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5.エド君の推測と更なる疑問:真相②

 ここでエドは気を落ち着かせるためか茶を一口飲んで話を続ける。


「カルロス殿下も細身で長身だったそうですから、肥満体の貴族子息の腕を切り落として隠し、そいつの腕だとする手は使えないと判断したのでしょうが、よくこんなことを考えついて実行できたものですね。僕だったら仮に実行したとしても斬り落としきれなくて気絶してますよ」


「それについてはお前が考えている程の負担はなかったわけだが……まあいい、話を続けてくれ」


「まず貴方は部屋のドアを閉めて鍵をかけ、クローゼットにカルロス殿下の遺体と、室内に落ちた殿下の剣を隠します。

 その後、射殺した貴族子息の傷口に自身の剣を差し込み銃創を隠蔽します。

 これでその貴族子息は、最初の銃撃で射殺されたのではなく、その後の剣による戦いで倒されたように見えます。

 そして予め右腕を縛って出血を最低限にしたうえで、恐らく部屋の小テーブルか何かの上に自身の右腕を固定して、貴族子息の持っていた幅広刀で斬り落とし――

 自分で腕を斬り落とした痕跡や、カルロス殿下をクローゼットに運ぶ際に床に付いた血痕を隠すため、斬り落とした腕から流れる血を床中に撒いた後、その腕も殿下同様クローゼットに隠したんですね。

 そしてドアをぶち破ろうとしている警備隊に声を掛け、貴方は廊下に出ました。

 このとき貴方の計画では警備隊員達に『外に落ちた自分の腕を拾ってそれをくっつけてもらうために大急ぎでその場を去った』ように見せかけようとしていました。

 実際にはカルロス殿下の腕に残っている王族である証拠、恐らく指輪だと思いますが、それを腕ごと持ち去って隠滅しようとしたんですね。

 しかし、部屋から出た時点で、貴方は隊員の一人が殿下の腕を持っているのに気付き、予定を少し変更して、隊員からその腕を奪って走り去った。

 と、ここでまた僕から質問なんですが」


「ああ」


「腕を拾って持ってきた隊員さんは9番隊の隊員さんで、恐らく貴方同様この事件の真相にある程度気付いていた方だと思うんですけど」


「そのとおりだ」


「この隊員さん、偶然腕が落ちてきた現場近くにいて腕を拾ったんですか?貴方同様廊下から犯人達を追いかけてくるのが普通では?このタイミングでなんで庭なんかに居たんです?」


「その方は、部屋の床や地下通路の秘密を知る数少ない家柄の出だった。状況から犯人達とセシリア様がそれを利用して逃亡しようとするであろうと考えて西の宮から最短距離で現場になった部屋に向かっていたのさ。だから腕が落ちてきた現場に居合わせたのは単なる偶然じゃない」


「一体何者なんです?」


「当時の9番隊副隊長、現情報局副局長のレドメイン伯さ」


「なるほど。じゃあやはり貴方とレドメイン伯は、状況をほぼ把握した者同士の阿吽の呼吸で腕の受け渡しを行ったと。レドメイン伯が残ったのは隠したカルロス殿下の遺体や貴方の腕が見つからないように7番隊を見張るため、ということですか」


「ああ、実際クローゼットの中を訝しむ発言が7番隊員から出た際、こっそり庭に火薬を投げて騒ぎを起こし、気をそらしたと後で仰っていたな」


「そして貴方は証拠の腕を、恐らくは当時9番隊隊長で現情報局局長のハーグリーヴス候に渡し、自身は治療中と称して部屋に閉じこもった。

 この時点で最初に気絶させられた隊員さんをはじめ、9番隊では真相に気付いている方はいらっしゃんでしょうけどハーグリーヴス候が口止め済みだったんでしょうね。

 一方、意識を取り戻したセシリア殿下は計画の失敗を悟り口をつぐんだ……と、以上が僕の推測する事件当日の出来事です」


「ほぼ正解だ。よくたどり着いたものだな」


「ありがとうございます。これで王女誘拐未遂事件の真相が確認できたわけですが……それとは別にもう二つ明らかにしたい疑念がありまして」


「何だ?」


「まず一つ目。貴方、元から左利きなんじゃないですか」


「まあ、そこは気付くだろうな」


「利き腕でなければさすがに自分の腕を斬り落とすというのは難しいでしょうからね。しかし翌年トーナメントに出場して優勝とは……さすがに利き手がバレるとは思わなかったんですか?」


 シン国で一般的な片手剣の戦闘では半身の姿勢をとるため、利き腕と反対側の腕は相手から見て死角の位置にある。利き腕が左腕とバレたら、戦闘中に右腕を斬り飛ばされる不自然さに気付く者が出てもおかしくない。


「思ったさ。やり過ぎだってな。しかし戦勝後、現王派と王弟派の対立が表面化しだしていた。トーナメント出場は俺の実力を示して疑念を晴らし、優勝候補だった貴族が所属していた王弟派の勢力を削ぐ一石二鳥の機会と判断したハーグリーヴス候の命令によるものだ」


「しかしそれも優勝できなければ裏目に出る可能性もあったのでは?」


「まあな。だが、こっちは右利きの相手に練習し放題なのに比べて、相手は本番まで左手で剣を操るやつとの練習なんかまともにできない。分の悪い賭けではなかったのさ」


「これで疑念の一つは明らかになりました。さて、もう一つの疑念ですが―」


 一息置いてエドは続けた。


「貴方、『バイロン・ベレスフォード』じゃないのでは?」


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