表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

青虫

作者: 石田 幸

それは、眩しいほどに青かった。

連日の夏日を記録更新する五月のカラリと晴れた日曜日の朝。


「今日も暑くなりそうやな…。」


僕は(うつむ)いて、早朝の人気ない商店街をコンビニに向かってほとほと歩いていた。


仕事に追われ、帰って酒をあおって寝るだけの日々が続いていた。

酒を飲まずには眠れなくなったのはいつからだろうか?

それでも、充分な睡眠が取れず、夜中に目覚めては、布団の中で悶々とする日々……。


「ハァ~。」


大きな溜め息を吐いたその時だった。


疲弊した僕の目に、一際(ひときわ)(まぶ)しい色が飛び込んできた。

「青い…。」

それは、まるで翡翠(ひすい)を思わせるほどに、発光するような瑞々しい青の物体だった。

道路の路側帯の上を、ゆっくりと尺を取るように横切っていく。


「こんなところに…。」


それは、実に見事な『青虫』だった。


近くにキャベツ畑があるわけでもないのに、実によく肥え太った野太い青虫は、ここが車通りもある商店街の道路であることもお構いなしに、悠々と横切っていくのである。


僕は、しばらく、その青虫の遅々とした歩みに目を奪われていた。


途中、自転車が猛スピードで通り過ぎたときはヒヤリとしたが、青虫は我関せずの神経で、のたりのたりと進んでいく。


やっと、道路を渡りきった青虫は、相変わらずのマイペースで電柱の陰の茂みに消えていった。


数分間、棒立ちになっていた僕は、大きく息を吸って、明るんできた東の空を見上げた。


僕の鬱々とした気持ちはまるで憑き物が落ちたように晴々と澄み渡っていた。



「今日も暑くなりそうや!」


僕は、キラキラと輝く朝日を振り仰ぐと、コンビニに向かって駆け出していた。


『青虫』を見かけて書いた働く人を応援する小品です。日々頑張って働く人達が上を向けますように。

作者 石田 幸

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ