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43:【side:????】

我が家に足りないのは魔力だ。

何度繰り返しても聖女も聖者も生まれない。

シマカゼ家には生まれたのに。

どう結婚相手を変えても、魔力量が足りない。

そこで目をつけたのが、アルジェリー侯爵家。

レリンサ・アルジェリーは赤の聖女。

それも膨大な魔力を持つ、やがてはイラストリアス王国の光の聖女になる存在。

だから男を産めばいい。

そしてレリンサ・アルジェリーをシマカゼ家か我が家に嫁がせればいい。

レリンサ・アルジェリーが産んだ子供は絶対に膨大な魔力を持った子供になる。

だから、シマカゼ家に嫁がせ、産ませた。男を。

何歳でもいい。シマカゼ家は公爵。公爵家が望めば、アルジェリー侯爵家は断れない。

だから、一人目で男だった時は大喜びした。後はアルジェリー侯爵家にレリンサ・アルジェリーが生まれてから婚約を申し込むだけ。


「生まれるまであと少し」


そこまで年齢差はない。だから、大丈夫。そのはずだった。

レリンサ・アルジェリーが生まれたその年。お披露目のパーティーで婚約を申し込むよう命令したところ、アルジェリー侯爵は断ったのだ。


「この子はまだ生まれたところ。この子がどう生きるかは自分では決められない」


アルジェリー侯爵はそう言い、断固として断ったのだ。何度繰り返しても、ここで断られる。

なのに、10歳でティニアシア・ベルファストと婚約。

テーブルの上のカップを床に叩きつけ、怒りを抑えようと試みる。


「何度繰り返してもこれだ!!」


メイドも執事もそんな姿に微動だにせず、部屋の隅でたたずむ。


「どこで失敗した!?」


ティニアシア・ベルファストが婚約するのは何度繰り返してもそうなる。つまりこの世界の決まり事。

ティニアシア・ベルファストを殺しても、シマカゼ家と我が家がおとり潰しになるだけ。それでは意味がない。

運よくおとり潰しにならなかった時もあったが、次はユリウス・クルスク。あいつが結婚相手になり、婚約まで行かないのだ。

それを回避してもその次はディラン・リシュリュー。

だから、先にリシュリュー公爵家を囲い込み、桃の聖女派閥に放り込む。


「これで桃の聖女を潰せる」


桃の聖女は魔力が低い。いや、常人よりは多く聖女としては問題ない。だが、足りない。レリンサ・アルジェリーと比べればそんな魔力は微々たるものだ。

何度繰り返してでも桃の聖女を潰そうとしたが、レリンサ・アルジェリーがそれを阻止する。

ならやり方を変える。


「シマカゼ家は赤の聖女派閥に」

「はい」


従順な娘に言いつけて赤の聖女派閥に放り込むと軍で赤の聖女派閥として手を広げる。

リシュリュー公爵家は桃の聖女派閥として赤の聖女を追い詰める、と言うシナリオ。

そうなるはずだったのに。

上げられた報告に愕然とする。


「は?シマカゼ家は家督が変わる?」


娘もシマカゼ公爵も赤の聖女を傷つけたため、外国に行ったという。

だが出国したという知らせはない。つまりここでの真意は、影での処刑。

イルトヴェガーナが家督を譲り受け、シマカゼ公爵になった。

こんなバカな話があるか。

初めての展開に頭を抱える。

桃の聖女を潰して、その恩で赤の聖女と婚約をと考えていたのに、これでは進まない。

イルトヴェガーナが赤の聖女と結婚するとは思えない。

どれだけ脅しても、借金を返し終わったシマカゼ家はそっぽを向く。

そうなるとリシュリュー公爵家を急かすしかない。

レリンサ・アルジェリーは桃の聖女、ヘレナ・オーリックと王太子ルロヴェネーゼ・インドミタブルと共に前線基地へ。

なにが起こっている?

どうして外れた?

なんで、前線基地に?


「クソッ!!」


初めての展開にどうしたらいいか分からない。

最も有能な情報将校のダグラス・イーシェンを囲い込めないかと接触したが、危うくこちらが終わるところだった。

あいつは赤の聖女の狂信者だ。

しかも、こちらが赤の聖女を害していると思っている。いや、概ね合ってはいるが、真意は知らない様子だ。

ビスマルク公爵家がこちらに探りを入れ始め、ブリャッヒャー侯爵家は桃の聖女派閥ではあるもののこちらの意思には反した行動をしている。

しかもボルチモア公爵家が出張り始めて我が家を潰そうとしてくる。

何もかも初めてだ。何週もしているのに。

ゲームに勝つにはレリンサ・アルジェリーが必要だ。


そう、このゲームの勝者は我が家、ミネカゼ侯爵家でなくては。

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