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短編

衝動

作者: 三千

※ 生と死についての描写があります。ご注意ください。


こうやってビルの屋上から、歯ブラシを口に突っ込みながら、眺める景色が好きだ。

それは6階建のこの屋上からならば、本来ならなんの興味もないこの世界をゆっくりと見渡すことができるからだろうか?

何にも影響を受けず、何にも関心を持たず、この歳になるまで何ら欲望のひと欠片もひりつく渇望も内なる衝動もなく、ずるずると生きながらえてきた私にとって、ここからの景色はある意味、貴重なものだ。

別に生きたいとも思わないしここからダイヴしたいとも思わないし、人生の意味とか意義とか考えたこともない。

空、うろこ雲、青白い月、蟻のように見える人間。

そういうのを抜きにした早朝のこの時間。

私にとって普段は色褪せた世界がただ唯一、色を持つ瞬間だ。次第に天に昇ろうとしている朝日に照らされて、辺り一面が黄金色に輝いていくのがいい。

天気が良い今日のような朝は、毎日。私は早くに起きてこのオンボロビルの屋上で、クソ不味い歯磨き粉で歯を磨きながら伸びをする。

「……コトリ。おいコトリ。またおええぇええってなるぞ」

次第に近づいてきては明瞭となる、高くも低くもない声。背後から、手首に矢絣やすがり模様のタトゥーの入ったぶっとい腕が回り込んできて、咥えていた歯ブラシを乱暴に引き抜いていく。

「んむっ、ぶっっ」

口から白い飛沫が散った。なにすんだこのメタル教信者め。

「おいこらまたボケっとしてたのか? コトリ、良い加減にしろ。早くうがいしてこい」

引っこ抜かれた歯ブラシを強引に持たされる。

そこまでされても私の頭はまだぼんやりだ。それでも屋上にぽつんと一つ、寂しくたたずんでいる孤独なシルバーシンクへと移動していって、蛇口をひねった。

勢いよく水が放出される。シンクに跳ねる水飛沫とドドドボボボという地響きのような音に、私の意識は現実へと完全に引き戻された。Tシャツが濡れたが、まいっか。

口と歯ブラシをゆすぐ。いつのまにか肩に引っ掛けられていたタオル。そのタオルで口元をぬぐう。タオルがない場合はよれたTシャツの肩口で、いつもは口をぬぐう。

「ありがと」

「いーかげんにせーよ。ちゃんと顔も洗え」

棒読み。背が高い。面倒見の良い、この男はツネという。ファンキーでメタルな格好をしているツネは、学部こそ違うが同じ大学で、ルームシェアしている同居人だ。このビルの二階を間借りしていて、いつもは友人、たまに恋人。

世話好きでいつもぼんやりの私の世話を焼いてくれて、とてもとても都合がいい。

「こんな朝早くに居なくなるなよな。心配するだろうがよ。あとコレな、昨日届いてたって大家さんが」

そう言って地面に置かれていたダン箱をコツンと蹴った。そして、屋上から階下へと続く、非常ドアの向こうへとさっさと消えてしまう。

「だからって今、持ってこんでも」

ツネの指示通り顔を洗う。濡れた顔にタオルを押しつけながら、ダン箱に手を伸ばす。抱えられる大きさ。長方形。中身は空なのではないかと思うほどに軽い軽ーい。

「ナニコレ? おーいツネぇー。ナニコレぇえ?」

開けっ放しの非常口のドアに向かって呼び掛けてみる。けれど、ひとつも音が返ってこないあたり、私に呆れて早々に二度寝へと向かっていった模様。

取り上げて、送り状を見る。ふうん。確かに『白石しらいし 小鳥ことり 様』とある。

届け先の住所は、このオンボロビル。送り主の名前に、身に覚えがなかった。

その長方形さ、縦長さに。

「棺桶みたい」

ツネを諦め、その場に座り込んで開け始める。尻の下のコンクリートが冷やりとしきて、頭も段々と冷めてくる。お腹の虫がぐうぅと叫んだのを、ペットの鳴き声くらいに聴きながら、私は縦に貼られている紙製のガムテープを剥がしていった。

箱の中には、さらに白い箱。マトリョーシカか! ピロシキか!などと謎の突っ込みをしながら、もうひとつのシールを爪で切って、カパッと開けた。

箱の中を見て。

キンと頭がさらに冷えた。

柔らかい緩衝材に包まれた、一本の花。

白いカラーが眠り姫のように横たわっている。

甘い香りがふわと漂ってきて、私の鼻腔と記憶とを刺激してから、次第に黄金色からスカイブルーへと変化しようとしている空の彼方へと登っていく。

それは本当に棺だった。

横たえられた一本のカラーの花が、いや眠り姫などではなく、永遠に目覚めることのない死人のように見えて仕方がなかった。

私は愛しい人でも失ったかのように、カラーの花びらを指で撫でた。

すると、なぜか涙が溢れてきて、胸のどこかがギシギシと酷く軋んでくる。

それが親を失ってもどうともなかった私の、悲しみと胸の痛みを伴った、人生で初めての涙だったのかも知れない。



彼に初めて出逢ったのは、何年前になるのだろう? 市内を流れる川に掛かる、小ぶりな橋の上だった。私はその時、買い物だったか何だったかの用事で、その川があちらとこちらとに隔てている隣町へと、ぶらぶらと向かおうとしていた。

小さな橋に差し掛かると、そこで橋の欄干に腕を預けて、じっと川面を見つめている男がいる。

その静かな佇まいが、珍しく私の気を引いた。

白い半袖のワイシャツから見える二の腕のたるみ。その肌に若さの質感はない。欄干に腕を乗せて背中を丸める姿は、私にくたびれたサラリーマンを連想させた。

けれど、くたびれてはいるがワイシャツは新品をおろしたようにピンとしているし、スラックスの後ろポケットからは、きちんと畳まれたチェックのハンカチがのぞいている。

お上品な人だ。金持ちっぽい。襟足も綺麗に揃えられているし、髪もきちんとセットされている。それでも背中は丸い。

私はそのまま彼の丸い背中の後ろを通り過ぎようとしていた。

何を見ているのだろう? ちらと川を見る。水面では、陽の光が反射して、ところどころキラキラと光っている。

よく見れば魚影などが見えるのだろうか。日本各地どこにでもある安っぽい川に特筆すべきことはなにもない。

ただ。男からはなにか、花のような香りがした。

彼を通り越し、ずんずんと先に進む。その間も香りは鼻孔を刺激している。

生きることになんの意味も見出せず、しかも生に執着できずに毎日を過ごしていた私にとって、この世のあらゆる刺激は、どこかでシャットダウンされまずもって脳へと届くことはない。けれど、この時だけは。この花のような香りだけは、私の脳に届いたのだと思う。

香りに誘われるようにして、何の気なしに彼の方を振り返ってみた。

青白く生気のない横顔。丸まったままの背中。

けれど、その背中が……。

「あっ」

私は普段出さないような、大きな声を上げた。彼が急に、橋から身を乗り出したからだ。欄干にかかる足、折れ曲がったその足は、しなやかな馬の脚を連想させる。その足がよっこらしょとでもいうように、欄干をよじ登っていった。

彼は今にもするりと落ちて、川底へと一直線に向かっていこうとしていた。

その時、彼は逝くのだと思った。この世を置き去りにし、ひとりぼっちであの世へ逃げてしまうのだと。

完全なる逃避。

正直、羨ましいと思った。

「待って!」

私は手を伸ばして、無意識のうちに叫ぶ。

「待って! 私も連れていって!」

内から産まれた自然な言葉だった。

私のその叫び声に驚いたのか、彼がこちらを見た。少しの逡巡ののち、欄干に乗りかかっていた足を下ろした。その拍子に履いていた革靴がぽろりと脱げ、川へと真っ逆さまに落ちていく。ベランダに干してある布団のように折れ曲がっていた身体を起こすと、男は私の方へと振り返り、そして手を伸ばしてきた。

受け入れるように。

おいでと誘う、ジェスチャーで。

魂が呼応するように、私も手を伸ばしていた。



「君はずいぶんと若いね」

片方だけの革靴でひょこひょこと歩き、辿り着いた料理旅館の一室。頑丈で重たそうな造りの座卓の上に、大小の和皿や小鉢がたくさん並べられている。

これは会席料理というものだろうか? そろっと視線を這わせて見回した。見慣れない和風の小皿や小鉢の配列。その様子が心の琴線に触れる。

かつて小料理屋を営んでいた母のことでも思い出しただろうか。

どこかの誰かに、いやあれは祖母だったのかも知れない、そんな母の話を聞いたと言うだけで、遠い昔のことはあまりよく覚えていない。

しっくりこない曖昧な記憶。曖昧すぎて、母を含めたどんな思い出もすべて、本物ではないと知っている。

「大学生……ですかね」

やや曖昧に答える。ツネに連行され、教室に放り込まれて、講義には出席している。

それにしても自分を語るには自分は曖昧過ぎる。

そういう意味では、同居人のツネの方が私という生き物をよく分かっているかもしれない。

「そうなんだ。とても若いね」

男は、さかきと名乗った。

「榊さんは? お幾つですか?」

「僕はもうアラフォーだよ」

この和室の雰囲気にはそぐわない言葉。苦笑。いや失笑。

私は目の前にある、薄造りの青磁の盃を口にした。口当たりのよい、甘口の日本酒がふわりと香る。液体がつるりと舌を撫でてから喉へと流れていき、私はそのひりつく熱さに少しだけコホッとむせた。

榊は徳利を傾けて、自分の盃へと酒を注いでいる。アルコールがいい具合に回った榊のその行為には結構な勢いがあって、さっきから私は酒が盃からあふれてこぼれるのではないかと、珍しくはらはらしていた。けれど、はらはらしてたのは最初だけ。

こぼれる。こぼれない。まあどうでもいいか。薄く笑う。

「あの橋からでは死ねませんよ」

結局は日本酒がこぼれ、机にひとつ、水溜りができた。私がその盛り上がった表面張力を見つめながら言うと、言われることを予想していたかのような納得の頷きで、榊が答えた。

「うん。だね」

「橋から川までの高さも全然大したことないし、川の水位もそんなにないから、頭を打って最悪骨折して痛い思いをするだけですよ」

少し早口になった。

箸には手をつけてはいない。料理にもまだ口をつけていない。それに酔ってもいない。

「うん。最悪……そうだね」

榊は口元だけで笑った。幸せを少しも寄せなさそうな顔をして。死神に取り憑かれたような表情に、どうして死のうと思ったのだろうと、ふと考えた。

日本酒が盃からあふれてこぼれるのと同じくらい、そんなことは私にとってはどうでもいいことだ。

けれどなぜか私は、その理由を考えながら、自分のおしぼりで榊の手元にある水溜りを拭いた。

私はいつまで経っても食事に手をつけない榊に痺れを切らし箸を持った。飾り切りの施してある南瓜の煮物をひとつ、口に入れた。

甘みが薄い。ハズレの南瓜だ。

けれど、南瓜は切ってみないと味は分からない、そう誰かに聞いたことがある。いや。皮にアザのような模様があった方が美味しいとも聞いたような気がする。

それが大学の教授だったかコンビニのおばちゃんだったか、それともそのファンキーな外見からは想像できない、意外と物知りで博学なツネだったのか、それとも……

母だったのか……?

甘いか不味いかは出たとこ勝負みたいな南瓜に、私は人生をなぞらえてみる。

そうするとすべてのことが南瓜に思えてきて、少し楽しくなった。ただハロウィンは除いてもいいだろう。イベント的にハロウィンは私にはあまり関係がない。

「君はどうして、」

私は榊の言葉を遮って、「コトリです」と言った。

「……コトリ?」

「鳥ですね」

「そうなんだ。君は小鳥か。羨ましいな」

「羨ましい? 鳥になってどこかに飛び去ってしまいたい、そんな風に思っているんです?」

自分の名前を披露すると結構な確率で返されること。

「いいなあ、私も鳥になって大空を自由自在に飛び回ってみたい。海を渡ってどっか外国へと飛んでいってみたい。飛行機代いらないし」

よくそう言われるけれど、私の名前で夢を語られてもと思うから、私はいつも「鉄砲で撃たれてヤキトリにされるかもよ?」とか。うっかり言ってしまうもんだから、初対面から「キモ」と気味悪がられてしまう。

この男も同じ反応だろうと思っていると、彼はやはり顔をしかめた。

「む。別に鳥になってどこかに行きたいわけじゃない」

榊は、むうっと突き出した不満げな唇を、盃へと近づけた。

口に含んだ酒が、喉仏を上下させる。その喉仏の上下運動が色っぽく見えて、なぜかどくりと胸が鳴った。ツネの発展途上な喉仏とはちょっと違う。完成された大人の男のもの。その象徴。

「どこか行くのなら別に新幹線にでも乗ればいいからね。僕は車の免許を持っていないから、どこに行こうが電車移動だけど」

真っ当だ。私は顔には出さなかったけれど、内心嬉しくなって、盃に残っていた酒をぐいっと飲み干した。

徳利を差し出してくる榊。風呂上がりにそのままドライヤーをかけずに放っておいたようなくせっ毛。少しぼさぼさとした黒髪。目にかかる前髪の感じがサッカー少年のようで、まるでアラフォーとは思えないし、もちろんサラリーマンにも見えない。毛先があちらこちらに跳ね上がっていて、女を、いや私を誘惑してくるような艶がある。その色香に私の子宮がうずうずと反応している。

「とにかく。こんなオジサンとの食事に付き合ってくれてありがとう」

私は「そんなこと」と、そこで言葉を切った。

続きは。

続かない。

『……別に構いませんよ』なのか。それとも『……どうでもいいですよ』なのか。自分でもよくわからない。少しだけツネを探す。わからない時はいつもツネに訊いている。けれど今日、当たり前だけれどツネは不在だ。

そろっとカバンに手を伸ばす。中にはスマホ。ツネに繋がる唯一のツールが入っている。

「コトリさん。僕はね、すごく寂しがりやなんだ。だから当分の間、一緒に居てくれないか」

無意識にカバンに伸ばした手をピシャリと叩かれるように、榊が力強く声を上げた。

橋の上では一緒に死ねなかった。でも伸ばした手を引っ張られはしたのだ。

けれど手を繋いだ瞬間。榊の体温を感じた瞬間。

お互いがお互いに一瞬でも興味を持ったのかもしれない。少し見つめ合ってから、死ぬのをやめた。

私からしてみれば、他人に対して興味を持つなどと、青天の霹靂的な出逢いだ。こんなこともあるのだと、少しだけ茫然自失にもなった。

その後、食事に誘われた。そこら辺の食堂で済ますと思っていたら、川沿いの料理旅館に入っていく。その時、なるほどそういうこともするんだなと思った。

一緒に泊まっていけということなら、そうなのだろう。それでも別にいいと思ったし、すでに私の子宮はざわついていた。

私はいったん、しょうがないなあという顔を作ってから「いいですよ」と言った。

「無理してそんな顔しなくていいよ」

彼はそう言って、頬を膨らませた。



料理を一通り食べてしまうと、私は本当にカバンの中身が気になり始めた。

さっきから、ツネからと思われる着信音。

ツネとは最近、家賃が節約できるからと言って同居を始めたばかりだったのに、私がいつもの時間になっても帰ってこないので、スマホを鳴らしているのだろう。

責任感の強い男だ。その割に相手を束縛もしないし、お互いの生活に口出しもしない。それが最初に取り交わした約束でもあったから、この着信は無視しても良いのだろうけど。

私がなんらかの行動に出る前に、榊が口を出してきた。

「電話鳴ってるよ、出なくていいのか」

ツネとは小学校以来の友人だ。私にはツネ以外に友達という存在がいない。私の人生で唯一、私に近しい人だと言える。

両親は私が幼い頃に離婚し、一緒に暮らしていた母も早くに死んでしまったので、私は母方の祖父母に引き取られ育てられた。けれど、特に何がということでもないのだけれど、祖父母とどんな風に生活しても何ともしっくりこない。なので高校を卒業したら家を出る、そう心に決めていた。

無駄なお金を一銭も出さない、そんな厳しいだけの祖父母であったが、オンボロビルの契約の時だけは、ハンコをついてくれた。

母が遺してくれたお金から、契約金などを支払って残った、なけなしのお金を入れた通帳だけを持って、家を出た。

同居の件は、ツネから言い出してくれた。

正直、これほどありがたいと思ったことは、一生のうちに、後にも先にもこの件だけだ。ツネとのルームシェアのおかげで、今の大学に通うことができている。

「出なくて、いいのかい?」

今度は強い疑問形で問われ、私は顔を上げて榊を見た。

「……いいです」

数秒の無言。榊を見る。思いも寄らぬ、悲哀の表情。何がそんなに悲しいのだろうか? と思うくらいの。私の中に。今まで感じたこともないような、驚きと疑問が湧き上がる。

「彼氏?」

「いいえ」

「じゃあ、友達?」

「まあ」

「でも友達ならこんなに何回も掛けてくるかな?」

「同居してるから」

「男でしょ?……同棲だよね。それってもう彼氏じゃん」

なんだこれ?

「付き合ってるとかではないから」

「へえ。でも好きなんでしょ?」

笑える。

「まあわりと」

「わりと!」

ふ。

「もうそれ恋人だよ」

「違うけどまあいいや」

「あっそ」

どこにでもあるような会話。息継ぎでもするように、軽やかに。けれど、どことなく息苦しさもある。何がこんなに息苦しいのだろう? この息苦しさは本当に私のものだろうか?

「なら泊まっていってよ」

「はいはい」

「一緒に眠ってくれ」

「ひとりじゃ眠れないんですか?」

「ああ、そうだよ」

「寂しくて?」

「うんそう。ひとりは、寂しいよ」

「…………」

ふっと笑って「何もしないから」と、口元を左手で塞ぐ。

その眼。細めて伏せられた睫毛。私の心には思ったより足りていない。

あとひと押し。

「何もしないの?」

彼は口元から手を下ろし笑う。

「してもいいならするかも」

可愛いな。

「いいですよ」

ただ。

口元を覆った彼の左手の薬指には、何かが結ばれていた跡だけが残っていた。



「こうやって眠ると、小さい頃のことを思い出します」

隣でごそごそと布団の擦れる音がする。暗がりの中、榊がこちらへと裸の身体の向きを変えた。同じく裸で仰向けな私の頬に、榊の吐息がかかる。繋いだ手が少し汗ばんだ。

「お母さんと、手を繋いで寝てたの?」

「はい」

私の中の記憶の、どうだろう、2%くらいは母の名札がついているだろうか? 偽物の記憶かもしれない、いやそもそも名札自体が違うのかもしれない。

けれど、このことだけは鮮明に覚えている。

「手を繋ぐと私が早く寝てくれるからって言ってた」

その母の一言は、私の中に「早く眠らなければならない」という強迫観念のようなものを芽生えさせた。

布団に入る。急いで目をつぶり、息を浅くする。母の冷たい手が、私の体温を奪っていく。早く眠らねば母に迷惑がかかると思い、いつのまにか息を止めていた。

母が営んでいた小料理屋の二階。小料理屋と言っても、スナックのようなものか。店は夜遅くまで営業していたのだろう。

仕事と子育て。

目の回るような忙しさの中、早く子供を寝かしつけて、仕事に戻らなければならなかったんだろうと推測される。

けれど、想像とは違った解答を、榊は言って寄越した。

「手を繋ぐと安心するからね。子どもは母親に守られている気がするんだよ」

私はそう言われて、榊の方へと首を捻って顔をやった。素足を榊のそれに絡めてみる。さっきまで重なり合っていた太もも同士が擦れあって、それだけで肉欲が盛り返してくるようだった。

「……安心? ……なの?」

「? もちろんそうだ」

顔と足を素直に戻す。すると天井がなんだか高くなった気がした。

「我が子が安心して、ぐっすり眠れるようにね。優しい声も重要だ。人によっては、子守唄を歌ったり」

「子守唄………」

高くなった天井の模様がぼやけて見える。

「じゃあ、手を繋いで子守唄を歌うという行為は、親が子を想う愛情表現なの?」

「うんそう。まあ本能の一部なのかもしれないけど、おおかた合ってる」

誰にも教えてもらえなかったことをまさかこんな行きずりに求め合ったセックスの後、こんな形で知ることになろうとは。部屋の天井がどんな模様だったのかわからなくなった。あふれた涙が目尻から伝って枕へと落ちた。

なーんだ。

私は思ったより母に愛されていたのかもしれないな。

隣でもう一度、ごそりと衣擦れの音。

「僕が寝つくまで、このまま手を繋いでいていいかい?」

握られた手に、力が少しだけ入る。その拍子に指がぴくっと痙攣した。

「……いいですよ」

「うそ。もう一回抱きたい」

「手を繋いだままでなら」

私は繋がれていない方の手の甲で、涙を拭った。


朝。オンボロビルの屋上ではない場所の、見知らぬ部屋の見知らぬ洗面台の前で、歯を磨く。

慣れない、備え付けの安物の歯ブラシ。咥えると、舌にざらりとその感触が刺さる。

トントンという軽いノックと挨拶の後、昨晩、旅館の仲居さんと約束していた時間に、部屋に朝食が運ばれてきた。

榊はまだ布団の中で眠っている。

「おはようございます、よく眠られましたか?」

仲居さんがニコニコと、朝用の顔。その問いかけに、私は「はい」と普通に言った。

本当に。

久しぶりによく眠った。

何の夢も見ず、何の障害もなく。

手を繋いだことで、安心して眠れたからだろうかと、考えてみる。榊の言っていたことは本当なのかもしれない。

運ばれた御膳からは、ふわりと味噌汁の湯気とその香り。

ああ。

生きている。

私は、今日も。

「お連れさまは?」

榊は襖の方を向いて、頭近くまで布団を引っ張り上げている。こんもりとした布団をちらっと見て、仲居さんは口だけで笑った。

「ずいぶんと、お疲れですねえ」

その言葉に、何か揶揄いのようなものを感じて、私は。

「この人昨日、死ねなかったんですよ」と言った。

仲居さんが驚きの混じった気味の悪そうな顔をしたのを見て、私は内心、笑った。

「し、失礼しました。ごゆっくりどうぞ」

そそくさと逃げるように出ていった後ろ姿を視線だけで追う。するとさらに可笑しくなって、声を出して笑った。

「ふふ」

笑いながら榊を見ると、布団が上下に波打っている。

「ウケた」

『くくく』

布団の中からくぐもった笑い声。

「ふはは」

『ははは』

私は朝食の御膳の前で、榊は布団の中で。当分の間、二人で笑い続けた。


結局、私と榊はもう一泊した。一歩も旅館の外へは出なかった。ずっと部屋の中で過ごした。

何度もセックスしたし、色々な話もした。

こんなにも誰かと深く向き合ったことは、今までにないと言っていい。

テレビを観る気にもなれない。

スマホでネットを触る気にもなれない。

「奥さまは、心配されませんか?」

薬指の指輪の跡。そこには残り香のように、『死が二人を分かつまで』の跡がはっきりと残されている。

離婚でもしたのだろうか。

跡だけが残り、そこに指輪はない。

これまでに二度。

問うた。

「うん、大丈夫だよ」

言葉に翳りが出る。

榊はごろんと横になっていたがすっと起き上がり、座卓に腕を立てて、頬杖をついてぼんやりとし出した。

「本当に大丈夫?」

「……ああ」

「そうですか。ならいいけど」

「……死んでるから。この前、病気で亡くなった」

一瞬。別の世界へと向かっていた自分を呼び戻す。

私は少しの間を置いてから、ああ、そうなんだ、だから……と思った。

橋の上から飛び降りるのには、十分すぎる理由だ。

そうか。ここにいるのは、片割れなのか。

「……寂しいですか?」

「ふん」

「寂しくないんです?」

「君は何で、そう何度も何度も同じことを訊くんだ」

言葉に少しだけ怒りが混じった。

すると、私の言葉にも同じように怒りの要素が含まれたように思う。

「寂しいから、私を側にいさせるんでしょ?」

「ああそうだよ」

直ぐにも認めた。自供する犯人とはこんなものか。カツ丼は必要ない。この人は追い詰めれば直ぐに自白する。ふてくされた様子。さらに未知なる怒りが湧いてきた。

「私は奥さまの身代わりですね」

「違うよ」

「違わない」

「だったら君だって! 僕は君の恋人の代わりじゃないか!」

「何度も言いますけど、ツネは恋人じゃないってば」

「じゃあ、君のお母さんの代わりだ」

クソッ!

そんなやり取りを何度か交わしてから、榊はぷいっと口を開かなくなり、さっさと夕餉ゆうげの前の風呂にいってしまった。

収まらない怒り。頭にきた。相手がなにかの感情を受け入れないのがこれほどに憎いとは。持っていたスマホを引きっぱなしの布団に投げつけた。

けれど少しの時間で考え直し、スマホを取り上げる。

ツネにコールし、ツネが出た途端、「今日も帰らないから」と乱暴に言った。

『……コトリ? 今どこにいるの?』

冷静な声でそう問われて冷静になり、「……連絡しなくてごめん。今、八角川やすみがわのこっち側にいる」

『こっちって、どっちよ? どこに立って、どっちを見て、そう言う?』

ツネのバカみたいな問い。その問いで私の怒りは空気の抜けていく風船のように、へにゃりと萎えた。

「安保町側、の方」

『誰と一緒なんだ?』

ツネは分かっている。私が何日も、独りでいるはずがないということを。

「橋で知り合った人」

『明日には帰る?』

「明日には、うん」

その時、背後でガラと襖が開いた。振り返ると、榊が不機嫌丸出しの様子で立っている。

私はじゃあねと電話を切って、スマホをカバンの中へと放り込んだ。榊はずかずかと部屋に入ってきて、窓際に並べてある籐製の椅子にどかっと座った。

髪をガシガシとタオルで乱暴に拭いている。

その様子を見て、なにかに突き動かされた。私は榊に近づいていき背中にまわり、タオルに手を伸ばして、彼の髪を丁寧に拭き始めた。

彼は手を離して、私に委ねた。

「帰るんだ」

「帰りますよ」

「そう」

こんな風に、誰かの世話を焼くのは初めてだったのかもしれない。人にも自分にも無関心でなにひとつとして興味を持つことができず、こんなんで私、生きている意味あるのかな? と常々思っているし、家でも大学でもツネに世話を焼かれることばかり。

だから、榊の髪を拭きながら、いったいなんなんだこれは? と思った。

榊の髪は柔らかく猫っ毛で、ほんのりシャンプーの香りが漂っている。その香りをかぐと、自分の奥底のなにかが、ずくっと疼いた気がした。

衝動?

うん。これは衝動だ。

愛しいとキスをしたくなる気持ち。触れ合いたい抱き合いたいと思う気持ち。手を繋ぎ、一緒に眠りたいと思う気持ち。

みぞおちの辺りから突き上げられるようなその衝動の構造が今、理解できたような気がした。

胸の辺りが、ほわっと温かい。

キスがしたい。

その猫っ毛に。その哀しげな影をまとう額に。色白な頬に。湿ったくちびるに。

衝動に突き動かされて、顔をそっと近づけて、キスをしようとした、その時。

「じゃあ明日。別れよう」

一変した。

その言葉で、私の中の正体不明の陰鬱なものが、一気に巻き上げられ蘇ってきてしまった。愛しいと思う衝動は、竜巻にでも巻き込まれるようにして、木っ端微塵に砕け散った。

「……わかりました」

榊と過ごしたこの数日。

私はきっと忘れない。

こんなにも濃密に、他人と、いや自分自身と向き合ったのは初めてだった。

薄っぺらな感情しか持ち合わせていない私だったはずなのに。

私はこの二日で、泣いて、呆れて、笑って、怒って、そして憎んだ。

手を伸ばしたくなる、踵を返したくなる、その衝動を抑えながら、次の日。

私は榊の元を去った。

連絡先は、置いてきた。

それが今になっては、私の唯一の、「生」の証拠のような気がしている。

それ以来、榊から連絡はない。私は生気を取り戻し、次第に普段通りの生活に戻っていった。

そしてある日。

オンボロビルの大家さんに貰った新聞でたまたま、榊が有名な将棋指しだと知った。

「……しょうぎ」

私は笑った。

将棋。

まるで、私には無縁の遊びだ。

棋士。ふふ。棋士だったとは。

「どうりで。ワイシャツにスラックスが、似合ってないと思った」

私は、その可笑しさを抱えたまま、久しぶりに大学の講義に足をはこんだ。


「奥さんがね。僕の全てだったんだ」

榊が、ぽつりと呟いた言葉が浮かぶ。

「これからどうやって生きていっていいのかも分からないよ」

私のひざ枕の上に乗せた頭。榊がそこから上目遣いでじぃっと見てくる、その瞳が頭の中にこびりついて離れない。

「寂しいよ。ひとりは嫌だ。嫌なんだ」

寝転びながら猫のように丸くなる。思い出す。そういえばあの橋の上でも同じように丸い背中をしていたな。

そして私といえば、どうだろうか?

今日もオンボロビルの屋上から、この広い空を見上げている。この空は、ちゃんと天国へと続いているのだろうか?

「悲しみは、どうやったら消えるんだ?」

その問いかけに、何も言えなかった。

私だって今までに、それをどうやって消し去って生きてきたのだろうかが分からない。曖昧すぎる自分には、ほとほと愛想が尽きた。

「君を本当に連れていってもいいのか?」

初めて出逢った、橋の上。

私を連れていってと言ったのは、今までの自分であって、今の自分じゃない?

榊との出逢いで、キスをしたいと思う衝動の、その構造もカラクリも知ったし理解した。

これからは、誰かの濡れた髪を拭き、安心できるように手を繋ぎ、その欲情に突き動かされるようにして、何度も抱き合いキスをするのだろう。

それが今の私ならきっと、これからの私ならきっと、できるのではないかと思えてしまう。

別れる時。

連れていってと言えなかった。一緒に逝くと言えなかった。

「……ごめん」

私が言うと、

「そんな、悲しそうな顔をしないでくれ」

榊が少し困ったように、微笑みを薄っすらと浮かべた。


オンボロビルの屋上で。ダン箱の棺に入れられた白いカラーをそっと撫でる。

葬式用だろう。白と黒を併せたリボンが、その茎にくるくると巻きつけられている。

うろ覚えだった送り主の名前。

今では鮮明に思い出せる。

将棋の道を突き詰めた者。有名すぎる棋士の名前。

それは二年ほど、昔の話。

あれから二年経って、私は生き、

そして今日、彼は死んだ。


小鳥 殿

ずいぶん久しぶりだね、僕のことを覚えているだろうか。

今日、僕はやっぱり小鳥になって、君の元へ行こうかな。

君は今、笑っているだろうか?

もし君が泣いているなら、僕と一緒に飛んでいこう。

けれど笑っているなら、僕は君を連れてはいけない。

いや君は笑っている。

笑っているはずだ。

君は、元気で。


最後の言葉があまりに普通すぎて、わっと涙が出た。

彼が怖れていた、ひとりの寂しさが、今になって痛いほど理解できる。

あの日のことは覚えている。

彼の片割れだろう彼の妻を失って、そのぽっかりと空いていた隙間に、私がするりと入り込んだ。

そして、私も。

今まで自分でも気づかなかったその隙間に、榊が入り込んできて、ぴたりと収まった。

「榊さん、榊さん、……」

名前を繰り返すごとに、二年前の愛しさが込み上げてくる。

小さな棺桶の中、一輪のカラーと一緒に添えられていた手紙。いつの間にか握り締めていて、ぐしゃりとよれてしまっている。

その手紙をもう一度広げて読み、私はこのスカイブルーの空を見上げながら、心の中で返事を書いた。


榊さん

お久しぶりです。あなたのことはよく覚えています。

あの時は、

ありがとう、


何度もその続きを書こうとして、書いては消し書いては消してと、何度も頭の中で消しゴムをかける。

ありがとう、の先が見つからない。もうとっくに、答えは出ているというのに。

「う、うう、ああぁぁ」

その間にも涙はとめどなく流れ落ちていき、嗚咽は息をつなぐ間にも容赦なく吐き出されていく。

私はこの時初めて、歯ブラシ以外のものでえずいた。

あの橋の上で、私に向かって手を伸ばしたのは、痛いほどのあなたの孤独。

覚えている。

あの時こそ私は、ひとりは寂しいと泣いたその苦しみに、助けられたのだから。

きっと今頃、テレビやら新聞やらが、有名人である榊の死について何らかの情報を知らせているだろう。その情報が正しいのか正しくないのかは、あの時刹那の時間を共にした私にならわかるのかもしれない。

けれど、それもこのオンボロビルの屋上には届かない。届かない。

「ひとりは寂しいよ」

屋上の手すりに手を掛ける。

ここからではあの橋や川は、遠すぎて見えない。

そうだね、寂しいね。

「けれど、生きているよ」

私は棺桶のような段ボール箱を捨て去って、白いカラーを手に取った。遠く、遠くに力いっぱい、それを屋上から放り投げる。

涙が、その拍子に散った。

どうか。

どうか。

このカラーがあなたに届きますように。

連れていかなかった、私の代わりに。

そしてあなたを決して孤独ではない道の終着へと、

導いてくれますように。


「おい、痛いって」

ツネの濡れた髪を、タオルで拭き上げる。白いタオルにみるみる、黄土色の汚れがついていった。ツネの柔らかな黒髪が、明るい栗色に変わっている。

「うん。やっぱいい色だよ」

「そう? 地味じゃね?」

「乾かすと、また色が変わってくるから。ちょっと、そのドライヤー取って」

「おう、」

手渡されたドライヤーのコードの先を、コンセントに差し込む。スイッチを入れると、ドライヤーはボボボォっと間延びしたような音をさせて、ぬるい風を吹き出した。

その風量は弱い。短いツネの髪はともかく、私の肩までの髪はこのドライヤーではなかなか乾かない。

新しい、ちゃんとしたのが欲しいな。そう思う。あれ以来、物欲も性欲も食欲もある。

髪を指で梳いていると、髪染めの独特な匂いが漂ってきた。

ツネからは、朝必ず作ってくれる卵焼きの匂い、好物でよく食べているキャラメルの甘い香り、ライブの時だけ髪をツンツンにする整髪剤の匂い、色んな匂いがする。私はいつしか、そういうことに気がつくようになっていた。

そんなことが嬉しいような気もしている。二年前までは、歯を磨く時のあのクソ不味い歯磨き粉の味にしか、気づいていなかったから。

あの日、貰ったのだろうか?

橋の上ですれ違った時に香った、あの人の甘い香りは、花。

きっとあれは、カラーの花だったんじゃないかなと思う。贈られてきた白いカラーを手に取った時、その香りを思い出したから。

好きな花だったのか、もう訊くこともかなわないけれど。

「はい、いいよ」

ドライヤーのコンセントを引き抜いて、ぐるぐるとコードを巻きつける。傍に置くと、ツネの隣で一緒に鏡を覗き込んだ。

「うわこれすげえいいんじゃね? かっけぇな。マジイケてるわ」

「あはは。じがじさーん」

ツネが笑い、私も笑う。

小鳥のタトゥーがいつのまにか増えていた腕を肩に回し、ツネが私のくちびるにキスをしてくる。私はそのキスに応えて、ツネの唇に刺したピアスをかいくぐりながら、舌を割り込ませた。じゅと音をさせて吸うと、身体中のそこかしこから漲ってくるものがある。

私はもう、衝動のその構造を知っている。

愛しい、嬉しい、温かい、柔らかく、そして眩しくて、愛しい。

おでこをくっつけて、お互いに笑いながらキスを交わす。

そうやって今日も生きていく。

生きたいという衝動に、突き動かされながら。

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