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炎花流水  作者: くまくま33233
玖 蜂起
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 燥耶からその言葉が発せられた時、沙枝は意外にも余り驚かなかった。心のどこかで、燥耶はそう言うんじゃないかと予想していたようだ。長く考えることもなく、沙枝は答える。


「私は。燥耶にどこまでも着いていくって決めてるの。だから、燥耶が戦うなら私も戦う。」


 沙枝もここで一息置く。


「でも燥耶、これだけは約束して。」


 燥耶の瞳をはっきりと見据える。


「もう二度と、私の前からいなくならないで。燥耶が危ない目に合いそうだったら、私は全力で止める。…またこんなことがあったら、私、耐えられない。」


 二人は真剣な目で見つめ合う。やがて、静かに燥耶が頷いた。


「分かった。約束する。


ずっと、側にいるよ。」


 急に燥耶がそんな言い方をしたものだから、沙枝は真っ赤になってしまった。でも、目は逸らさない。沙枝の脳裏に、スリナのムラで雪に言った言葉が蘇った。

『燥耶に会ったら、ちゃんと伝えるんだ。あなたのことが、大好きです。って。』

 急に心臓の音が大きく聞こえる。目の前がぐるぐるしてきた。まだ言ってない。言わなきゃ、私。あんなに自信満々だったのに。なんて、なんて言えばいいんだろう?


「ね、ねえ…、私、あ、あなたの、ことが…、」

「おーい、燥耶、いる?」


 急に聞こえた響夜の声に、はっと冷静になってしまう沙枝。


「~~~~~~!!!!」


 顔どころか全身が真っ赤になったことを感じた沙枝は、その場にいられなくなって思わず走り去ってしまった。


「あ、おい!沙枝!」


 燥耶のその声にも、沙枝は恥ずかしさが飽和していてとても振り返ることができない。穴があったら入りたい気分だった。







「あれ?今走って行っちゃったのは沙枝だろう?何か話してた?」

「ああ、まあ…。ところで響夜。」

「ん?なんだい?」

「さっきまですごく視線を感じていたんだけど…。」

「そ、そうかい?さあ、なんだろうなあ?獣かなんかじゃない?僕も時々感じることがあるよ!」

「ふーん、そっか…。まあ、響夜がそう言うならそうかなぁ。」

「そうそう!きっとそうだよ!」







 燥耶の元に戻ることができたのはかなり時間が経ってから。それでも、なんとなく顔の赤さが残っているのがまた恥ずかしかった。


「お帰り、沙枝。……。ええと、何を言おうとしてたのかは聞かないでおくよ。…それで、改めてこれからどうする?戦うって決めたけど、具体的にどうするかは俺も決めてないんだ。」

「う、うん…。あのさ、私達何で夜継のために戦うことにしたか、燥耶は覚えてる?」

「いや…。恥ずかしいんだけど、俺は夜継…”様”はつけなくていいか。夜継の前に出ると…。」

「燥耶…。」

「…恐怖で何も考えられなくなってしまうっていうかさ。ほんと、かっこ悪いよ。沙枝の方が、よっぽど強い。」

「そんな、自分のことをそんなに卑下しなくていいよ。燥耶ならしょうがないって。わたしは、さ。ある意味、人質を取られた訳じゃない?夜継に。」

「…そうか。そうだったな。」


 咲と幸。沙枝にとってかけがえのない二人の顔が、思い出された。

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