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何でも知ってる石井さん(上)

ご覧いただきありがとうございます。

ハートフルコメディが書きたかったんです。

僕のクラスの石井さん。彼女は何の変哲もない、ただのクラスメートだった。

知っていたのは、あんまり騒ぐのが好きな方では無いって事くらい。

だれかと喋ってるとしてもクラスのおとなしい子達とだし、それもあんまり多くなくって一人で本を読んでるような、そんな感じ。

無口な子なんだろうなあ……くらいな印象しか無かったよね。


そんな石井さんとちょっとだけ係り合いが出来たのが、昨日の放課後。

急に振りだした雨の中濡れながら帰ろうかと思ってたけど、折りたたみ傘が有るのを気がついちゃって、教室に戻った時の事だった。朝は晴れてたのに帰ろうとしたタイミングですごい雨が降って来て、ロッカーに折りたたみ傘を入れっぱなしだった事を思い出したんだよね。

土砂降りだし、誰も教室に居ないだろうと思ってドアを開けたら、居たんだよね。石井さん。


「うわっ!? どしたの?」


女子が床にうずくまってるから何事かと思ったし、最初は誰だか分かんなかった。

ゆっくり立ちあがって、こっちを見た時に初めて石井さんだった事に気がついた。


「石井さん。どしたの?」

「……福岡君?」


ちょっと目がうるんでる様に見えて、少しうろたえたのを覚えてる。


「なんか有ったの?」

「……落し物……」


ひとまず思ったのは、すごい事件じゃなくて良かった、だった。

後、無口だろうな……じゃなくて、無口なんだなって事。


「帰ろうとしたら、お守りが壊れて」

「あ、おばあちゃんがくれた」

「……ちぎれて散らばったの。ビーズで出来てて」

「あと一つだけ」

「教室に居たのが最後で……」

「一人で……」


ポツポツと話す彼女の口ぶりから要約すると、おばあちゃんから貰ったビーズのお守りが千切れて、ビーズの最後の一個が見つからない。一生懸命探しているってことだった。


「あー、手伝うよ?」

「……いい……悪いし……」


さすがに話してる最中に目に涙をため出した女の子に、それじゃ頑張ってね!バイバイ!なんて言えないから、手伝う事にしたんだ。普通……だよね?


十五分くらいかな?一緒に探したのは。僕が教室の隅っこで、運良く見つけられた小さなビーズを渡したら、頬を真っ赤にして、探してる時より目をウルウルさせて。


「ありがとうございました」


だって。ビーズを握りしめた手を胸元にかきいだいて、クラスメートにするには大げさに頭を下げられた。


「いやいや、見つけられて良かったね?」


って流れで一緒に下駄箱まで行って、傘が無くて困っちゃった石井さんに僕の傘を貸して、結局濡れながらダッシュで帰ったのが、昨日。


「あの……福岡君……」

「あ、石井さん。おはよ。昨日、見つかって良かったね?」

「うん……これ……」


そっと渡された差し出された傘に、そういや傘貸したんだったと思いだした。


「福岡君、ありがとうございました」

「いやいや、どういたしまして」


改めてお礼を言われて照れる。

まあ、良かった良かったと思ったんだけど、石井さんがすげえじっと見て来る。

ここは、”うん、それじゃあね”の所じゃないの?


「え……と? どうしたの石井さん?」

「あの……RINEの……」

「RINE? ああ、アドレス交換?」


アドレス交換したいのかな?って中りを付けてみたら、ドンピシャだった。僕は気楽に交換する派なので求められたらあっさり応じる。


「いいよ。はいこれ」

「……ありがとう」


もう一度お礼を言った後、スススって去って行った石井さん。またほっぺたが赤くなってて、小動物見たいで可愛いなくらいに思ってた。


その夜。

ペコンって言う軽快な電子音がスマホから通知されたので見てみると”メグ”っていう見慣れない名前からだった。寝る前に自室でダラダラと過ごしていた僕は、一応の確認で通知を確認する。


”昨日はホントにありがとうございました”


の一文と、なんだかよくわからない犬がFuuuuuuu!!っと興奮しているスタンプが表示されていた。

石井さん、下の名前はメグなんだなあ……っていうのが最初の感想で、後はまあ、あんまりお礼ばっかり言われるのも心苦しいからね。


”見つかって良かったね!もうあんまり気にしないで!”


って返した。これで石井さんとの珍しい御縁も終了かな?って思ったんだけど。


”そんなの悪いよ!”

”昨日風邪引かなかった?”

”何かお礼させて><”


等が、豊富なスタンプと共に怒涛のように送られてきた。送信されてくるスピードがとてつもなく早い。

僕は合間合間で、適当に返事をしておいたんだけど、最終的に明日ジュースを奢ってもらうという約束が為された。


”それじゃ、明日ジュース奢ってくれる?”


そう送った僕のメッセージに対する返事は、また何だかわからない犬がウンウンウンウンと首を高速で縦に振る、落ち着きの無いスタンプだった。


石井さん、普段とRINEでキャラすごく違うんだね。

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