十四
当然のようにそのまま大宴会になる。ムラの人々の顔は、今なお一杯に輝いており、沙枝も自然と笑顔になった。言葉を求められた沙枝はその人々の前に立つ。
「皆さん、こんなによくして頂いてありがとうございます。建物まで建ててもらえるなんて…。とてもおそれ多くて、なんだか私の方が皆さんより感謝しなきゃいけないなと思っちゃうくらいなんですけど。」
皆から笑いが起こる。それはとても暖かいものだった。
「もうそろそろ、私は出発しなくちゃいけません。皆さん、いつまでもお元気でいてくださいね。」
そう言って沙枝はお辞儀する。大きな拍手に包まれた。
「さあみんな、折角の機会だ、おおいに食べて飲もうじゃないか!」
稲芽のそんな掛け声で楽しい宴会が始まる。沙枝はその稲芽に近づいた。
「先程いった通り、流石にもう出発しようと思います。」
「もうかね。まだ始まったばかりだというのに。」
「はい。申し訳ないんですが。やっぱり早く、燥耶を探しに行きたいんです。」
そう言った沙枝の目を見た稲芽は、一つ息をついた。
「仕方ないようだな。…雪が寂しがりそうだ。」
「すみません。わがままを言ってしまって。」
「いやいや、こちらこそ引き留めてしまってすまない。」
丁度雪もこちらへやってくる。後ろには草太もついてきていた。
「沙枝お姉ちゃん、もう行っちゃうの?」
「そうなの。ごめんね。でも燥耶のこと、早く探しに行ってあげたいんだ。」
「そっか…。そうだよね…。寂しいや。もっといっぱいお話したかったなあ。」
「私も。もっと雪とお話したかったな。そうだ、今度は燥耶と一緒に来るね。」
「うん!絶対またきてね。」
「うん。約束。草太くんも、元気でね。ずっと一緒について歩いてるなんて、草太くんもやるねえ。」
「い、いや、関係ないですよ、そんなの!俺はただ、雪がまた迷子になったら困ると思って…。」
「へえ?そっかー。私次は燥耶連れてくるって雪と約束しちゃったんだけどなー。燥耶かっこいいよ?草太くんはそんなでいいのかなー?雪とられちゃうよ?」
「ちょ、ちょっと!俺の雪に手を出すのは止めて下さい!」
「ふぇ?わたし、草太くんのものなの?」
「いやいやいや、違う、違うぞ雪!今のはその、なんて言うか…。」
「あははは!大丈夫だよ、草太くん。燥耶は誰にも渡さないから。」
「あー!俺のこと騙しましたね!」
「いやー、つい面白くって。」
「ほんと止めて下さいって!」
「ねえねえ、どういうことなの?わたしは草太くんのものなの?」
「だからな、雪、そういうことじゃなくて…。」
「何?おい、雪は誰にも渡さんぞ!」
「あああ、稲芽さんまで!もうどうするんですかこれ!」
沙枝は笑いが止まらなかった。燥耶が目の前からいなくなって以来初めて、心から笑えた気がした。ここに来て良かった。あの時雪を助けて良かった。そう思った。
 




