十二
お久しぶりです。
突然の長期休載、申し訳ありませんでした。更新を再開致します。
再開後、更新は火曜、木曜、土曜の週三回夕方頃となります。更新頻度が落ちてしまいますこと、ご了承下さい。
それでは、相変わらず稚拙ですが、よろしくお願いします!
「川に?それはまたどうして。」
「森の中で雪ちゃんと話している時に、近くの川の水量が減って水不足になっているというのを聞きました。私なら、それを解決できるかもしれません。この力を見ることで、少しでも私とそして<炎花>のことを信じてもらいたいという気持ちと、美味しい食事のお礼も兼ねて。お願いできませんか。」
「別に構わないが…。本当に解決できるのかね。」
「それは行ってみないことには。」
「そうか。よし、では行こう。君にその力とやらがあるのなら、僕も気になる。見てみようじゃないか。」
こうして沙枝は稲芽と、ついてきた雪と共に川へ向かった。
川に着いた。そこにあったのは、川ではなかった。幅の広い、石がごろごろ転がる筋状の土地と、その中央を微かに流れていく水。とてもこれで満足な量の水が得られているとは思えない。
「これが今のわがムラの川の現状さ。酷いもんだよ。原因がわからないのが一番つらい。かといって井戸を掘ってもこの辺りは何故か湧かない。私達に残されているのは耐え忍ぶことだけなんだ。」
そう稲芽は苦悩の色を滲ませながらこぼした。その声色が何よりも、ムラの苦労を物語っているように、沙枝には聞こえた。
なんとかできないだろうか。思案する沙枝の脳内に、《炎花》の声が響く。
〈沙枝、どうだい?何か浮かんだかい?〉
〈いや…何も浮かばないよ…。〉
〈そうか…。そうだな、ここらの地中の水の様子を探ってみたらどうだい?きっと今の沙枝なら、意識を集中させれば、それくらいはできるはずだ。〉
〈う、うん。やってみる。〉
半信半疑のまま、目を瞑って意識を集中させる。すっと世界が広がっていくような感覚。水、水はどこかにあるかな?
自分の中で世界がかなり広がった頃。水を見つけた。とても地中深い所まで潜ってしまっているようだ。今度は何をすれば良いかすぐに分かった。目を瞑ったまま、手を前に伸ばす。そこには何もないはずなのに、沙枝の手は、地中深くの水流を、確かに掴み取った。
《流水の守り手》は今、光を発していた。瑠璃色の、瞬くような淡い光。そんな、神にも等しいその一人の少女を、周りの人間は声もなく動きもせず見つめていた。と、《守り手》は前に手を伸ばしたかと思うと、その手を握り天高く突き上げた。辺りの地面が揺れる。周りの人間はしかし、それでも動けなかった。
そこには、神がいた。
沙枝が目を開けると、目の前でものすごい勢いで水が吹き上がっていた。良かった。私にもできた。自然と笑みがこぼれる。暖かな気持ちのまま振り向くと、別の意味で笑い出してしまった沙枝。稲芽が、そして雪が、呆けたような顔をしてこちらを見つめていたからだ。
「どうしたんですか?そんな顔で。」
「すごい!!沙枝お姉ちゃんすごいね!」
先に立ち直ったのは雪だった。
「そんなことないよ、ありがとね。」
「すごいすごい!」
目を真ん丸に開けた雪は、すごいという言葉しか出てこないようだった。




