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炎花流水  作者: くまくま33233
捌 前進
84/159

「雪!どこ行ってたんだよ。雪ん家のおばさんおじさんと一緒にたくさん探したんだぞ。」

「ごめん、…ごめんね、草太くん。」

「ったく。心配かけやがって。一人で森入るなって俺言ったろ?」

「うん。ほんとにごめんね。」


 強い言葉を吐きながらも、雪のことを本気で心配していたことが丸わかりな目を、草太はしていた。いい子だなあ。沙枝がそう暢気のんきに思っていると、草太はこちらの方を向く。


「あの…。こんにちは。雪を助けて下さったんですか?」

「まあ…、うん、そうかな。雪ちゃん、森の中で困ってたみたいだったから。一緒に探そうか、って連れてきてただけだよ。」

「そうだったんですか。あ、俺草太っていいます。雪のこと、助けて下さってありがとうございました。」


 そう言って草太は深く頭を下げた。隣で雪もまた頭を下げる。お似合いだよとは言わないでおいた。


「いやいや、私は何にもしてないよ。私はただ、雪と楽しくおしゃべりしながら歩いてただけだから。気にしないで。」

「いや、それでもありがたいです。あの、ムラに寄っていってくれませんか。お礼させて下さい。…ええと、失礼ですがお名前は?」

「あ、ごめんね。私沙枝っていう名前だよ。よろしくね。そんなお礼とかは全然大丈夫だけど、…ムラにはお邪魔しようかな。スリナのムラ、だっけ?」

「そうです!では、案内しますよ。ほら雪、帰るぞ。」


 草太は雪の手を無造作にとり、歩きだそうとして。急に立ち止まった。表情は強ばり、大量の汗をかいている。何が起こったのかすぐに分かった沙枝は、雪に聞こえないように小声で草太に話しかける。


「もしかして…、自分も帰り道分からなくなっちゃった?草太くん。」

「そっ、そんなこと…。…はい。そうです。…雪を探すのに必死で、帰りのこと考えてなくて…。」

「ふーん。そんなに心配だったんだ。」


 顔がにやけるのを抑えられない沙枝。草太は真っ赤になった。


「ちょっ、いや、ばっ、…に、にやにやするのは止めて下さいよ!」

「そっかそっか。ごめんねー。で、草太くんはどうするのかな?」

「そ、それは…。」

「ねえ雪、草太くん帰り道が…。」

「だあーーっ!止めて下さいってば!」

「じゃあほんとにどうするの?草太くん。」

「えっと、それは、その…。」


 草太はたじたじだ。ますます汗をかき、視線は泳ぎまくっていた。


「…草太くん、大丈夫?顔真っ赤だよ?」


 雪に純粋に心配され草太は更に追い詰められる。沙枝は相変わらずにやにや。どうしようもなくなった草太は。


「うわああああ!!」


 思わず頭をかきむしって叫び声を上げてしまった。

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