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魔女と使い魔のバタバタな日々  作者: 時雨瑠奈
恋を知る魔女
15/35

魔女は任務を遂行する

 スピカ=ルーンは、部屋で一人悩んでいた。

エトワールが教えてくれた事を考えている。

 床に寝転がっているので、白い雪のような

髪はくしゃくしゃ。

 その頬にも、床の木目の跡がついて

しまっていた。

 それでも、スピカは動かない。

怖かった。また、彼に会うのが。

 拒絶されるのが怖かった。

あんなに怒っていたのだ。

 あんなに、傷つけたのだ。

でも、二度と会えないのは嫌だった。

 会いたい。彼に会いたい。

会いたい!! アルトに会いたい!!

 キッ、とスピカは顔を上げた。

「アルト、待っててね」

 そして、彼女は行動する事にした――。



 スピカは、白い髪をきっちりとツイン

テールに結い、ピッカピカに磨いた星型の

髪飾りをつけていた。

 アルトが可愛いと言ってくれた、可愛らしい

桜色のローブ姿だった。

 彼女は今、彼がいるという、『占い喫茶・

カッサンドラ』の戸口の前に立っている。

 胸がドキドキと高鳴る。

だが、こうしていても始まらない。

 スピカは上質な木の扉を叩いた。

「はーい、入って」

 女性の声と共に、扉が開く。

勇気を振り絞り、スピカは中に入った――。



 大量のチョコレートケーキと、甘い香りが

スピカを歓迎した。

 ついごくりとつばを飲み込んでしまい、慌てて

彼女は顔を引き締めてその女性を見つめた。

 アルトと仲がよさそうに話していた女性だ。

なかなかの美人だったので、それだけでも負けた

ようで、彼女はムッとなった。

「――座って」

「はい」

 声をかけられ、スピカは言われた通りにした。

音も立てずに椅子に腰下ろす。

 称賛の輝きがその目に見えて、スピカは戸惑った。

女性は結い上げた黄色の髪を揺らしながら、スピカに

向かって微笑んでいる。

「何の話に来たのか、もう、わかってますよね」

「ええ。でも、その前にケーキをいただいてくださら

ない? あなたのために焼いたのだから」

 時間稼ぎ!? でも、そんなことをする理由がない。

スピカは悩みつつも、ケーキの魔力に負けてそれを

食べ始めた。すごく美味しいので、止まる事なく

食べていく。

 もう少しまずかったら、残してやるのに。

スピカは悔しげに顔を歪めながら、大量のケーキを

次々と口に運んで行った。

 瞬く間に、ケーキが載った皿は綺麗に空になった。

差し出されたナプキンで口元をぬぐい、スピカはキッ、

と彼女を見た。

「アルトを出してください、連れて帰ります」

「どうしようかしら、私も、アルトが好きなのよね」

「私の方がアルトを好き!! 愛してる……」

 とその時、何か物音が聞こえて来た。

首をかしげてその音が聞こえた方を見るスピカに、

彼女はひきつった笑みを浮かべた。

「今の音、なんですか?」

「息子がいるのよ!! もう、まったくしょうがない

わねえ、やんちゃざかりで!!」

「そうですか……」

 スピカの興味が薄れたのを見て取って、彼女はホッと

して笑みを浮かべた。音がした方をキッと睨んでいた

けれど、スピカが語り出したので、そちらに慌てて目を

移した。

「それで、お話の続きですが、私はアルトを愛してます!!

 アルトがいなくては、生きていけません!!」

「本当に愛しているの?」

「もちろんです」

 彼女は意地悪そうな笑みを浮かべていた。

スピカは一瞬ためらい、だがそれを顔に出さないように

している。

「アルトは、あなたが使い魔としか見てくれない、って

言っていたけれど?」

 音を立ててスピカが立ち上がる。その顔が、さっ、と

青ざめた。

 今にも倒れそうな顔色だ。再び物音がし、彼女が戸を強く

叩くと静まった。スピカの方にも、変化がある。

 一歩も引かない強い目が、メリッサを睨み据えていた。

「確かに、最初はそう思ってました。最初は、彼は私の中で、

所有物モノでしかなかった。ですが、私は気づいたのです。

アルトは、ただの使い魔ではなく、一人の男、だと」

 よしっ、と彼女がガッツポーズをした。

懸命に可愛らしい口を動かしているスピカは、それには

気づかない。

「私は、アルトを愛してます。一人の男として。一人の人間

として」

「なら、どうしてアルトを拒絶したの?」

 その問いを聞いても、もうスピカは青ざめなかった。

彼女をしっかりと見つめ口を開く。

「私は、怖かった。アルトと、使い魔と主としてではない関係を

作るのが、怖かった。でも……もう、怖くない」

 逃げるということは、それ以上先に進めないということに、

スピカは気づいていた。逃げれば、永遠に彼の心を手に入れる

事など出来ない。永遠に、彼を失ってしまう。

 そんなのは、嫌だった。

「それ以上に、アルトが好きだから、恐怖より、アルトを好きの

方が勝っているから、私はもう逃げない。アルトを連れて帰り

ます」

 くすくすと彼女は笑っていた。カッとスピカの顔が赤くなる。

この人は、自分の言った事が理解出来なかったのだろうか。

「何がおかし……!」

「おかしいのじゃなくて、嬉しいのよ」

「は?」

「出てらっしゃい、アルト、エトワール」

 スピカは頭がくらくらして、思わず椅子に座り込んだ。

アルトはともかく、エトワール!?

 私にいろいろな事を教えた彼が、なんでここにいるの!?

まさか……。担がれたと知ったスピカの眉が、きりきりと

吊り上った。

 白い顔が、耳まで真っ赤になる。

ひっそりと出てきたアルトとエトワールの頬を、平手打ち

した彼女は喚くような声で叫んだ。

「アルトも、エトワールも大嫌い!!」

 ショックを受けるアルトの顔を、笑いながらメリッサが

見ていた――。

 ついに作戦実行のため(スピカは

これが作戦とは知らないですが)

スピカが動き出します。

 それを、エトワールに頼まれ

悪女の演技をするメリッサが

迎え撃つ。計画は成功するのか

!? 次回もよろしくお願い

します。

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