十一
「そろそろ発とうと思います。」
しばらくゆっくりした後、沙枝はそう雪の家族に告げていた。ちなみに草太は食事の後すぐに、これ以上は、と帰っていっていた。
「そうかね、沙枝さん。もっとゆっくり、なんなら泊まっていってくれても構わんのに。」
「ありがとうございます、稲芽さん。でも私の目的は元々、人探しですから。そろそろ本来の旅に、戻ろうと思いまして。それに、久しぶりに美味しい食事を頂くことができたんです。もう十分ですよ。」
「そうか。残念だがやらなければならないことがあるなら仕方がない。今からどちらへ向かうつもりなんだい?」
「ええと、あちらです。」
目的地の方角しか分からない沙枝は、どう答えたものやらと少し迷った挙げ句、指で指し示すことにした。稲芽はそれを見て考え込む表情になる。
「そちら、か…。うーん、そちらには森と山がずっと続いているだけだが…。なにかあて、というか、そちらへ進む根拠みたいなものはあるのかね?」
「信じてもらえないかもしれませんが、そこの剣が教えてくれるんです。」
そう言って沙枝は今度は壁際を指さす。道中、腰にさげると地面にずってしまうために、背中にくくりつけるようにして運んできた《炎花》がそこにはあった。
「その剣が?…確かに並の剣とは違うような気はしていたが。」
「その剣は《炎花》といって、大昔に神がおつくりになったいわゆる神剣なんです。今の世の中でこれを完全に振るえるのはただ一人。私の探している燥耶だけ。そのせいか、《炎花》と燥耶の間には、なにか特別なつながりのようなものがあるみたいで。《炎花》は燥耶がどちらにいるのか、私に教えてくれるんです。」
〈そうだよー。こんにちは、皆さん。って、聞こえないかー。〉
「あ!お父さん!何か聞こえたよ!」
なんと雪が反応した。
〈おや、雪ちゃん、だよね。聞こえるのかい?〉
「うん!聞こえるよ!」
「すごいわ、雪。どうして雪には聞こえるのかな?」
〈おそらくまだ小さいからだろうね。さっきの草太って子では、もう無理だろう。〉
「そうなんだー。ね、お父さん。この《炎花》って剣、ほんとにしゃべってるみたいだよ。」
「そ、そうか。うーん、にわかには信じがたい…。」
〈沙枝、君の力を見せてやれば彼も信じるんじゃないか?〉
〈私の力?〉
〈おいおい、君は《流水の守り手》だろう?それを使うんだよ。〉
〈そりゃ、そうだけど。でもどうやって?〉
〈さっき雪ちゃんが、このムラは近くの川の水量が減ったせいで水不足になった、って言ってたろ。それを解決すればいいのさ。〉
〈そ、そんなの、どうすればいいのか分かんないよ…。〉
〈大丈夫だよ、沙枝。君は一度力を使ってるんだ。その気になれば、どうすればいいのかくらい、必ずすぐに分かる。〉
《炎花》のその言葉に。少し迷った沙枝はしかし顔を上げると稲芽に言っていた。
「稲芽さん。ムラから一番近い、最近水量が減ったという川に案内してもらえませんか。」
大変申し訳ありませんが、私の都合により長期休載とさせていただきます。
こんな突然に、中途半端なところでになってしまいすみません。再開時期は2019年5月頃を予定しております。
再開後にまた追っていただければ幸いです。
すみませんがよろしくお願いします。




