが、

どこにもいません」

「そんなっ!!」

 レティの顔がしだいに青ざめていく。

イリオスの顔も心配そうにしかめられた。

 と――。

「いたぞ、魔女だ!!」

「あれ? でも、あいつスピカ=ルーンじゃないよな?」

「こうなったら魔女なら何でもいい、連れていくぞ!!」

 三人もの男達がその場から現れた。レティは怯えて

後ずさり、イリオスが構えていた剣を抜く。

 メリッサ達も青ざめて下がった。

「逃げてください、母さん、アルト、レティ様!!

 ここは俺が食い止める!!」

「で、でもイリオス!!」

 メリッサが泣きそうな顔になった。

彼は彼女の血のつながらない息子である。

 置いていけるはずがなかった。

「メリッサ早く!! イリオスは魔導師とかじゃない

から大丈夫!! ここは逃げるよっ!!」

「イリオス!! イリオス――――!!」

 メリッサは両側からアルトとレティに連れて行かれた。

アルトは逃げながらも、スピカは危険な目にあっていない

だろうかと心配になっていた。

 彼女が本気を出せば逃げ切れるだろう。

だけど、彼女は力をまともに出せるかどうかが分から

なかった。

「レティ様、巻き込まれないうちに城にお帰りください。

あなたは魔女ではないんですよ!?」

「嫌!! あたしここに残る!! 一人だけ温かい場所で

ぬくぬくしてるなんて耐えられない!! エトワール

だって協力してるんだよ!?」

「エトワール!?」

 アルトが驚いたような顔になった。彼が動いている

なんて初耳だった。

 彼は貴族であり、アルト達の友人だが、魔導師でも

何でもない。

「どうしてエトワールが!? 彼はどこにいるん

ですか!?」

「『カッサンドラ』に行った!!」

 『占い喫茶・カッサンドラ』には、今、リイラ=

コルラッジがいた。

 彼女は無事だろうか。殺されない事は彼女の発言から

分かっている。だけど、本当に手を出されないのかが

心配だった。そして――。

「あっ!!」

 アルトは額を手で打って呻き声をあげた。

不審そうに二人が走りながら見てくる。

「どうしたの、アルト!?」

「オリオンを忘れてきた!!」

 オリオンの事を知らないレティは首をかしげていたが、

今にいたるまでアルトと同じように忘れていたメリッサは、

血の気の引いた顔になっていた。

 魔女狩りは魔女だけを狩るのではない。

魔導師・魔法生物・使い魔をも狩るのだ。

「オリオン、無事でいて!!」

「ごめんね、オリオン……!!」

 アルト達は店に一旦戻る事にし、方向を変えてオリオン

救出のために乗り出したのだった――。

 今回はアルト編です。スピカは

出て来ません。レティ、イリオスを

再登場させて見ました。

 イリオス君にも春を用意して

あげたい……。

 次回はリイラ編になると

思います。

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