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…では、powerをくれてやろう…。

作者: 江口サイト

特になし…!

「…力が欲しいか…。」


寝ている私に話しかけてくるものがいるようだ。


「…力が欲しいか…。」


体が動かない…。これが金縛りというものだろうか。


「…力が欲しいか…。」


力…欲しいっちゃ欲しいが、もらっても条件とかあるだろうし、一方的に私が得をすることはないだろう。


「…一方的に力が欲しいか…。」


うお、対応してきた…。解釈的にはどうなんだ…?


「…一方的にお前が得をするように、力が欲しいか…。」


それは欲しい。でも力をもらっても使い道が特にないかもしれない。


「…使い道が欲しいか…。」


うーん、使い道って言うと暴力的なことはNGですが、どうでしょうか?


「…お前に危険が及ばないような状況下での、力の使い道が欲しいか…。」


どうしよう。すごく親切で話を聞いてくれる…。


「…要するに、力が欲しいか…。」


まとめてくれた。

でも、特に力が欲しいかと言われると欲しくはないんだ。

どちらかと言えば、お金が欲しいかな。


「…お金も現代で言うと力に相当すると思うが、力が欲しいか…。」


力=お金ということか!だとしたら欲しいです!


「…いいだろう。お前にはpowerをくれてやろう…。」


そこはmoneyでお願いします!


「…岩をも砕く鋼の肉体と共に、powerをくれてやろう…。」


岩をも砕く鋼の機材が購入できるくらいのmoneyでお願いします!


「…削岩機なら15万円くらいであるぞ…。」


そうか、値段は性能によってピンキリになるだろうし、この場合は15万円が手に入ることになるのか。

それでもmoneyが欲しいです!


「…そうか。ではお前にはpowerをくれてやろう…。」


そこはmoneyでお願いします!


「…壁を破壊し、何人たりともその歩みを止めることができない程の、powerをくれてやろう…。」


壁の修繕を行い、何人たりともその工事を止めることができない程の、moneyでお願いします!


「…状況によるが、ブロック塀の設置にかかる費用は10万円から20万円くらいを見ておいた方がいいぞ…。」


最大20万円だがブレ幅があるということか。

それでもmoneyが欲しいです!


「…そうか。ではお前にはpowerをくれてやろう…。」


そこはmoneyでお願いします!


「…跳ねる力は凄まじく、天へと達する程のpowerをくれてやろう…。」


ピンハネの力は凄まじく、天しか金が回ってないので、moneyでお願いします!


「…実はホワイト企業化することが低賃金に繋がり、労働者の幸福度は下降しているらしいぞ…。」


残業制限が守られたことで、結果給料が下がっているという話でしょうか?

社員の権利を守ることが会社の尊厳を守ること、だが家族は守れなかったということか。

そして、単身になった社員を使いつぶし、切りがいいところでリストラ。

皮肉にもなりゃしねぇ…。転職しよう。


「…では、会社の上の存在を一撃で消し去るほどのpowerをくれてやろう…。」


暴力的なことはNGです。


「…あ、…すまない…。」


いえいえ、落ち着いてください。

でも、どうして力をくれようとしているんでしょうか?


「…それは、私が力をもらった側だからだ…。」


力は受け継がれているということでしょうか?


「…そうだ。この力を誰かに受け渡すことが私の目的だ。だが、誰も受け取ろうとしてくれないのだ…。お前で20人目なのだ…。」


面接に落ちている転職者みたいな…。他人事じゃないかもしれない。

良かったら話、聞きますよ。


「…ありがとう。この力をくれたのは父だったのだ。岩をも砕き、何人も止めることはできず、山を飛び越え、逆らう者をなぎ倒すほどの力を…。」


それはすごいですね。


「…しかし、父には借金があった。砕いた岩の補修代と、暴力による治療費と慰謝料の請求が強大だった…。止めに入った人も突き飛ばされ、治療費の上乗せもあり、父は山を飛び越えて逃げてしまった…。」


…それは、すごいですね。


「…私は父の借金を背負うことになるだろう。この力は持っていてもマイナスを生むことが分かっている。早く手放したいのだが、誰も受け取ってくれようとはしないのだ。皆、口をそろえて金が欲しいと言って退ける…。」


一番お金が欲しいのはあなたなのですね。


「…ああ、最初は金と引き換えに力を与えようとした。そうすれば借金の支払いができると思っていた。しかし、対価を請求するとは悪魔のようだと言われたのだ。そして、私は落ち込んだ…。」


そんなことないのに!

強大な力と引き換えなら対価は当然だと思います!


「…では、3000万円でどうだ…。」


いえ、結構です。


「…私は落ち込んだ…。」


あ、えーっと、まだお父さまはご健在でしょうか?


「…どこにいるかは知らないが、どこかで生きていることは確かだ…。」


でしたら、お亡くなりになった際に遺産相続を拒否することができるかもしれませんね。


「…え?」


お父さまの、補修にかかる修繕費の請求や治療費の請求なども相続に該当するので、放棄することができます。

同時に、プラスの財産も放棄することになりますが。


「…父の負債を放棄できるのですか!…」


はい、相続放棄はお父様が亡くなったこと、あなたが相続人であることを知った時から3か月以内に手続きする必要があります。

その期間のことを『熟慮期間』と言いますが、手続きは家庭裁判所に必要書類を提出してください。

家庭裁判所側が相続の放棄を受理したら、借金から解放されるかもしれません。


「…ありがとう。私はこれから役所に行こうと思う…。」


必要書類は相続放棄申述書、戸籍などが該当しますよ。


「…そうか、ではお礼にpowerをくれてやろう…。」


そこはmoneyでお願いします!


「…お金を取るのか…。対価を請求するとは悪魔のようだな…。」


あなたに言われたくないですよ!


「…しかし、金はないのだ…。渡せるものはpowerだけだ…。あと、おにぎり…。」


おにぎりはいらないかなー。


「…本当の力とはお前の持つ知識なのだな。既に力を持っているというわけか…。」


私は人の話を聞くようにしているだけですよ。

ただ、あなたも人間だったのですね。


「…人間だと、なぜそう思う…。」


役所に行くのだからそうなのでしょう。

人間の社会の中で生きるのだから、人間にやさしくいきましょうね。

お互いにね。


「…そうだな。話せてよかった。さらばだ…。」


はい、さようなら。


そうして得体のしれない者との話は終わった。

後日、役所で働く私の元に、父親の遺産を放棄したいという相談が一件だけ舞い込んできた。

相談者の目は力強く前を向いており、すっきりとした表情をしていた。

読破お疲れ様です。

短い話ですが、当然フィクションです。


私が寝ているときに声がしました。

「そんなこと知らないよ!」

びっくりして目が覚めたのですが、そんな経験はありませんか?


結局、その声は私の寝言でしたが。

それでこの話を書き始めました。

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