プロローグ
物語の始まりです。主人公達がどんな風に成長していくか最後まで読んでいただければありがたいです。
雪の降る奥深い山の中、十二単を着たうら若き女が、野蛮な男数人に追われている。
『…何故……何故、貴方様は帰らないのですか?…必ず帰ると約束して下さったのに……。』
女の足で男達に敵うはずもなく、その差は徐々に縮まってゆく。
『……私を愛していると、貴方様が戻ったら夫婦になると、誓ったのに……。』
ついに男達が女の髪を掴み、女を地面に叩きつけ組伏す。逃げようと暴れる女。男は腰の刀を抜き、そして、女の胸に突き刺した。
『……くい……』
男が突き刺した刀を抜くと、女の体から血が噴き出した。
『……憎い……憎い……帰らぬ貴方様も……私の大切な者を奪った者共も……この世の全てが憎い。』
女の額から角が生える。血が溢れる口に牙が生える。髪が白色に染まってゆく。手足の爪が鋭く尖る。
愛しい男に捨てられた哀れな女は、恐ろしい鬼となった。
これは桜姫という平安時代の空想の女性の悲恋のお話です。桜姫がどんな生涯を送り、何故鬼となったのか、桜姫の心情を思いながら読んでいただければ幸いです。