第10話 ショッピング
「そろそろ行きましょう。龍哉君はどこか行きたい所はありますか?」
あれだけの量を食べたというのに休憩もそこそこに動き出すようだ。
「俺は服を見たいかな」
服が見たいというと咲茉は俺の服装を上から下まで確認するように見ていた。
「今日会った時から思ってたのですが龍哉君は服のセンスがいいですよね。私の服も選んでもらえないでしょうか?」
「服の流行とかはあまりわからないからアドバイスとかでよければ」
「今まで服にはあまり気を使ってなかったので助かります」
咲茉に俺の服を選んでもらおうと思ってたはずなのに気がついたら咲茉の服を選ぶという話になっていた。
俺からすると今日の咲茉の服装は清楚な感じがよく似合っていて咲茉の服のセンスもかなりいいと思うけどね。
二人並んで歩きながらお互いが気になった店を見つけたら入る。こういうのデートっぽくていいな。
「あ、あれ龍哉君に似合いそうです!」
あの服咲茉に似合いそうだなと、違う店を見ていた俺はメンズのショップに連れて行かれた。
自分の服を選んで欲しいと言いながらも俺に似合う服も探してくれていたようだ。
「これです、どうですか??」
店に入って目当ての服を手にとると鏡の前に連れて行かれて俺の体の前に合わせて確認している。
「……微妙でしたか?」
手が離れた事で微妙な表情をしていたのだが、咲茉には選んだ服を気に入ってないと思われてしまったようだ。
咲茉の選んだ服はシンプルなライトブルーのオープンカラーシャツで、俺もかなり好きな感じだ。
「いや、いいと思う。好きな感じだよ。購入しよう」
「えっ?」
俺が即購入を決めた事に咲茉が驚いていたが、合わせてみて俺自身も気に入ったし、咲茉が選んでくれた時点でもう購入する事は半ば決定している。
「お待たせ。ちょっとこっちに来てもらっていい?」
会計を済ませ、咲茉の元に戻ると俺は咲茉の手を取り、向かいの店に向かった。
「よかったらこの服を試着してもらえないかな? きっと咲茉に似合うと思うんだ」
マネキンが着ている花柄のワンピースを指差しながら咲茉を振り返ると、なぜか咲茉は顔を赤くして俯いていた。
咲茉の視線の先には咲茉の手を握っている俺の手。
無意識に手を握っていた。
「ご、ごめん!」
「あっ……」
慌てて手を離すと咲茉は小さく声をあげた。
「このワンピースどうかな?」
とにかくごまかしたくてワンピースに意識を向けさせる。
「う、うん。可愛いと思います。せっかくなので着てみます」
まだ顔の赤い咲茉は、ワンピースを手に取り、サイズを確認してから試着室に逃げるように入っていった。
どうも咲茉と二人でいると昔と同じように振舞ってしまう。言動もいつの間にか陰キャを演じる事もなくなって来ていて、素が出始めている。
どうも咲茉と二人でいると空気感に流されてしまう。
とても心地よくてリラックスできるのだ。
気を引き締めて陰キャを演じないとと気合を入れ直していると咲茉の入った試着室のカーテンが開いた。
「着てみましたがどうでしょうか?」
やはり俺の見立て通り花柄のワンピースは咲茉にとても似合っていた。
下品にならない程度に開いた胸元から見える咲茉の白い肌、デコルテ部分に視線が吸い込まれてしまった。
「とても綺麗だ」
あれ? 俺今なんて? 気が付くと思っていた事が言葉になっていた。
「…………」
「い、いや、やっぱりそのワンピース綺麗だなって」
シャッと試着室のカーテンが閉められたが、一瞬見えた咲茉の顔は真っ赤になっていたように見えた。
しばらく待っていたがなかなか咲茉が出てこない。
ワンピースに着替えた時間の倍程度の時間が経った頃、ようやく試着室のカーテンが開いて咲茉が俯いたまま出てきた。こころなしかまだ顔が赤みがかっているような気がする。
「これ、買ってきますね」
下を向いたままの咲茉はトテトテと小走りにレジに向かった。
「お待たせしました」
戻ってきた咲茉はようやく俺の顔を見て笑顔を見せてくれた。
その後は二人でウィンドウショッピングを楽しみ、帰路についた。
手を繋ぐなんて事はなかったけど、咲茉は終始笑顔で、それを見ているだけでもとても幸せな時間だったと思う。
手を繋いでしまったときに素を出さないようにしようと思ったのだが、咲茉の楽しそうな顔を見るのが楽しくて、気が付くとこちらからどんどん話しかけてしまっていた。
こんな事では咲茉に好きになってもらえない。
俺は陰キャになるんだろ。
初めてのデートで浮かれてしまった自分の気を引き締め直した。
◇◇◇
『デートかぁ、いい感じだね』
「でも咲茉といるとどうしても素の自分が出てしまうんだよなぁ」
『別にいいんじゃないかな? 咲茉ちゃんは楽しそうだったんでしょ?』
「あぁ、俺から見て楽しそうではあったが、幼馴染だからな。タケと二人だったらもっと楽しそうにしているような気がする」
『そんな事はないと思うけど……』
「いや、そんな事あるよ。俺はもっと陰キャになれるように精進するよ」
『まぁ、ほどほどにね?』
「ほどほどじゃダメなんだよ」
その夜、タケに電話をしてデートの報告をしていた。
初めてのデートで自分が何かやらかしていないか不安だったからだ。
陰キャを演じなければならないのに素が出ていたという一番大きなやらかしはあったのだが、その他の部分に関しても不安だった。
こんな話を文句も言わずに聞いてくれるタケはほんとにいい奴だと思う。
『それで、手くらいは繋いだの?』
「一瞬だけ」
『一瞬だけ? なんで? 昔はいつも手を繋いでたよね』
「恥ずかしすぎて無理」
『たっちゃんは意気地なしだなぁ』
「うっせぇ」
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