表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
炎花流水  作者: くまくま33233
伍 家族
53/159

十三

 その後は社では出ない昼食を沢山の人と一緒に頂いたり、広大な燥耶の家の田畑を見せてもらったりとのんびり過ごした。燥耶の家は、とにかく広かった。広いといっても、田畑がだ。屋敷はそこまで広くない。なんでも何代か前の王から下賜かしされた屋敷だったらしく、当時は庭などもあり今の何倍もの面積があったそうだ。それを当時の当主が大部分を壊して田畑に換え、周りの貧しい人々に渡していった。未だに全て一応燥耶の家の土地ということになっているが、燥耶達家族は普通に暮らしていける分しか稼いでいないとのこと。人柄とあいまって周囲に住む人々からはかなり慕われているようだ。


「そもそも何故下賜されるに至ったんですか?」


 色々とついて回って案内してくれる春則に聞いてみる。


「元を辿れば、更馬様、ご当主様の家系は王族の血統なのですよ。ご当主様は亡くなられた先代の王と親しかったとも聞いております。」

「ええっ!?そうだったの、燥耶?」

「ん、まあ。でもそんなの、関係ないよ。それをかさにきて威張ろうとか考える訳でもないし、家族みんな意識したことないんじゃない?」


 それでも驚きだ。それでは燥耶は夜継と遠縁ながらも親戚ということだ。

 聞いてないよ!沙枝はまた思った。




 のんびり過ごしていても、やはり一日はあっという間に過ぎる。帰る時間になり、燥耶と沙枝はまた広間に呼ばれた。


「また帰ってこれる時があればいつでも帰ってきてくれ、燥耶。待っている。身体には気を付けるんだぞ。沙枝さん、あなたもだ。是非また燥耶と一緒に来てくれ。いつでも歓迎しよう。社での燥耶を、これからも側でみていてもらえるとありがたい。」

「そうですよ、燥耶。また帰ってきて下さいな。私達は楽しみに待っておりますから。」


 更馬と美夜からそう声を掛けられ、屋敷を後にする。春則は門まで見送りに来てくれた。


「若様、帰ってきていただけてとても嬉しかったです。楽しい時間でした。」


 そこで少し声を落とす。


「ところで若様。お二人本当にお似合いでございますよ。次いらっしゃる時には今度こそ床のご用意を…。」

「やめてくださいって!」


 入るときと同じように真っ赤になってしまう沙枝。燥耶はそれを見ているだけだった。燥耶はこう言われてどう思うのだろう。やっぱり嫌なのだろうか。ふとそんなことを思った。

 いろんなことがあった気もしないでもなかったが、楽しかった。何より更馬をはじめとしたみんながとても暖かくそして優しかった。また来よう。そう思わせる場所だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ