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魔女と使い魔のバタバタな日々  作者: 時雨瑠奈
恋を知る魔女
14/35

使い魔と男は密談する

 アルト=ハルメリアは、エトワール・

クロウ・リルアラと話しあっていた。

 つまんない、と喚くレティ姫や、

せっかく面白そうな話をしてるのに、

とぶつぶつ言うメリッサ=ウォーカーを

一時排除して、二人になっている。

 ちなみに、イリアスは早々に姿を消して

しまっていたいた。彼はここにはいつかない。

 その代わりのように、エトワールはちょく

ちょくここに来ていた。

 メリッサもこころよく迎えて嫌がらないし、

居心地がいいからよく居座ってしまうのだ。

「ボクは何をすればいいんですか?」

 キッ、と顔を上げてアルトが聞いてきた。

かなり真剣な顔だ。

 エトワールはつい吹き出してしまい、真っ

赤になった彼から怒鳴られた。

「何で笑うんですかっ!!」

「いや、そんな顔しなくてもと思ってな。

マジメだよな、お前」

「悪いですか!!」

「いちいちケンカ腰になるなよ、からかった

だけだろう」

 アルトは渋々口をつぐんだ。

頭から湯気が出そうなほど顔が赤い。

 エトワールは苦笑しながら口を開いた。

「お前は基本何もしなくていい」

「え?」

「実行するのは、メリッサとスピカだけだ」

「どういうこと……ですか?」

「お前はただ隠れてればいいから。後は、スピカに

バレて怒りだした時、謝り倒してもう一度告白しろ」

「……ボク、完全にカッコ悪くないですか?」

 泣きそうになるアルトに、エトワールは耐えろ、と

だけ言ったという――。


 砂糖を入れたストレートティーを運んで来た

メリッサに、エトワールは作戦の概要を話す

事にした。

「メリッサ」

「なになになになに、早く教えてよ~」

 彼女は子供のように、きらきらと目を輝かせ

ながら二人を見ている。

 とりあえずカップはテーブルに置き、メリッサは

空いている椅子に座った。

 早く早くと明らかに目がそう言っている。

エトワールが笑いながら説明した。

「お前は、スピカを挑発しろ。スピカは上手く言い

くるめてあるから、徹底的に悪女を演じろ」

 メリッサはにっこりと笑った。そのあまりの怖さに、

ビクッ、とアルトが身をすくめる。

 背中に夜叉が見えたのは、アルトの勘違いではない

だろう。

「どういうこと、かなあ?」

「だから――」

 さらに説明しようとしたエトワールは、メリッサの顔を

見てギョッとなった。どうやら今気づいたらしい。

 愛想笑いをするが、もう遅い。

「そんなことしたら、人形の魔女に嫌われちゃうじゃないの、

ばかあああっ!!」

「ぎゃああああっ!!」

 ボコボコに殴られるエトワール。

アルトは耳をふさぎながら、現実逃避してスピカの笑顔を思い

出していた――。



 一時間後、ようやく自分を取り戻したメリッサは、自分が

殴りつけたエトワールに治療の術を施していた。

「魔術が使えるんですね」

 初めて見る魔術に、アルトは目をキラキラさせていた。

前に一度スピカが壊れた物を直す術をかけたのを見ていたが、

その後で彼女が倒れたので、それどころじゃなくてあまりよく

覚えてはいなかった。

「私は、人形の魔女と姉妹弟子なんだよ。スピカが姉弟子。

だから、私も魔術くらい使えるよ」

「そうなんですか!!」

 意外な関係に、アルトは目を丸くした。メリッサは得意げに

いろいろと話してくれる。

「私と彼女は、属性は違うけどね。スピカ=ルーンは闇、私は

光。回復系がかなり得意だよう」

「みんなたのしそうでずるい!!」

 話している最中に、レティーシャ・エルト・モランが飛び

込んできた。

 眉を吊り上げて怒っている。ずるいずるいずるいと地団太を

踏みながら喚く姿は、とても可愛らしかった。

「あたしにも何か任務ちょうだいよおおおおっ。スピカにために

あたしもなんかしたいいいいいっ」

 メリッサとエトワールは目くばせしあった。ややあって、

エトワールが彼女に微笑みながら近づく

「レティ姫。あなたにもちゃんとした任務がございますよ」

「ほんとう!?」

 エトワールがそう言うと、瞬時に彼女の顔が輝いた。

メリッサが部屋を出て行き、少しして戻ってくる。

 ケーキをいくつか詰め込んだ箱が、レティに差し出された。

「レティ様、これをお父様たちに届けてくださいませんか? 

 代金はいりません。メリッサ=ウォーカーからの気持ち

ですわ」

「おいしそう、あたしも食べていいの?」

「もちろんです。任務を果たしたら、いくらでもいただいて

ください」

「やったあっ!!」

 上機嫌になったレティは、エトワールを伴って城に戻って

行った。体よくあしらわれた事に、まだ幼い姫はまったく

気づいていなかったという。

 というか、ケーキを渡す代わりに出て行かされただけなの

だが――。



「さあっ、おいしいケーキを焼かなくちゃ。アルト、

手伝ってね!!」

「あ、はいっ!!」

 とりあえず、二人はスピカが来るまでに大量のケーキを

量産する事にした。

 昨日アルトが焼いた分だけでは、甘党の彼女には足りない

からだ。

 部屋にはすっかりチョコレートの甘い香りがたちこめ、

帰ってきたエトワールが閉口した。かなり嫌そうな顔

である。

「レティ様はどうだったの?」

「美味いケーキを食べてご満悦だよ」

「それはよかったわ」

「ところでさあ、お前ら、こんな香りばっかのところにいて、

よく気持ち悪くならないな」

「当たり前でしょ。ケーキ屋だもの」

「食べるのも作るのも大好きですから」

 エトワールが口元をひきつらせた時、コンコンと戸を叩く

音が響いて、全員の顔が引き締まった。戸の前にいたのは、

白い髪を二つに結って星の髪飾りをつけた少女だった――。

 徐々に進展していく男達の作戦です。

実際に動くのは彼ではないですが、

エトワールには一応作戦参謀として

動いてもらってます。

 

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