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魔女と使い魔のバタバタな日々  作者: 時雨瑠奈
魔女は仲間を見つける
19/35

魔女と使い魔は友をたよる

 小屋が倒壊してしまったので、スピカ=

ルーンと、アルト=ハルメリアは、メリッサ=

ウォーカーの元へやってきた。

 彼女は笑顔で迎え入れてくれる。

「あら、いらっしゃい二人とも。新作のケーキ

食べていかない?」

「「食べます!!」」

 見事に声が重なり合い、仲がいいわね、と

メリッサにからかわれ、二人は紅くなった。

 と、ふわふわと空を飛んでいるオリオンに

目が止まり、そこでやっとここに来た理由を

思い出す。

 アルトはためらいがちにメリッサを見つめ、

ボソボソとあまり大きくない声で頼み込んだ。

 スピカは罰が悪そうにただうつむいている。

「あのー、メリッサ? しばらくここに置いて

もらってもいい?」

「あら、どうして?」

 メリッサはさらに笑みを深くしたが、ケーキと

お茶を二人の前に置きながら聞いた。

 二人は目を見合わせる。

やがて、アルトが説明する事になった。

「家が、崩れちゃったんだ」

「はい?」

「だから、家が壊れたの!! この子、オリオンって

いうんだけど、ものすごく食欲があってね、家を

かじっちゃったんだ」

 と、オリオンがご馳走を発見し、ケーキを食べようと

そこに向かった所だった。ホールケーキめがけて一直線だ。

 だが、メリッサがその襟首を掴むや、ぽいっ、と放り

投げたので、オリオンはケーキを食べる事が出来

なかった。

 ムッとなり、メリッサに噛みつこうとしたら、頭を強く

叩かれてしまい断念する。

 悔しそうになり、さらに噛みつこうとしたけれど、今度は

拳が飛んできて吹っ飛ばされる。

「駄目よ~いい子にしてないと。悪い子は、お仕置きするし、

お行儀悪い子にはケーキはあげません」

 にこにこしたままで言うメリッサに、恐怖を感じたのか渋々

オリオンは引き下がり、メリッサが目の前に置いた分だけを

口にした。

 二人が驚いたようにメリッサを見る。

「すごいね、メリッサって……」

「そうね……」

「躾は、ちゃんとしないと駄目よ?」

 母のように言ってくるメリッサに、二人はメリッサってタダ

ものじゃないな、と想いながら、ケーキを一口口に運んだ。

 ふわり、とスピカの顔が綻んだ。それは、チョコレート

ケーキだった。

 しかし、ただのチョコケーキではない。

チョコレートのアイスクリームをふんだんに使った、とろける

ように美味しいケーキだった。

 アルトは悔しそうに眉をしかめる。ケーキ屋なのだから、

メリッサの方がケーキを作るのが上手いのは当然なのだが、

いつもアルトはメリッサの料理の腕に嫉妬してしまうのだ。

 特に、スピカが彼女のケーキで笑っている所を見ると。

「アルトは子供よねえ」

 メリッサがそう言い、アルトの眉が少しだけ吊り上った

訳が分からない、といったような目でスピカが首を

かしげる。

「どうして?」

「アルトったらねえ、私のケーキの腕前――」

「わああああっ!!」

 メリッサがくすくすと笑いながら言いかけたので、真っ赤に

なったアルトが大声を発した。手を振り回して彼女を睨む。

 スピカは首をかしげたけれど、それ以上聞かずにケーキを

食べ進めた。

「それより、メリッサ、さっき聞いたことの答えを教えてよ」

「もちろんOKよ。私は、あなたたちのことを自分の子供の

ように想ってるんですもの。アルトは家で働いているし、

スピカにも働いてもらうつもりでいるけれどね」

「え!?」

 スピカが音を立ててフォークを置いた。自分の家事の腕前を

思い出したのだろう、彼女は青ざめていた。

「わ、私、料理もそのほかの家事も苦手で……」

「裁縫が得意なんでしょう? 開いたスペースに、仕立用の

場所を作ろうと思ってたの。接客はしなくてもいいわ。一人、

雇うつもりでいる子がいるから」

 その時だった。ちりりん、と扉につけられた鈴が

鳴ったのだ。

 一人の少女が、扉を潜り抜けてやって来た。

ブルネットの長い髪を、今風な形に結ったその少女は、

スピカの親友リイラ=コルラッジだった。 

「リイラ!?」

「スピカ!?」

 お互い、ここにいる事を知らなかったので、二人は

目を丸くしてだだ見つめあっていた――。

 お母さんは最強です、みたいな

お話になっちゃいました(笑)。

 実際にお腹痛めた子はいない

ですけどね~メリッサは。

 オリオンもしだいにいい子に

なっていく予定です。

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