特殊拘束房
手野市内にある手野駅は、その周囲をぐるりと、正八角形となるようにビルが立ち並ぶ特殊な作りになっている。
これらは手野本社ビル群と呼ばれ、駅からは緩やかなカーブを描くデッキで繋がれ、直接駅と歩いて行き来できるようになっている。
不可思議な構造をしているのは、表向きには有名な設計者による設計とされる。
だが、その駅の地下、大深度地下よりもさらに地下にある特殊な地下室について、語られることはほとんどない。
それは特殊拘束房とよばれている、どこかの市営の体育館ほどの大きさがある部屋だ。
そこに16つのまるで檻のような部屋が並んでいる。
表側は正八角形、ここは正十六角形の形になるように設置されている。
檻の中には包帯や呪布でぐるぐる巻きにされた高校生ぐらいの高さがある卵状のものが1つずつある。
単なる拘束房ではなく、特殊とついているだけあってこれが特別な何かということはすぐにわかった。
だが、中身については知っている人は限られる。
特に、手野家当主、砂賀家当主、そして武装社長、さらには金元寺住職、そして何よりも黒姫神社の宮司。
彼らは確実に知っているだろう。
それ以外は単なる都市伝説の域を出ず、そもそもこの空間を知ることすら不可能だ。
だが、ここが手野グループの呪術的な中心の一つであることは、その様子からも明らかだ。