9.外へ
「ふーっ…」
食後のお茶で一息入れた行人が大きく息を吐く。咲耶たち六人も、それぞれ飲み物こそ違うが同じように食後の一杯を楽しんでいた。
「さて…」
湯呑を置くと、行人が立ち上がる。そして、
「んじゃ、行くか」
眼下の、六人の(自称)義妹たちにそう告げた。
「へ?」
「行くって…何処にですか?」
瀬理がきょとんとした顔になり、鳴美が当然の疑問を投げかける。
「イ・イ・ト・コ・ロだよ」
強調するためだろうか、一字一字区切って行人が答えた。
「いいとこ!?」
「どこ!? どこ!?」
一番下の茅乃と宮乃が真っ先に反応してぱあっと顔を輝かせた。
「そりゃ、行ってのお楽しみさ」
「わぁ♪」
「どこだろー♪」
茅乃と宮乃が先ほどにも増して表情を輝かせる。
「お前らもな」
そう言って、行人は喜んでいる茅乃と宮乃以外の四人にも視線を向けた。
「わかりました」
「まあ…家主がそう言うなら」
「は、はい」
咲耶、瀬理、鳴美の三人も同意する。一人、三穂だけは答えなかったが、それでも頷いていたので反対というわけではないのだろう。
「んじゃ、支度しろ。俺もちょっと上着引っ掛けてくる」
六人にそう言い残すと行人は一度自室に戻った。そして言った通り上着を着て、財布などをポケットに突っ込んで居間に戻ってきた。
「準備できたか?」
行人が居間に顔を覗かせると、
『はーい♪』
茅乃と宮乃が声を揃えて元気よく手を上げる。他の四人も、それぞれの荷物を手に持ったり肩にかけたりして準備万端と言った感じだった。
「じゃ、行くか」
行人がそのまま玄関に向かい、その後を六人の(自称)義妹がついていく。そして全員が外に出た。
「戸締りの確認だけしてくる」
自分以外の全員が外に出たのを確認した行人が家の中に入り、少し時間を置いて出てきた。そして、玄関に施錠する。
「んじゃ、行くか」
『はーい♪』
先頭に立って歩きだす行人の背後に茅乃と宮乃が続き、その後に他の四人が続いた。そして一行は目的地へと向かって歩き出したのである。